自分の体験を手がかりに、雑食的に本を貪り読むと、自分の体験と本の登場人物が積んだ経験の境界線がわからなくなる。この本は読み終わった瞬間にその錯覚に囚われ、この本を読んだ前の世界に戻れなくなってしまった。 バックパッカー、古くは沢木耕太郎や藤原新也が有名だ。旅先でも彼らの本が伝説のバイブルとなり、バックパッカーの間で古本が交換され流通している。90年代は電波少年で一躍有名になった猿岩石。突然拉致され、目隠しで車にのせられるシーンは忘れられない。いざこざはあれどユーラシア大陸を横断し、バックパッカーブームの一翼を担った。 00年代はメジャーではないが、若者の心にあるのは高橋歩だろう。本書では自分探し界のカリスマとして登場する。私自身も旅先のニュージーランドで15歳の少年にその存在を教えてもらった。少年は15歳年上の彼女に誕生日プレゼントでもらったと自慢げに高橋歩の本を僕に貸してくれた。そんな私