歌川国政《市川鰕蔵の碓井の荒太郎定光》1796(寛政8)年, 大判錦絵(39×26.5cm), 東京国立博物館蔵 Image:TNM Image Archives, 無許可転載・転用を禁止 真横の顔 歌舞伎を知らない人にとっては、その浮世絵が人の顔なのか何なのか、あるいは人の顔であれば誰なのか、理解するまでには多少時間がかかるかもしれない。三角形や直線、曲線などの図形の要素を組み合わせてつくられたような人の横顔が、歌舞伎役者の市川鰕蔵(えびぞう)とわかるのは作品の題名からだ。しかし、歌舞伎を見たことがなくとも、一枚の絵として力強く、興味深いものがあった。 2014年に江戸東京博物館で開催された「大浮世絵展」(国際浮世絵学会創立50周年記念)。抽象絵画を思わせるインパクトのある顔を見て、正面を向くエルビス・プレスリーやマリリン・モンローなど、アンディ・ウォーホル(1928-1987)のシルク