私が感じる認知科学の魅力の一つは、その立場(パラダイム)の中間的なところにある。(認知科学がまだなかった)認知革命の真っ最中のころ、一方に当時の心理学で主流であった科学的厳密さの代償に意味を追放した行動主義があり、他方に人間性心理学のような人生の意味で充満した人間主義(ヒューマニズム)があった。それに対して、認知革命の意義はそのどちらでもないもう一つの道、科学的でありながらも(意味のある)冷たくない方法、を示したことにある。 いまでは行動主義や人間主義をあからさまに採用する人は少なくなっているが、にもかかわらず、実はこうした認知科学の中間的な位置は最近でも変わっていない。一方にあるのが脳科学*1や分子生物学に代表される還元主義*2であり、他方にあるのが熱い政治的意味の詰まった構築主義*3であったりする。科学的厳密さを求めるなら還元主義を採る方が妥当だし、分かりやすい意味を求めるなら構築主義