1998年から2001年まで筆者は米プリンストン大学にいたが、知的刺激にあふれた時期だった。米FRB(連邦準備制度理事会)前議長のバーナンキ教授、08年にノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授らが、毎週のセミナーで日本を題材に非伝統的金融政策について侃々諤々(かんかんがくがく)議論していたのは面白かった。結論を一言で言えば、「お金を大量に刷れば、デフレから脱却できる」ということだった。 01年に帰国後、経済財政諮問会議を手伝うことになったが、当時の日本のアカデミズムに驚いた。一部のマイナーな人たち(今では「リフレ派」と呼ばれる)を除き、主流派の人は「クルーグマンらの言うことは信じてはいけない」と公言していた。 例えば、諮問会議の民間議員だった東大の吉川洋教授から、「高橋さん、貨幣数量説(貨幣=マネーの数量で物価水準が決まるという学説)を信じているの?」と言われたこともある。 それに対し