2013年7月21日、参議院議員選挙が実施された。この選挙では、総じて憲法改正論議は低調で、議論が深まったとは言えない。とはいえ、自民党や日本維新の会はそれぞれに改憲を訴え、護憲派の野党や候補者は改憲に強く反対した。 その中で、とくに見過ごせないのが、選挙直後の安倍晋三首相の発言である。複数の選挙特番中のインタヴューで、安倍首相は、フェイドアウト気味だった憲法96条改憲に再び意欲をしめした。本稿では、この点を分析し、今後の方向性を整理しておこう。 2012年4月、自由民主党は、日本国憲法を全面的に変更する「日本国憲法改正草案」(以下、自民党草案)を発表した。その内容は、今回の参議院議員選挙公約に以下のように要約されている。 【自民党「日本国憲法改正草案」(平成24 年4 月発表)の主な内容】 (1)前文では、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つの基本原理を継承しつつ、日本国の