国葬のあり方は国によってさまざまだが、君主制の残像を伴う。戦前の日本の国葬令も、天皇や天皇に尽くした人々を国葬にするという、天皇制と結びついた形で成立した。戦後に国葬令が廃止されたのは、これが天皇主権を前提とした制度だったからだ。国民が主権者となり、政治体制そのものとの間に矛盾が生じるため、維持できなくなった。 現在の日本の代表民主制は、一般国民より上位の存在としての権力者を持つものではなく、あくまで行政権を担う代理人、いわば国民のための「管理人」として首相を選んでいる。仮に首相にどんな功績があっても、一般国民を超越した上位の存在を悼むかのような形式で国葬を実施するのは、代表民主制という政治体制についての誤解を国民に広める危険がある。それが今回の論争の一番の問題点だ。安倍晋三元首相の葬儀は、国葬とは別のやり方で実施すべきだろう。 吉田茂元首相の国葬の時も、法的な措置ができなかったり、相当な
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