9.(悪)夢工場としての現代 今回は、ヴァルター・ベンヤミン(Walter Bendix Schönflies Benjamin 1892-1940)がとらえた近代、というよりもむしろ現代、を考えていくことにしましょう。 疎外論から物象化論 マルクスにおいて、「疎外」とは、作り手である人間から産み出された物が、作り手の手を離れて作り手の、作り手である人間の手の届かない物になってしまうこと、いいます。 マックス・ヴェーバーの弟子でもあったジョルジュ・ルカーチは、この疎外論を『資本論』にもとづき、さらに発展させて、「物象化論」を提起しました。 物象化とは、作り手である人間が生み出した関係が独立して、ぎゃくに人間を支配してしまう事態をいいます。例えば、経営のために生きている人間、官僚制に支配される人々などがその例です。 貨幣の出現によって、使用価値とは別の交換価値が生まれ、その交換価値によって物