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ブックマーク / jp.ign.com (12)

  • 【SF史に残る(べき)ゲームたち】第1回:メタルギアシリーズ――現代SF最高の達成

    記念すべき第一回では、「メタルギア」シリーズを扱う。 「メタルギア」シリーズは、SFというジャンルにおいて、ゲームにおける表現が最も優れたものになってしまったという事態を決定的に示す作品である。ゲームというメディアの固有の性質が、SFの主題、展開、表現方法、映像、体験……などなどと複雑に絡み合って非常に高度な達成を行った記念碑的作品であり、ゲームという芸術の最高峰に位置する作品であると断言して構わない。 論が重視するのは、そのメディア自身の科学的・技術的な進歩と、形式と内容が相互関係を持つ類のSFゲームである。SFというジャンルが、ミステリやホラーなどの他のジャンルと決定的に違う部分はそこにある。日SF大賞を設立した小松左京や筒井康隆はそれを明確に意識していた。ここではそれを、「メディア技術との随伴性」と呼ぶことにする。 その観点からすれば、「メタルギア」は、日SFの、近年における最

    【SF史に残る(べき)ゲームたち】第1回:メタルギアシリーズ――現代SF最高の達成
  • 「ブレードランナー2049」の世界一複雑なセックスシーンはどのようにして作り上げられたのか

    「ブレードランナーであるKは、暴力を通してでしか肉体と触れあったことがありませんでした」 「ブレードランナー2049」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はケベック風の柔らかい口調からは想像できないほどの熱意を込めて語った。「彼は物の愛情を味わったことがありません。人間はレプリカントを嫌悪しているので、物の人間と触れあったこともありません。そして、同類のレプリカントも仲間殺しのブレードランナーを嫌っています」 「ですから、彼は孤独なのです。彼が唯一関係をもてる相手はジョイですが、ジョイとは物理的に触れ合うことができないので、この関係性は制限されています。実際のところ2人の関係は奇妙で深遠なものですが、完全ではありません」 映画の折り返し地点で、ヴィルヌーヴ監督と、脚家のハンプトン・フィンチャー、マイケル・グリーンは、Kとジョイの関係を「完全にする」方法を見つける。 AIのガールフレンド、ジョイ

    「ブレードランナー2049」の世界一複雑なセックスシーンはどのようにして作り上げられたのか
  • 【SF史に残る(べき)ゲームたち】第0回 ゲームを正当に評価するために

    ゲームは、現代を代表する表現形式である。疑うならば、電車に乗れば良い。子どもも大人も、スマホを開き、ゲームに興じている。 これだけの大勢が日常的に接しているメディアである。人々の感性や認識に影響を与えないわけはない。しかし、そうであるにも関わらず、これまで、批評・研究は、正当な目を注いで来なかった。その理由は、人類が手に入れた新しい表現形式・メディア・芸術であるゲームの正当な価値を見誤ってきたからでもあるし、既存の方法論ではゲームを論じることが困難であった、という理由にも拠るだろう。 ゲームは、少なくとも映画が払われてきたのと同じぐらいには、注目され、論じられてしかるべき表現である。映画も生まれてまだ一〇〇年ちょっとしか経っていない新しいメディアであり表現形式であり、最初は単なる見世物であり神経を刺激するだけのものと考えられてきたが、二〇世紀における映画・映像が、単なる娯楽に留まらず、人々

    【SF史に残る(べき)ゲームたち】第0回 ゲームを正当に評価するために
  • 「巨影都市」が偶然実現した、本当は怖い特撮映画のビデオゲーム化

    「巨影都市」がかなり乱雑な出来であるにも関わらず、強く心を打つのはある種の特撮映画だけが持つ真実味をビデオゲームで体験できるからだ。それは昨年大きな評判を呼んだ「シン・ゴジラ」が見せた特撮映画の真実味に、おそらく意図しない形で近いものになっている。意外なことに、近いジャンルのタイトルを考えても「ワンダと巨像」「地球防衛軍」のように「巨影都市」よりはるかに完成度の高いタイトルは数多く思い浮かぶものの、似た体験をできるゲームはすぐには思い浮かばない。唯一無二の体験になっていると言っていい。 タイトル発表当初は「絶体絶命都市」シリーズとウルトラマンやゴジラといった特撮キャラクターとのコラボという、「真・三国無双」のフォーマットに版権ものを乗せる「ガンダム無双」のような安易さを感じていた。ところがウルトラマンやエヴァンゲリオンが「絶体絶命都市」のフォーマットと交わることでまさかの爆発力が生まれ、思

    「巨影都市」が偶然実現した、本当は怖い特撮映画のビデオゲーム化
  • 『メッセージ』という円環(の隙間)

    5月19日から全国の劇場で公開しているSF映画『メッセージ』。SF作家テッド・チャンの「あなたの人生の物語」を原作としながら、『ブレードランナー』の続編に抜擢されたドゥニ・ヴィルヌーヴを監督にしたSFファンなら必見の映画。その作品の系譜をSF作家の新城カズマが「ファーストコンタクト」を切り口に入れ子状のテキストで読み解いていく。その断片の深層にあるものは何か、実際に読んで確認してほしい。 ※赤いリンクをクリックすることでテキストが展開されていきます。 歴史上、人類以外の知的存在とのファースト・コンタクトはこれまで三度あったし、だから今回は四度目だ……と断言する前に、まずは少々説明を。 今回、とはもちろん映画『メッセージ』(監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ、脚エリック・ハイセラー、合衆国公開2016年)のことで、それ以前の三つは1977年11月、1945年11月、そして1492年10月に発生してい

    『メッセージ』という円環(の隙間)
  • 【電遊奇譚:其五】彼らの電子的な青春

    私が一年間だけ通っていた高等学校には、出席番号順に教室の前に立ち、ひとつ前の日付にあった出来事を朝礼で話すというしきたりがあった。それが担任の考案によるものなのか、それとも学校全体のものなのかは知らない。とにかく私たちは、それぞれのやりかたでこのしきたりに従い、登壇してなにかしらの発表をすることになっていた。私自身もその役割を負ったことがあるはずだが、どんなことを話したかは一度を除いて覚えていない。おそらく、いまでは音信不通になったほかの同窓たちもおなじような状態だろう。私たちは、構造的に言って、まとめて逮捕されて実刑を受け、刑務所の世話になっているテロリストの集団のようなものだった。罪状は、義務教育をまじめにやらなかったことである。 「お、おれは……特に何も無かったです、ハイ。」そんな声が聞こえてきた。私は机にひじをつき、フェンスでしっかりと防護された窓のむこうに広がっている青空を眺めて

    【電遊奇譚:其五】彼らの電子的な青春
  • 【電遊奇譚:其二】人知れず去っていった天才シューティングゲーマー

    Yについて話す。 はじめて会ったときのYは私の中学校の同級で、いつもクラスメイトに殴られたり蹴られたりしていたせいか、いつの日からか学校に来なくなった。私は友達がひとり減って残念だったが、とくに何もしなかった。勝ったところで楽しみが得られない戦いからは逃げるのがいちばんいいので、Yの撤退はもっともなことだったし、そもそもYの家がどこにあるか私は知らなかった。先生に聞いて会いに行くというのも、なにか彼に同情しているような感じがして嫌だった。 Yは義務教育の成績がいいわけでもなかったし、醜男で会話もうまくなかったが、二人きりで落ち着いて話ができるときには静かにアニメやゲームの話をした。彼は言葉をよく選んで話し、理路整然としたしゃべりかたをした。「意味がある」という理由でガンダムシリーズを敬愛し、「意味がない」という理由でいわゆる「日常系アニメ」を嫌悪していた。好きなライトノベルは秋山瑞人の「イ

    【電遊奇譚:其二】人知れず去っていった天才シューティングゲーマー
  • 【電遊奇譚:其一】 身を滅ぼしてまでゲームに打ち込む理由

    死ぬほど不幸になってもいいではないか。 それも人間の可能性のひとつである。 ――ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン『反哲学的断章――文化と価値』 人生をだめにするほどビデオゲームに没頭した経験をもつ人は多くいるだろう。そこからどのようにして生き延びたかが問題だ いまから10年前の2006年のこと、私はもっとたくさんビデオゲームを遊ぶために高等学校をドロップアウトした。これはいい。私はさらに――意識してそうしたわけではないが――それまでにあった交友関係をすべて遮断した。これもまあいい。問題は、それから色々なところでアルバイトとして働き、その店のじゃまをして給料をもらっていたことだ。当時の私がいったい何を考えていたのかは定かではない。確かなのは、ビデオゲームがやりたくて仕方がなかったことだけだ。 そうまでしてやりたかったゲームとは、「Wolfenstein:Enemy Territory」であ

    【電遊奇譚:其一】 身を滅ぼしてまでゲームに打ち込む理由
  • 【電遊奇譚:其十一】アップライト筐体と二百円玉

    すべての駄菓子屋にはなんらかのゲームが置いてある。これは厳然たる事実だ。 その駄菓子屋は店外のひさしの下に筐体がいくつか並んでいて、私はそこでよく「メタルスラッグ」をプレイした。筐体の並びのいちばん端に、ジュースの自動販売機があった。私はそこで売られているもののうちのひとつが大好きで、よく飲んでいた。あるとき、いつものように「メタルスラッグ」で遊んでいると、大人があらわれて自動販売機に鍵を差し込み、冷蔵庫を開けるみたいにして前面を開けた。私はとても驚いた。当時は自動販売機のことを、際限なくジュースがわき出てくる泉のようなものだと思っていたのだ。 私は「メタルスラッグ」を遊ぶのも忘れて、その大人が自動販売機の内蔵をいじるところを眺めていた。彼が運んできた台車の上には、補充のための大量のペットボトルが積まれていた。それは、一生かかっても飲みきれないくらいの量のように見えた。その大人は補充を終え

    【電遊奇譚:其十一】アップライト筐体と二百円玉
  • 【電遊奇譚:其十二】おれにはゲーマーの歌声が聞こえる

    おれにはアメリカの歌声が聞こえる、いろいろな賛歌がおれには聞こえる、 〔…〕誰もが自分だけの歌を歌っている、 昼は昼の歌を歌う――夜は屈強で気のいい若者たちが大声で美しい歌を力強く歌う。 ――ウォルト・ホイットマン『おれにはアメリカの歌声が聞こえる』飯野友幸訳、引用者の責任で一部中略 当時の私には、戦場に立つ相手がなにを考えているのか手に取るようにわかった。マップに存在するすべてのテクスチャの角度と有効な射線の種類も知っていたし、刻々と変化していく味方全員の残りのヒットポイントもすべて把握していた。味方がいまこの瞬間になにができるか、敵がどんな攻撃をしかけてくるか、そして何よりも、自分がつぎに取るべき最良の行動はどんなものか、完全に理解していた。集弾率とアキュラシー、与えたダメージと受けたダメージ、循環しつつ周期するリスポンタイムといったデータを越えて、まるで目に見えないパズルを組み立てて

    【電遊奇譚:其十二】おれにはゲーマーの歌声が聞こえる
  • 【電遊奇譚:其十三】ロンドンのルイージマンション

    私の母は私がゲームをプレイしているときに死んだ。部屋でコンピュータに向かっているとき、階下がやけにざわついているものだから、様子を見に降りた。すると私の母は、私たち家族が20年間事をともにした台所机のそばに石のように転がっており、そのまわりに数名の水色の服を着た男たちがいて、さかんに彼女の身体に「蘇生」を行っていた。そのうち担架が搬入され、彼女の身体が運ばれていった。しばらくして電話が掛かってきた。救急車に同乗した父だった。「お母さんは死んだ」と彼は言った。「そうか」と私は答えた。それから私はいったん家の外に出て、なぜか大学に電話をかけた。「しばらくのあいだ顔を出せないと思います」私は最も懇意にしていた事務員の女性にそう告げた。 どうして、と彼女は言った。 「母が死にました」と私は答えた。 どうして、と彼女は言った。 「頸を吊ったんです」と私は答えた。 彼女は言った。「いまは自分のことだ

    【電遊奇譚:其十三】ロンドンのルイージマンション
  • 【電遊奇譚:其三】銀河系の片隅の戦争と友情

    僕は、敵に背を向けることなく胸をはって邁進し、暗雲に 閉ざされても晴れることを疑わず、正義が破れても悪が 勝つとは夢想だにせず、斃れるのは再起するため、敗れるのは よりよき戦いを戦うため、眠るのは目覚めるため、と 固く信じていた男だ。 ――ロバート・ブラウニング「アソランドウのエピログ」平井正穂訳(一部抜粋) 眠い目をこすりながら「The Conference Room」に入室したとき、すでに議論は大詰めを迎えていた。私がヘッドフォンをつけて着席すると、さいきん伸び始めたばかりの若いフリートコマンダーがこう叫んだ。「じゃあ、おれたちはもう駄目ってことかよ?」 私は会議室に並んだ名前のアイコンを確認した。会長は今日も不在で、副会長のJamesは口を開かず、指揮官長のRobが若いフリートコマンダーをなだめていた。私があいさつをすると、みんなそれぞれに答えてくれ、兵站部長のMarrが会議の経緯を

    【電遊奇譚:其三】銀河系の片隅の戦争と友情
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