2024年03月09日22:21 カテゴリ本 マックス・ウェーバーのニヒリズム 日本人はニーチェが好きだ。彼はヨーロッパ(特にドイツ)では無神論者としてきらわれているが、日本では『超訳 ニーチェの言葉』などという偽書が100万部以上も売れた。その中身は「初めの一歩は自分への尊敬から」とか「いつも機嫌よく生きるコツ」といったハウツーものだ。天然ニヒリストの日本人にとっては、神が死んだかどうかなんてどうでもいいのだろう。 他方で日本には、大塚久雄以来の「ウェーバー学」の伝統がある。これは講座派マルクス主義の変種で、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を金科玉条として「日本人の精神的自立」を説くもので、膨大な文献学の蓄積がある。 こうした近代化論的なウェーバーの読み方は日本特有のもので、歴史学では『プロ倫』は否定されている。『世界宗教の経済倫理』などの宗教社会学も、ドイツ語訳の2次文献