訪問診療に学生さんが同行してくれました。終末期にある患者さんのご自宅で、あと数日という見通しです。乾いた身体、微弱な呼吸・・・ 医学生とはいえ、いや医学生だからこそ、こうした「老衰の死」を迎えようとしている高齢者を見たことがなかったようです。 帰りの車内で、学生さんは不安そうに私に質問しました。「病院でなくて大丈夫でしょうか? 死ぬときの苦しみを見て、ご家族は困惑しないでしょうか?」 なるほど、率直な質問です。そして、医学生らしい・・・。それには答えず、私は次のように質問を返してみました。「野生動物が死を迎えるときってさ、苦しみながら死んでゆくと思う?」 助手席の学生さんは、混乱したように視線をフロントガラスに泳がせていました。おそらく、考えたことがなかったのでしょう。学んだこともない・・・。そこで、私はこんな風に説明してみました。 「ヤマネコがお気に入りの洞穴で息を止めるとき、カラスが馴
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