日本の置かれた地政学が領土問題を「島」を巡る問題に帰着させるように、グルジアと旧ソ連・中東においては、周知のことながら民族と宗教がまさに歴史とナショナリズムの問題において主要なファクターとなる。 先月、トルコ共和国東部に残存するグルジア教会の遺跡を訪れた。 川嶋氏の韓国訪問よろしく、イスラム国トルコへのキリスト教遺跡訪問に多少緊張したものの(そもそも20年前のソ連崩壊まで北大西洋条約機構=NATO加盟国トルコとの往来は厳しく制限されていた)、見事にグルジア人の観光名所化しており、拍子抜けするほどであった。 美しい教会遺跡とその困難な保存状態については写真で見ていただくとして、今回は、グルジア正教会とグルジア人が「タオ・クラルジェティ」と呼ぶトルコ領内に含まれる旧グルジア王国支配地域の歴史について簡単に触れてみたい。そのうえで、遺跡を巡る複雑な環境についてもリポートする。 グルジアは古い正教