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ブックマーク / honz.jp (112)

  • 『性表現規制の文化史』えっちがいけないことなのは何故か - HONZ

    書、表紙が素敵なのだ。 裸の成人女性からうまい具合に乳首を隠したイラスト、線画の描写ゆえ生々しさはなく90年代に流行ったオシャレ系マンガの表紙のようである。 とは言えハダカはハダカ、サラリーマンばかりの通勤電車で読むのは平気だった私もさすがに目の前に小学生男子が立っている中では書の続きを読むのをためらった。 こんな風に感じるのは何も私だけではないだろう。そもそもたとえ乳首が隠されていたとしても裸の成人女性が描かれた表紙を人前で出すこと自体やりたくないという人も多いはずだ。(うん、屋さんでカバーかけて貰えるのってとっても大事かも)。 この「通勤電車ならいいや」と「でも小学生男子には刺激が…」の線引きをしている私の気持ちは一体どこから生じているのだろうか。 えっちなのは、いけません! 我々(少なくとも私は)はそう刷り込まれている。だから、公共の場でえっちなイラストの表紙のを出すのがため

    『性表現規制の文化史』えっちがいけないことなのは何故か - HONZ
  • 『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 コロンバイン高校銃乱射事件。1999年4月20日、コロンバイン高校の学生2人が無差別に発砲を行い最終的に自殺、教師1人と生徒12人が死亡し、24人が負傷した傷ましい出来事だ。発生から15年以上が経った今なお学校銃乱射事件の代名詞的存在とされるのは、犯人であるエリックとディランがそれぞれ卒業を間近に控えた、18歳・17歳の少年だったという若さだけが理由ではない。 2年以上をかけて準備されていた計画の周到さ。そして、何百人もの生徒たちでにぎわう昼時のカフェテリアを爆破するという残虐な構想。計算ミスや完成度の低さにより爆弾は不発に終わったものの、実際の被害を遥かに上回るその計画の大きさは、人々の間に驚きと恐怖の渦を巻き起こした。 言うまでもなく、この事件を題材にして過去に多くのが書かれ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ
  • 細胞レベルから健康になる 『テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム』 - HONZ

    「同じ年齢なのにどうしてこうも違うのか」と思うことが少なくない。たとえば同じ60歳でも、Aさんは背筋がピンとしていて、肌には張りがあり、病気などどこ吹く風。それに対してBさんは、腰が曲がっていて、肌にはシミやたるみが目立ち、多くの慢性的な疾患に悩まされている。では、AさんとBさんはどうしてそれほど違っているのだろう。 ふたりの違いに大きく関係しているのが、「細胞の老化」だ。わたしたちの体を構成する細胞は、分裂を繰り返し、日々新しいものに置き換わっている。だが、そうした細胞の分裂にも限界がある。そして、細胞が分裂・再生できなくなると、当の細胞は老化してしまい、体の組織も老化を始める。先の例のように、Bさんが早くから老けこみ、早くから多くの疾患に苦しんでいるのは、その細胞がすでに老化しているからだ、とそういうわけである。 しかしそれならば、細胞の老化に「早い/遅い」があるのはどうしてなのだろう

    細胞レベルから健康になる 『テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム』 - HONZ
  • 『宇宙はなぜ「暗い」のか?』絵本にして科学推理小説 - HONZ

    量子論や分子生物学などの先端科学は、専門用語を理解し、わずかな時間、記憶するだけでも素人にとっては難しいものだ。中学高校で学習したはずの絶対温度やプラズマという言葉ですら、あやふやにしか覚えていないことが多い。そこで科学者たちは模式図やグラフ、写真を使って必死に説明しようと試みる。結果的に科学読み物は、小説やビジネス書などと比べるとはるかに絵のような体裁になっていくのだ。 書はその好例である。実に丁寧に、光とは何か、惑星はなぜ惑う星と呼ばれるのか、ブラックホールの正体とは、宇宙の年齢は何歳か…などについて、大人が子供から聞かれたときに適切に答えることができるよう、分かりやすい言葉と豊富な図版で説明を試みている。 それでも、科学書を読み進めることは難しい。そもそも日常生活に全く関係のない宇宙論などを読む理由が見つからないのだ。そこで書はなぜ宇宙は暗いのか、という疑問を読者に投げて、読む

    『宇宙はなぜ「暗い」のか?』絵本にして科学推理小説 - HONZ
  • 『ヒットの崩壊』聴取から体験へという大変化 - HONZ

    ラジオ局のプログラムには音楽番組が欠かせない。「電リク」という言葉を最近は知らない人も増えたが、電話でリクエストを受け付ける番組が各局で当たり前のようにオンエアされていた時代があったし、ヒットチャートを紹介する番組はいまも健在だ。 僕自身もそういった音楽番組の制作に携わったことがある。あれはたぶん2000年前後くらいだったと思うが、ちょっとした異変を感じるようになった。電話オペレーターが全員女子大生アルバイトという番組を担当していたのだが、リスナーからのリクエスト曲を聞き取る際、彼女たちが曲名を知らないというケースが増えてきたのである。 リスナーからの電話を受けると、彼女たちはラジオネームや番組へのメッセージ、リクエスト曲のタイトルなどを聞き取ってシートに記入する。それがディレクターのもとに回ってくるのだが、そこにギョッとするような曲名が書かれているのである。 思い出すといまでも動揺を禁じ

    『ヒットの崩壊』聴取から体験へという大変化 - HONZ
  • 『ゲノム革命 ヒト起源の真実』 ゲノムは口よりものを言う - HONZ

    ヒトにもっとも近縁な類人猿はチンパンジーだ、ヒトとネアンデルタール人は交配していた、ヒトが出アフリカを果たしたのは5万年前ではなく10万年前にもさかのぼる。最先端の分子生物学は、ヒトの起源について驚くほど多くのことを教えてくれる。「ゲノム時代」と呼ばれる現代では、新事実が発見されるスピードは加速度的に増している。つい先日も、「ネアンデルタール人絶滅は人類の病気のせい?」という目を引くニュースが伝えられていたように、人類の足跡は徐々にだが着実に明確になりつつある。 ヒトの起源に関する最新成果の多くはゲノム解析によるものだというが、非専門家にはゲノム解析が具体的にどのようなものであるかを想像することは難しい。科学者たちはどのような物的証拠を集め、どのように分析し、どのようにロジックを構築して、驚きの結論を導いているのか。ゲノミクスによる霊長類起源の研究を開拓した一人でもある著者は、書を通して

    『ゲノム革命 ヒト起源の真実』 ゲノムは口よりものを言う - HONZ
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    前代未聞!!女装した少年が悪と戦う少年漫画!『ボクらは魔法少年』... 2018年09月19日 2018年9月19日(水)に発売した「週刊ヤングジャンプ」コミックスの中から、日はマンガ新聞編集部イチオシのタイトルをお届けします!

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  • メルカトルからグーグルへ『世界地図が語る12の歴史物語』 - HONZ

    地図を見るのは楽しい。行ったことがある場所なら、あぁこんなだったと思いだせるし、行ったことがない場所なら、どんなところだろうかと想像力がかきたてられる。いまや、世界中、地図のないような場所はない。しかし、そんな時代になったのは、それほど昔のことではない。 古代バビロニアに始まり現代で終わる、地図についての物語集だ。それぞれの地図が作られた時代が語られ、その意味とインパクトが語られる。一つずつが含蓄あふれる物語になっているが、通して読むと、地図というものが、どのような目的でどのように作られてどのように利用されてきたのかが手に取るようにわかる。 最古の地図として紹介されているのは、イラクで出土した、紀元前700~500 年頃の古代バビロニアの粘土板である(序章)。そこに刻まれた楔形文字の内容から地図だと確定されているが、その絵柄だけだと地図とはわからないという程度の代物だ。それが、紀元前150

    メルカトルからグーグルへ『世界地図が語る12の歴史物語』 - HONZ
  • 『スーパーベターになろう!』ゲームで変える、あなたが変わる - HONZ

    ゲームばっかりやってたらダメでしょ!」そう子供の頃に言われた経験を持つ方も多いだろう。多くの人に愛されながらも、長らくゲームというものは日陰者の存在であった。 しかし、VR元年とよばれる2016年を目前に控え、このようなゲームの位置づけが大きく変わってきているという。一つはテクノロジーの進化によって、バーチャル領域の精度が飛躍的に向上してきていること、そしてもう一つはゲームの効能というものが科学的に解明されつつあることによる。 書で興味深い事例が、いくつも紹介されている。ワシントン大学の研究チームが重度の火傷治療中の患者のために開発した、『スノーワールド』という3Dバーチャル環境。これは患者がVRヘッドセットを着用し、バーチャルな氷の世界を歩きまわるものだ。火傷治療中の一番痛みが激しい時に、氷の洞窟を探検したり、雪玉を投げたりというプレイすると、痛みや苦しみの軽減にモルヒネよりも大きな

    『スーパーベターになろう!』ゲームで変える、あなたが変わる - HONZ
  • 『コーランには本当は何が書かれていたか?』 - HONZ

    イスラムを深く知るためには、「コーラン」を避けて通ることができない。ジハードで死ぬと、楽園の72人の乙女という報酬があると書かれているのは当か? そして過激派たちによってどのように曲解され、利用されてきたのか? 今あらためて問われる、コーランに書かれている内容の質。(HONZ編集部) 書はカーラ・パワー(Carla Power)著If the Oceans Were Ink――An Unlikely Friendship and a Journey to the Heart of the Quran(『たとえ海がインクであっても――奇妙な友情とコーランの心髄への旅』)(2015年 ヘンリーホルト刊)の邦訳です。 副題にある「奇妙な友情」とは、著者である気鋭のアメリカ人女性ジャーナリスト、カーラ・パワーと、書における彼女の対話の相手、イスラム学者のモハンマド・アクラム・ナドウィー師と

    『コーランには本当は何が書かれていたか?』 - HONZ
  • 『コネクトーム 脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか』 - HONZ

    心をつかさどっているのは心臓であると、かつては広く信じられていた。心臓はドクドクと拍動する特別な臓器であるうえに、気持ちが高ぶれば鼓動が速まりもするから、そう考えるのはごく自然なことだったろう。エジプトでミイラを作る際にも、心臓は大切に取り出され、別個にミイラ化されたのに対し、脳は、耳や眼窩、あるいは頭蓋にあけた小さな穴から搔き出され、捨てられていたようだ。人びとは古来、心の働きに多大な関心を寄せてきたが、脳がいったい何のためにあるのかはわからないままだった。 脳の研究と言えるようなものがはじまったのは、長い歴史をもつ人類の知の営みの中では、ごく最近のことでしかない。ようやく18世紀になって、人の性格や能力を脳に結びつける「骨相学」の考えが生まれた。19世紀になると、細胞に色をつける染色技術が発明されたおかげで、脳もまた多くの細胞からできていることが明らかになった。それは脳研究にとって画期

    『コネクトーム 脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか』 - HONZ
  • 数学がはじまる瞬間 —『数学する身体』に寄せて― - HONZ

    数学する身体』は、独立研究者・森田真生氏が「数学とは何か」そして「数学にとって身体とは何か」を自問しながら数学歴史を追いかけた一冊である。その流れは、アラン・チューリングと岡潔の二人へと辿り着く。 そしてこの森田氏の試みを応援すべく、二人の刺客が客員レビューに名乗りを上げた。一人目は科学哲学を専門とし、同じように身体論へアプローチする下西 風澄さん。彼は書を「格闘の書」と評す。ちなみに2人目は10月21日に掲載。乞うご期待。(HONZ編集部) 私たちが心を高鳴らせるのは、いつも「はじまりの瞬間」である。 数学という完成された美しい建築物を眺め、そして学ぶとき、私たちはその起源を忘却している。しかし、そこには確かに、不安になるほどの未知と可能性に開かれた「はじまりの瞬間」、そしてそこから走り出す物語があったのだ。 書は、「数学がはじまる瞬間」、その風景を垣間見せてくれる。それは、生ま

    数学がはじまる瞬間 —『数学する身体』に寄せて― - HONZ
  • 『「音大卒」は武器になる』 ピアニストを撃つな! - HONZ

    西部開拓時代のアメリカの酒場には、ケンカ騒ぎの殺し合いからピアニストを守るために、「ピアニストを撃たないでください」と貼り紙がしてあったという。経済戦争などという言葉がある現代にも、同じことが言えると私は感じている。経済優先の社会から、芸術やスポーツなど、祝祭の能力をもった人を守らなければならない。書は、長らく銀行員として働いたあと、現在は武蔵野音楽大学の就職課に勤務している著者が書いた、異色のキャリアガイドである。 音大への愛がつまった書を読めば、現役音大生や、音大志望の高校生の方はもちろん力が湧いてくる。そして、その親御さんも安心されるだろう。しかし私は、書を音大に縁のうすい方々にこそ読んで欲しい。企業の採用担当者、子をもつ全ての親、音楽以外の芸術系学部出身の方などである。それは、最初に書いたような社会環境の中で、芸術を志す芽をつんではいけないからだ。経済環境が厳しくなればなるほ

    『「音大卒」は武器になる』 ピアニストを撃つな! - HONZ
  • 『人類を変えた素晴らしき10の材料』鋼鉄・ガラス・グラファイト、すべての材料は材料からできている - HONZ

    たとえば宇宙、あるいは深海、もしくは辺境。人類は未知の世界に魅了され、フロンティアを切り開いてきた。だが我々の日常には、もはや冒険すべきフロンティアは残されていないのだろうか。 材料科学という研究に従事してきた著者は、マンションの屋上から見えるありふれた風景を材料という視点から見つめ直すことにより、既知の世界をフロンティアへと変える。 文明とは煎じ詰めれば材料の集合体であり、万物は数々の材料から形づくられる。書では鋼鉄やチョコレート、ガラスからインプラントまで10種類の材料を取り上げ、人間スケールの世界から微細なスケールの内なる宇宙へと旅立っていく。 根底にあるのは、「すべての材料は、材料からできている」というシンプルな事実である。は紙から出来ており、その紙はセルロース繊維から出来ており、さらにセルロース繊維は原子から構成される。 それぞれの詳細を観察するために、描かれる対象は人間スケ

    『人類を変えた素晴らしき10の材料』鋼鉄・ガラス・グラファイト、すべての材料は材料からできている - HONZ
  • 『偶然の統計学』その偶然、意外と起こるかも? - HONZ

    良くも悪くも、「ありえない」ことがたびたび起こるのが世の中だ。大多数の人はかすりもしない宝くじで、一等を複数回出した人は何人もいるという。統計モデルでは限りなく低確率とされていた金融市場の大暴落は、近年だけで何度も起きてしまった。 2009年9月6日、ブルガリアの国営ロトは当選番号としてランダムに「4、15、23、24、35、42」を選んだ。その4日後の2009年9月10日、ランダムに選ばれた次のロトの当選番号は、前回とまったく同じ「4、15、23、24、35、42」だった。 52年の歴史を誇るブルガリアの国営ロト史上、異例の事態である。当時のメディアは大騒ぎ。同国のスポーツ大臣は調査を命じた。大がかりな不正行為でもあったのか? 前回の番号が何らかの方法でコピーされたのか? しかし書によれば、確率を正しく見積もると、そうした限りなく起こりそうにない出来事が実は起こってもおかしくないという

    『偶然の統計学』その偶然、意外と起こるかも? - HONZ
  • 『石油と日本』石油を持たない国の試行錯誤 - HONZ

    これまで歴史や評伝にて部分的に語られるものの、日の石油外交や資源開発の歴史について網羅的にまとめた書籍は、ほとんど存在しない。日軍が石油を求めて東南アジアに武力進出していったことは歴史年表に記されてはいるが、誰がどういう経緯で進軍を決めたかや当時の資源開発現場を紹介するはあまりない。太平洋戦争は石油の戦争といわれるわりに、私たちは事の顛末をきちんと理解していないのかもしれない。 そんな中、明治から現在までの日の油田開発と資源外交に焦点をあてる書は希有な一冊といえよう。これまで歴史に埋もれてきた数多くの物語を紡ぎだす良書である。しかも、歴史の表舞台に登場するプレイヤーの動向を紹介するだけでなく、そんな彼らを支えた人、場合によっては彼らにすら認知されていない現場の人たちにまでスポットライトをあて、日のこれまでの資源外交と油田開発の歴史を振り返っている。 書を読むと日の石油政策

    『石油と日本』石油を持たない国の試行錯誤 - HONZ
  • 『キャパの十字架』の姉妹編 『キャパへの追走』 - HONZ

    ロバート・キャパというカメラマンが第一次インドシナ戦争の取材中、地雷の爆発に巻き込まれて死んでから半世紀以上が経つ。だが彼が撮った写真は依然として人気が高く2013年に横浜美術館で行われた写真展には5万6千人以上の入場者があったという。 キャパの評伝を翻訳し、彼の出世作となった「崩れ落ちる兵士」に疑問を抱いていた沢木耕太郎は、「旅するカメラマン」であったキャパの足跡を追う旅に出る。訪れた土地、泊まったホテル、見た風景の“今”を写すためでもある。キャパが激しい一生の中で捉えた一瞬の現場に立ち、彼の人生を追走し追想する。 1913年、キャパはハンガリーのブダペストでユダヤ人の両親の下に生まれた。ベルリンでカメラマンの修業中、ナチス化するドイツからウィーンへ逃亡し、その後パリに住まう。そこで後の写真家集団「マグナム」となる仲間たちと知り合った。キャパの人生を方向付けた恋人、ゲルダ・タローと出会っ

    『キャパの十字架』の姉妹編 『キャパへの追走』 - HONZ
  • 『チャップリンとヒトラー』イメージ大戦 - HONZ

    書は史実を丹念に追いながら、チャップリンとヒトラーのメディア戦争の実相を暴く一冊だ。 同時に、それはネット社会の現代を生きる私たちにとって非常に切実な課題を突き付ける。 はたして、迫り来る全体主義の恐怖の中で「笑い」という武器しか持たないチャップリンはいかにして悪夢の独裁者と闘ったのか。 「喜劇王」と呼ばれるチャールズ・チャップリンは1889年4月16日に誕生した。 世界中を震撼させたアドルフ・ヒトラーも同年4月20日、同じ週わずか4日違いで誕生している。 運命のいたずらか20世紀に最も愛された男と、最も憎まれた男は、偶然にも同じちょび髭をシンボルとしていた。うねる戦乱の渦のなか、それぞれ異質の才能を発揮し20世紀のモンスターへと変化していったが、両者はやがてイメージという武器でメディアの戦場に登壇する。ヒトラーにとってイメージとは、戦車や爆撃機と同じまたはそれ以上に重要な武器なのだ。

    『チャップリンとヒトラー』イメージ大戦 - HONZ
  • 『原子・原子核・原子力-わたしが講義で伝えたかったこと』 - HONZ

    さすがは山義隆、と唸るしかない一冊だ。これが予備校での講演録だというから恐れ入る。原子とは何か、原子核とは何か、が、アリストテレスにはじまり、発見の歴史的経緯を追いながら丁寧に説明されていく。多少の数学と物理の知識は必要かもしれないが、古典力学から説き起こされる原子や原子核の話は直感的に捕らえやすく、決して難しくない。 そして、最後は原子力について。核分裂の発見から、原子炉の開発、そして、原子爆弾。もちろん原子力発電の問題についても論じられている。あぁ、なるほど、このを読むと、山義隆が『磁力と重力の発見』で大佛次郎賞を受賞した時の、何のために勉強するのかについて語ったこの言葉がすとんと腑に落ちる。 専門のことであろうが、専門外のことであろうが、要するにものごとを自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を表明できるようになるため。たったそれだけのことです。そのために勉強するのです。 原子

    『原子・原子核・原子力-わたしが講義で伝えたかったこと』 - HONZ
  • 『6度目の大絶滅』で人類も絶滅するのか? - HONZ

    バブルの渦中にいると、自分を取り巻くものがバブルであると理解することは難しい。ハジけて初めて、それはバブルとして広く知覚される。当の悲劇は、取り返しの付かない段階にならなければ気づくことができないからこそ、悲劇となりうるのかもしれない。それでも、リーマン・ショックが起こる前からサブプライムローンの危険性にいち早く気づいて大儲けした人々がいたように、人類を襲う現在進行形の悲劇を察知した科学者達が声をあげはじめた。その悲劇というのが書のテーマである、生物の大絶滅だ。 いまこの文章を読んでいる最中にも、アマゾンの熱帯雨林、アンデスの高地など世界のいたるところで、多くの生物種が絶滅している。ただし、ダーウィンの自然淘汰説からも分かるように、絶滅自体は珍しいものでも、悪いものでもない。問題となるのは、絶滅のスピードだ。平穏な時代の絶滅率を「背景絶滅率」というが、現在もっとも絶滅の危機に瀕している

    『6度目の大絶滅』で人類も絶滅するのか? - HONZ