これも遅ればせながら読んだ。 戦時中、言論統制の親玉として恐れられ、戦後はまさに言論弾圧の当事者として出版界からの激しい非難を受けた鈴木庫三陸軍少佐。だがその実像は悪玉イメージとは大きく異なり、茨城の貧農に生まれ、軍の中で必死に勉強することによって立身出世を遂げた苦労人であった。彼は奢侈を嫌い、宴席を嫌う、自分にも他人にも厳しい道徳家であった。軍で働きながら日大夜間部を首席で卒業し、東大文学部教育学科に学んだ。著者は鈴木の日記という一次資料から、出版人・言論人が彼を恐れたのは、彼が軍人というよりむしろ、学者であり、自分たちと近い所にいたからではないかと分析する。また、陸軍・海軍の対立も、背後に見え隠れする。スマートな海軍、泥くさい陸軍というイメージが当時はあったのだ。 日記からすると、鈴木の思想は、むしろソ連型の国家社会主義に近い。鈴木は、裕福な生まれの者が贅沢を行うの嫌い、経済人たちが利
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