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ブックマーク / magazine-k.jp (293)

  • マガジン航の今後について

    新年あけましておめでとうございます。「マガジン航」編集発行人の仲俣暁生です。 記事の更新が昨年の5月以後止まっていたことで、多くの方にご心配をいただきました。いま思えば昨年5月は新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の「第4波」が訪れていた時期で、私自身、長期化するコロナ禍のなかで先行きが見通せず、かなり悲観的な気持ちになっていました。 その後、昨年夏の「第5波」がやってきたときは、正直もうダメだと思い詰める瞬間もありましたが、ワクチン接種の拡大によりここ数ヶ月、ようやく落ち着いてこのサイトの今後を考える時間を確保することができました。そこでこの場を借りて、現状報告と今後についての考え方をお伝えしようと思います。 サイトの更新は今後も継続します 「マガジン航」は、2009年に株式会社ボイジャーとともに立ち上げたメディアです。その後、ボイジャーからの支援(具体的にはサーバの提供と編集制

    マガジン航の今後について
    tsysoba
    tsysoba 2022/01/05
    更新再開とのこと。良かったです。
  • デモのなかで生まれる香港のポリティカル・ジン

    香港で逃亡犯条例に反対する百万人デモが行われた6月9日、私は小出版物のイベントnot big issueに参加するため台北にいた。 さっそく「香港がたいへんなことになっているね」と、何人かの現地の知人に言うと、言葉少なに頷き少し表情を曇らせた。 一国二制度の香港と両岸問題の台湾では事情は違うが、ともに中国と緊張関係にあり、香港市民に対する理解と共感は大きいはず、と勝手に思っていたのだが、彼らの胸中は複雑だった。 台湾の蔡英文総統は早くに香港市民支持を表明したが、1987年の戒厳令解除後の民主化の歩みとともに成長した若い世代は、2020年1月の総統選で政権交代があれば親中路線に向うだろうと、後日、将来への不安を口にした。また日で働く台湾人の友人は「状況次第では日仕事を続けようかな」と。香港問題を自身に引きつけて考えると、いつになく空気が重くなるのであった。 ZINE COOPとの出会い

    デモのなかで生まれる香港のポリティカル・ジン
    tsysoba
    tsysoba 2019/10/23
    パンフレット(小冊子)の持つ政治的力は生きていた。むしろネットが監視ツール化したからこそ再発動したのかもしれないが。
  • あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」攻撃に抗議する

    8月1日に開幕した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展の一つとして、メイン会場の愛知芸術文化センターで開催されていた「表現の不自由展・その後」の展示が3日いっぱいをもって中止された。 この企画展の趣旨は上記のページで以下のように説明されていた。 「表現の不自由展」は、日における「言論と表現の自由」が脅かされているのではないかという強い危機意識から、組織的検閲や忖度によって表現の機会を奪われてしまった作品を集め、2015年に開催された展覧会。「慰安婦」問題、天皇と戦争、植民地支配、憲法9条、政権批判など、近年公共の文化施設で「タブー」とされがちなテーマの作品が、当時いかにして「排除」されたのか、実際に展示不許可になった理由とともに展示した。今回は、「表現の不自由展」で扱った作品の「その後」に加え、2015年以降、新たに公立美術館などで展示不許可になった作品を、同様に不許可にな

    あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」攻撃に抗議する
    tsysoba
    tsysoba 2019/08/04
    末尾に、MLAK関係者への呼びかけ(問いかけ)あり。
  • 無名の新人が書いた地味な分野の本に、ありえないほど長いタイトルをつけて売ろうとした人文書出版社の話

    ある日、いつものようにツイッターを立ち上げてタイムラインをぼんやり眺めていたら、なんだかとてつもなく長いタイトルのについてのツイートが流れてきた。発信者はそのの版元の編集者で、題名は『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する』――カギカッコを含めて60文字もある。ただ長いだけではない。一つひとつの言葉に見覚えはあるが、そのつながりがよくわからない。いったい「舞姫」と「アフリカ人」がどうつながるんだろう? タイトルだけではまったく内容の想像がつかないので、書店にでかけたときに立ち読みをしてみた。思ったより、ちゃんとしてる――というのも変だが、そう感じた。なにしろ版元はあの柏書房である。私はアルベルト・マングェルの『読書歴史 あるいは読者の歴史』やアレッサンドロ・マルツォ・マーニョの『そのとき、が生まれた』

    無名の新人が書いた地味な分野の本に、ありえないほど長いタイトルをつけて売ろうとした人文書出版社の話
    tsysoba
    tsysoba 2019/06/18
    近代デジタルライブラリーを当初構想した人たちが、この未来を想像していたかどうかは分からないけど、とりあえず自分的には最高の展開。
  • 民主主義を支える場としての図書館

    図書館」という言葉から最初に連想するものはなんですかと問われたなら、の貸出、新聞や雑誌の閲覧、調べもの、受験勉強……といったあたりを思い浮かべる人が多いのではないか。もしそこに「民主主義」という言葉が加わったら、はたして違和感はあるだろうか。 図書館を舞台にしたドキュメンタリー フレデリック・ワイズマン監督の映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』を、先月の終わりに試写会で観た(5月18日より東京・岩波ホールほか全国で順次公開)。約3時間半にわたる超長尺のドキュメンタリー作品であるにもかかわらず、不思議なことにいつまでも観つづけていたい気持ちにさせられた。その理由はこの映画のテーマと深く関わっている。 『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』の主題は、図書館を題材にしていることから想像されがちな「」や「読書」ではない。あえてキーワードを挙げるとすれば、「コミュニティ」「文

    民主主義を支える場としての図書館
    tsysoba
    tsysoba 2019/05/04
    ニューヨーク公共図書館を巡って。決定的に重要なのは確かに「人」なのだけど、そのコストが真っ先に切られていく状況にどう対すれば良いのか…
  • 第8回 中国に見る新しいマンガ・コンテンツの波

    改革は「周縁」から起きる 多くの場合、大きな変革は中心からではなく周縁から始まる。マンガ産業も同じである。 思えば戦後の日マンガの変革は出版の中心地・東京からではなく、大阪から始まった。戦後まもなく手塚治虫を祖として始まった「ストーリーマンガ」は、中央からは「赤屋」という蔑称で呼ばれた大阪の零細出版社から生まれた。中央でマンガが子ども向け雑誌の1ページか2ページくらいのボリュームしか使えなかった時代、大阪ではマンガ単行が中心だった。つまりストーリーを語るために必要なボリュームがあったのだ。 仮に手塚治虫が東京の雑誌でデビューしていたとしたら、彼は凡庸な子どもマンガの作家に終わっていたかもしれない。デビュー間もない手塚が、単行デビュー作の『新寶島』(酒井七馬との合作)を引っさげて上京したとき、東京の大家のひとりは「これはマンガではない。こんなマンガはあなただけにしてほしい」と言った。

    第8回 中国に見る新しいマンガ・コンテンツの波
    tsysoba
    tsysoba 2019/04/17
    中国では「マンガを描いている若者たちも「マンガ家」という職業を目指しているのではなく、ACG産業のコンテンツビジネスを担っているという意識」というのが興味深い。あと広告収入の桁が違う…
  • 21世紀に万葉集と出会い直す

    新しい元号の典拠となった効果で、万葉集関連が売れているという。さっそく地元の町の屋に出かけてみたら、岩波文庫の『万葉集(一)』と岩波新書の斎藤茂吉『万葉秀歌』(上下巻)が見つかった。新元号の典拠である第5巻「梅花の宴」序が収録されているため売れているという角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックス・シリーズ版もあったが、こちらは約140首ほどの抄録版とのことで見送った。その後、出先でいくつかの書店を歩きまわり、岩波文庫版を(一)から(五)までなんとか揃え、さらに参考図書として大岡信の『私の万葉集(一)』も手に入れて読み始めた。 万葉集を「読む」ことの難しさ 万葉集の成立時期については諸説あるが、もっとも遅い時期の歌でも第20巻末尾の大伴家持歌(4516)の天平宝字3年(西暦759年)。あくまで伝承ではあるが最古の歌は5世紀末に実在したとされる雄略天皇の代まで遡る。だが万葉集の原は現在

    21世紀に万葉集と出会い直す
    tsysoba
    tsysoba 2019/04/07
    人文学研究の果てしなさと面白さと意義。近世から続く出版史とデジタルアーカイブまで視野に入れて語られている。
  • 本を残す、本を活かす、本を殺す

    このところ、「をどう残すか」ということをよく考える。個人の蔵書をどうするかといったレベルの話ではなく、物理的な書物だけの話でもない。とはようするに「残された記録」のことだとすれば、考えるべきはさまざまな著作や文物を後世に伝えるための仕組み全体だ(往復書簡で藤谷治さんが書いていたとおり、のなかには著者自身は後世に残すつもりなどなかったものも含まれる)。たまたま先月は、そうしたことを考えさせられる出来事が続いた。 「ジャパンサーチ」ベータ版の公開 まずは明るいニュースから行こう。国立国会図書館は2月末にベータ版(試験版)として「ジャパンサーチ(JAPAN SEARCH)」を公開した。これは国立国会図書館自身が所蔵する書籍や資料だけでなく、日国内のさまざまな文化資源にかかわる36(公開時点)のデータベースをウェブ上で横断検索できるようにしたいわゆるナショナル・デジタル・アーカイブで、所蔵

    本を残す、本を活かす、本を殺す
    tsysoba
    tsysoba 2019/03/04
    ジャパンサーチへの期待の話もあり。電子書籍は本を未来に残す役割を果たしてこれなかった、という問題提起も。
  • あらためて、「浮上せよ」と活字は言う

    先月末に小説家の橋治さんが亡くなられた。謹んでご冥福をお祈りいたします。 小説だけでなく評論やエッセイ、古典の翻案・現代語訳など多彩なを著した橋さんには、出版論であり書物論といってもよい著作がある。1993年に雑誌「中央公論」に連載され、翌年に中央公論社から単行として刊行された『浮上せよと活字は言う』である。 このの主題は明瞭だ。出版産業がどうなろうと、人間にとって活字による表現や思考が不要になるはずがない。「既存の活字」が現実を捉えられずにいるのなら、その現実が見えている者こそ、その事態を言葉によって把握し思考せよということが書かれている。 1993年といえば、前年に昭和末期から続いたバブル経済が崩壊し、現在にいたる長期にわたる経済的な停滞が始まったばかりの時期である。自民党が一時的に下野し、野党による連立政権が成立した時期でもあった。 この頃の出版市場は、まだ上り坂にあった。

    あらためて、「浮上せよ」と活字は言う
    tsysoba
    tsysoba 2019/02/04
    「本は本来的に、いつどこで、誰が必要とするかわからない、という特徴をもつ。今日発売された本を切実に必要とする読者は、十年後、二十年後にようやく現れるかもしれない。」これは普通の「産業」ではないと思う。
  • 出版ジャーナリズムの火を絶やしていいのか

    1949年の創刊以来、出版界が置かれている状況を刻々と報告しつづけてきた「出版ニュース」が2019年3月で休刊することが決まった。また『出版年鑑』も今年8月に出た2018年版で終了し、2019年版は刊行されないことも出版ニュース社のサイトと「出版ニュース」11月下旬号で正式に告知された。 「出版ニュース」は1949年に日配(日出版配給株式会社)の解体に伴い独立した出版ニュース社が刊行する旬刊(月三回刊)の雑誌で、戦時下の出版流通を担った統制会社である日配時代に刊行されていた「新刊弘報」「出版弘報」の流れを組む。また当初は博報堂が出資者となっていたが、現在はそのような資関係はないという。 日配時代には戦時下の物資窮乏のため、書籍が完全買取・買切制になった時期があった。「出版ニュース」の前身「出版弘報」は、そうした時代に販売店(当時すでに1万5000軒あったという)がの現物を見ることなく

    出版ジャーナリズムの火を絶やしていいのか
  • 出版流通はなんでもありの変革期を迎えた

    「頭脳」がない。あるのは「身体」だけである。日の出版業界のことだ。 出版界が「業界」、すなわち、経営的に回っている状態にあるか、と言われれば、それは「否」と答えざるを得ないだろう。1996年以来の売上高の減少に対し、無為無策のままで進行していることがその証左である。曰く「出版は文化的事業であり、他の業界とは違う」。ええ、他の業界の人も「自分の業界は他と違う」と思っていますよ。 もはや業界として一般から「支持されていない」 取次の収支は公表されており、日販もトーハンも営業損益レベルでは実質的には赤字である。書店もまた多くは「苦しい、苦しい」の連呼である。では、業界三者の最後、出版社がもうかっているかといえば、経済産業省の特定サービス産業実態調査に従えば、近年はやはりこちらも赤字である。もちろん、個々の企業の凹凸はあるが、総体として主業だけでは「赤字」なのである。つまり、業界として一般から「

    出版流通はなんでもありの変革期を迎えた
    tsysoba
    tsysoba 2018/08/20
    「自分たちは違う、自分たちのやっていることは他には理解できない、という有職故実的思想が、変革を遅らせ、結果としての衰退を招いている。」刺さる。
  • 出版業界は沈みゆく泥舟なのか

    まるで沈みゆく泥舟のようではないか、と思う。日の出版業界のことだ。 このコラムは毎月、基的に月初に公開することにしている。毎月更新される小田光雄氏の「出版状況クロニクル」や、ジュンク堂書店の福嶋聡氏の「屋とコンピュータ」といったコラムを意識しつつ書いているのだが、これまではできるだけポジティブな話題を見つけるようにしてきた。でも今月はどうしても筆が進まず、公開が週をまたいでしまった。いまだに何を書いてよいやら、という諦めのような境地にさえなっている。 「文字もの」電子書籍は未だに紙の4% そうした思いを抱いた理由の一つは、先月に相次いで公開された出版市場統計である。 まず、インプレス総合研究所から2017年の日電子書籍と電子雑誌の市場規模が発表された。同研究所の調査によると、昨年の電子書籍市場規模は前年比13.4%増の2241億円、電子雑誌市場規模は前年比4.3%増の315億円。

    出版業界は沈みゆく泥舟なのか
    tsysoba
    tsysoba 2018/08/06
    SNSが双方向の対話ではなく、政治的誘導・扇動の仕組みになり、(国によっては)検索エンジンが政府の意向に沿った選別をする状況で、知的交流の基盤をどう維持/更新するのか、という問題でもあり。
  • バリューブックスは本の新しい生態系を模索する

    ある程度、長いあいだを読んできた人ならば、一度や二度、蔵書の整理について思い悩んだことがあるはずだ。放置すればはどんどん増え、居住空間を圧迫する。床が抜ける心配をするほどではなくとも、このまま放置してはおけない、という局面に至るのは時間の問題である。なぜなら、日人は滅多にを捨てないからだ。 そのかわりにを「売る」人が増えた。 日の出版業界は1990年代半ばまで右肩上がりで成長しつづけた。その原動力は主に雑誌だったが、文庫や新書といった、いわば英米のペーパーバックに相当する廉価も読者の裾野を大いに広げた。20世紀後半は大量生産・大量消費の時代であり、出版をマスマーケットに向けたビジネスに変えたといっていい。 また日の文庫や新書、並装の書籍等は欧米のペーパーバックとくらべて印刷・造・用紙等の品質が高く、一度や二度読んだ程度では、ほぼ新品と同様である。こうして良質な過去の出版物

    バリューブックスは本の新しい生態系を模索する
    tsysoba
    tsysoba 2018/07/20
    新古書店の最新動向。既存のデータベースと照合できずに古紙回収に回ったものの中に、わずかながらも変な資料が混ざってそうで、そっちの方が気になってしまう。
  • ロジスティックス革命と1940年体制の終わり

    「マガジン航」のエディターズ・ノートは毎月1日に公開することにしているのだが、今月はどうしても考えがまとまらないまま最初の週末を越えてしまった。理由はほかでもない、出版物流の限界がはっきりと露呈してきたからであり、それを前提とした出版産業の未来をポジティブに考えることが難しいと思えたからである。 取次自身が認めたシステム崩壊 出版関係者の多くが読んでいると思われる二つのネット連載が、この問題に触れている。まず小田光雄氏の「出版状況クロニクル」は6月1日の記事(第121回)で「新文化」(4月26日付)や「文化通信」(5月21日付)などが伝えた大手取次のトーハン、日販の経営者の生々しい発言を紹介している。 「出版業界は未曽有の事態が起こりつつある」(トーハン・藤井武彦社長) 「取次業は崩壊の危機にある」(日販・平林彰社長) こうした大仰な発言の背景にあるのは、取次という出版流通ビジネスの屋台骨

    ロジスティックス革命と1940年体制の終わり
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    tsysoba 2018/06/04
    出版の流通システムが大きく変わる時、図書館に求められる役割や蔵書構築のあり方も変わるのではないか。
  • 私が柳美里さんの本屋「フルハウス」を手伝うことになった理由

    東日大震災から7年、私自身が横浜から福島県に移住してから4年が経つ。偶然と縁がこれだけ重なると、必然だったのかもしれないとも思う。 いま私は、芥川賞作家の柳美里さんが、福島県南相馬市小高区の自宅をリノベーションして、2018年4月9日に開店した屋「フルハウス」の、主にイベント運営のお手伝いをしている。 [フルハウスの店内風景] 最初のきっかけは、私が2016年に受講していた、福島県の起業家育成支援「ふくしま復興塾」の代表をしている加藤博敏さんの塾生に対しての呼び掛けだった。曰く、「芥川賞作家の柳美里が南相馬市に屋と劇場をつくろうとしている。著名な人が多く関わる一大プロジェクトになる。クリスマスイブにキックオフイベントが開催されるので手伝いを募集する。関わって絶対損はない」。 柳美里さんのことは、もちろん知っていた。そして私自身、中学生の頃小説家になりたかったとか、中学・高校は演劇部だ

    私が柳美里さんの本屋「フルハウス」を手伝うことになった理由
    tsysoba
    tsysoba 2018/05/31
    こちらの記事 https://www.j-cast.com/trend/2018/05/30329903.html との差異について、考えさせられる。
  • 第2回 全米最大のチェーン書店、バーンズ&ノーブルの苦闘

    次々とオープンするアマゾン書店が話題を集め、インディペンデント書店のリバイバルが謳われる一方で、ネガティブなニュースばかりが聞かれるのが全米最大のチェーン書店、バーンズ&ノーブル(B&N)の先行きだ。 今年2月に全米600店あまりで働く全従業員1万2000人のうち、1800人のスタッフを解雇したというニュースは日でもメディアの多くが取り上げた。これは昨年のクリスマス商戦の結果を受けたものと考えられている。前年比で店舗の売上げがマイナス6.4%、BN.com(オンライン書店)がマイナス4.5%と不振だった。 だが、スタッフ数は2009年をピークに年々減少しており、とくに2016年にはB&Nが展開するEブックであるNook(ヌック)部門を大幅縮小したため、この際に5000人がレイオフの憂き目にあっている。Nook部門は日でも電子書籍元年と言われた2010年から2012年までは年商1億ドルを

    第2回 全米最大のチェーン書店、バーンズ&ノーブルの苦闘
  • 神保町ブックセンターは本の町を再起動させるか

    神保町交差点の角に立地し、ながらく「岩波ブックセンター」の名で親しまれてきた信山社は、同社の代表取締役会長だった柴田信さんの急逝により、2016年11月に休業・破産手続きにはいった。その後、用途が宙ぶらりになっていた「の町」の一等地の行方には、多くの人が期待や不安とともに、関心を寄せていたことだろう。 この岩波ブックセンターの跡地に、「神保町ブックセンター with Iwanami Books」(以下、神保町ブックセンターと略記)という施設が今年4月に開業することを、その運営主体となるUDS株式会社が1月31日に発表した。広い意味での「の施設」としてこの場が続くことを知り、私もホッとした気持ちになった。 プレスリリースによると、神保町ブックセンター は書店・コワーキングスペース・喫茶店の複合施設であり、「を中心に人々が集い、 これからを生きるための新しい知識・新しい仲間に出会える”

    神保町ブックセンターは本の町を再起動させるか
  • 第2回 図書館のプロダクト・デザインの変革はブックトラックから始まる

    プロダクト・デザインとインダストリアル・デザイン まずは図書館のプロダクト・デザインから始めたいと思う。その言葉自体は意識されていないとしても、図書館におけるデザインでもっとも身近に感じられるのがプロダクト・デザインではないだろうか。それは図書館用品として、図書館に関わる皆さんが日常的に触れているデザインだ。この「触れている」という側面が、プロダクト・デザインの特性を強く特徴づけるものになっているのだが、それについては後述する。 図書館のプロダクト・デザイン、図書館用品のデザインについて書くまえに、デザインを考えるための基礎知識として「プロダクト・デザイン」と「インダストリアル・デザイン」という言葉について、その違いを含めて説明したい。 『最新 現代デザイン事典』(平凡社、2017年)の中で、それぞれの言葉の来歴を以下のように書いている。 「インダストリアル・デザイン(ID)は、第二次世界

    第2回 図書館のプロダクト・デザインの変革はブックトラックから始まる
  • ZINEの生態系とローカリティ

    小規模の印刷出版物にはさまざまな呼び方がある。小冊子やパンフレットといった一般的な言い方のほかに、「ミニコミ」「同人誌」「タウン誌」「リトルマガジン」「リトルプレス」「インディーズ・マガジン」「ジン」などが挙げられるが、和製英語も含むそれぞれには特定の歴史的文脈があり、どう呼ぶかで作り手の意識までがわかったりもする。 出版の「正史」の外で綴られ、編まれ、そして読まれてきた、こうした小規模出版物の歴史をまとめたがこの秋、あいついで刊行された。ひとつは雑誌「アイデア」での連載をまとめた、ばるぼら・野中モモ編著『日のZINEについて知っていることすべて〜同人誌、ミニコミ、リトルプレス 自主制作出版史1960-2010年代』(誠文堂新光社)で、もうひとつは南陀楼綾繁『編む人〜ちいさなから生まれたもの』(ビレッジプレス)だ。こちらは「彷書月刊」「雲遊天下」といった、それ自体が「小規模出版物」で

    ZINEの生態系とローカリティ
  • 第1回 図書館におけるデザインとは何か?

    皆さんは「デザイン」という言葉を聞いたときに、何を思い浮かべるだろうか。 スマートフォンに代表されるようなデジタルガジェット、家電、文房具などのプロダクト・デザイン。ロゴ、広告、CI・VIなどのグラフィックデザイン。洋服、アクセサリーなどのファッションデザイン。建築、インテリア、ランドスケープなどの環境デザイン。ウェブ、アプリ、インフォグラフィックス(情報、データ、知識を感覚的に表現したもの)などの情報デザイン。コンピューターゲーム、ソーシャルゲームなどのゲームデザイン。 ほかにも、サービスデザインや地域デザイン、ソーシャルデザイン、データデザインといった近年、耳にするようになった新しいデザイン分野もあり、(数年後には消えていく分野、消えていく名称もあると思われるが)デザインが対象とする領域は際限なく広がっていくようにみえる。 これらのデザイン分野は、モノであれ、コトであれ、産業化によって

    第1回 図書館におけるデザインとは何か?