私たちはなぜ美術館を訪れるのだろう。アートにはどんな力があるのか。今回の「高校生のための教養入門」では、そんな疑問を持って、森美術館のキュレーターとして活躍される荒木夏実さんを訪ねました。「アートを仕事にすること」は、荒木さんにとって、「社会とどう関わるか」につながる生き方の選択だったのです。(聞き手・構成/長瀬千雅) ――荒木さんは、キュレーターというお仕事はどのようなものだとお考えになっていますか。 「展覧会の企画と実施をする人」というのが最も基本的な定義ですね。美術館に所属する人が大多数ですが、最近では特定の機関に属さないインディペンデント・キュレーターも増えてきました。日本では学芸員と言われることが多いですが、公立の美術館・博物館が多い日本では、学芸員資格を持った美術企画の専門職員という位置づけが主でした。今でも、県や市の職員として採用されてそのままずっと勤める人が多数です。インデ