◇教育格差、今こそ正す時 新学年が始まる頃になると、「マンドの奇跡」に思いをはせる。 世界銀行での23年間、多種多様な職務に就いたが、何故かどこに異動してもパキスタンがつきまとった。非人間的な貧困生活を初めて知り、想像を絶する貧富の差に強烈なショックを受けた国だ。民主主義を隠れみのに腐敗しきった為政者は、私腹を肥やすこと以外は無関心。それを嘆くことさえ諦めた国民感情に、Failed State(破滅国家)となりうるリスクを察知した。貧困解消への糸口など見えず、パキスタンの未来に絶望感を抱き始めた頃、「マンドの奇跡」を知った。 パキスタンで最も貧しい地域は、南西の片隅にあるバルチスタン。そのまた片隅のマンド村に、小学校から高校までの一貫校、マンド女学院がある。女学院の偉業に感動した人々が、誰からともなく「マンドの奇跡」と呼びはじめ、定着した。