『遊牧民から見た世界史―民族も国境もこえて』 杉山正明 『砂の文明・石の文明・泥の文明』にも引用のある、モンゴル史の専門家杉山正明氏による名著。「定住民中心の世界史」からのパラダイムシフトを図る、という野心作です。 ただし、その「定住民中心の世界史」の最低限の知識がなければ、ズラし具合というのも愉しめません。また、ほとんどの読者にとって、中央アジアの地理自体が模糊としているはずです。それこそ「定住民中心」「西欧中心」の世界観の賜物なわけです。もうひとつ、本書でも指摘されていることですが、「中央アジア」という世界は、長い間「ソ連」という枠組みの周縁として、正確な分節化を拒まれてもいました。どっぷりと洗脳につかり、かつ中国史の苦手なわたしとしては、前半は地図ページと行ったり来たりしながら、四苦八苦して進んでいました。 素人目にも間違いなくエキサイティングなのは、著者の専門でもあるモンゴル帝国に