→紀伊國屋書店で購入 2004年に出版された最新のカフカ入門の邦訳である。 「最新」と断ったのには理由がある。カフカは80年以上前に亡くなっているが、1982年から旧来のブロート版全集とは相当異なる本文を提供する批判版(白水社から刊行中の『カフカ小説全集』はこちらにもとづく)、1997年年からは手稿の写真版を提供するとともに「帳面丸写し主義」に徹した史的批判版という二つの新たな全集の刊行がはじまっている。伝記研究や当時のプラハの状況も解明が進んでいて、従来のカフカ神話の多くが訂正されている。最初の長編小説の題名が『アメリカ』から『失踪者』に変わったことでもわかるように、カフカ像は今なお揺れうごいているのである。 わたしは一昔前の知識しかもっていなかったので、本書は驚きの連続だった。学生時代にカフカを読んだだけという人はぜひ本書を読むべきだ。 カフカというと無名のまま死んだ孤立した作家という