長尾和宏 ◆往診シリーズ (その28) 死の壁の真っただ中で悶える患者さんに しょうがないので、腕枕で添い寝をしました。 しかし、深夜に激しい痛みが出て眠れなくなりました。 レスキューの麻薬を全部使い切ったことに気がつきました。 がんの激しい痛みは、麻薬でないととても収まりません。 しかし、日曜日の深夜は、日本中の薬局が閉まっています。 院外処方は、こういう時に不便です。 以前は院内処方でしたから、深夜でも麻薬を調達できました。 しかし、院外処方では、どうすることもできません。 「在宅医療は24時間365日って言ったって、口だけだな。 真夜中に麻薬ひとつ調達することすらできないんだから」 研修医君に呟いたつもりが、既に帰ったあとでした。 独語を吐いている自分自身が、情けなくなりました。 結局どうしようか、と思案にくれました。 そういえば、夜中もやっている薬剤師さんを思い出し