統計学は便利なツールではあるが、容易に理解できない部分もある。理由は幾つもあるだろうが、哲学的な側面がある一方で、それに時間をかけてレクチャーされる事が無いのも一つの理由だと思う。統計学も何かの必要性、もしくは考え方に応じて発展した来たわけだが、コラムの人物紹介を除けばテキストに書かれた説明は無味乾燥としている。『統計学を拓いた異才たち』は、そういう隙間を埋めてくれる本になっている。 本書は20世紀の統計学史と言った内容だが、歴史学者ではなく統計学者が記述しているためか、統計学上の重要な概念の周辺を良く押さえている。訳注を見る限りは、逆に歴史的事実に幾つかの誤りがあるようだが、統計学の背後を知る上では大きな問題では無いであろう。 読み進めていけば、母数、t分布、最尤法、検定などの実に多くの概念が、20世紀に生み出されて来たことがわかる。しかし、それらは一般に利用されているのに、無理解や誤解