11年間で454人。これは全国で2004年1月~15年3月に、「心中」によって亡くなった子どもの数だ(親の未遂も含む)。同期間に虐待で死亡した子どもは1055人に上り、43%を占めている。心中と呼ばれているが、子どもは自分の意思で死を選んでいるわけではなく、親が手にかけた最悪の身体的虐待だ。11月は児童虐待防止推進月間。親子の無理心中に焦点を当て、犠牲を出さない手だてを考える。 ▼加害動機に特徴 2014年11月26日午前6時すぎ、福岡市博多区のマンションで、母親(28)が生後9カ月の長女と飛び降り、2人とも死亡した。警察は母が無理心中を図ったとして、殺人容疑で被疑者死亡のまま書類送検。今年6月に公表された、福岡市こども・子育て審議会権利擁護等専門部会の検証報告では「母親の精神状態の悪化が心中の要因の一つ」とし、母が精神科医療機関を受診していたことも明らかにした。 心中による子どもの虐待死
九州7県の2016年度県立高校入試で、発達障害(未受診を含む)の受験生に時間延長などの特別措置が取られたのは、全志願者約8万5千人のうち十数件(約0・02%)にとどまることが西日本新聞の取材で分かった。発達障害の可能性がある中学3年生は3%程度の割合でいるとされ、ほとんどが申請せずに受験したとみられる。入試要項に配慮規定を明記していない県がある一方、受験に不利に働くと懸念して申請しない保護者も多いようだ。 九州各県の教育委員会によると、16年度入試での措置数は、福岡5、佐賀4、長崎1の計10件。他の4県は申請がごく少数で「本人の特定につながる」などとして非公表だった。14、15年度も同様の傾向だった。 各県教委によると、出身中学を通じて申請があれば、時間延長や別室受験、解答用紙の拡大、漢字に読み仮名を振るなど、必要な措置を検討するという。このうち、福岡、佐賀、大分、鹿児島各県は、入試要
福岡県豊前市で昨年1月、小学5年の女児=当時(10)=を連れ去り殺害したとして殺人罪などに問われ、福岡地裁小倉支部で3日に無期懲役判決(求刑死刑)を受けた内間利幸被告(47)は、過去にも小学生女児を狙ったわいせつ事件を起こし、再犯を防ぐためのプログラムを刑務所で半年間受けていた。悲劇が繰り返されたことから、プログラムの実効性に対する疑問の声が上がっており、薬物治療など踏み込んだ対策の必要性を訴える声もある。 刑務所に性犯罪の再犯防止プログラムが導入されたのは2006年。性犯罪の前科がある男が04年に奈良県で起こした女児誘拐殺人事件がきっかけだった。プログラムでは、犯行に至る行動と思考パターンを省みさせる「認知行動療法」を施し、性衝動をコントロールできるようにするのが狙い。だが、小学生女児などを狙った性犯罪で過去に約12年間服役していた内間被告は公判で「(性衝動の制御方法は)覚えていない」
「刑務所に戻りたかった」と、JR下関駅(山口県下関市)に放火した男性(84)は8月に刑期を終え、福岡県内の施設で暮らしている。司法と福祉が連携して支えることで「もう刑務所には戻りたくない。好きな人に囲まれて最期を迎えたい」と笑顔も見せる。社会に居場所がないために罪を重ねる「累犯障害者・高齢者」の問題を浮き彫りにした事件から10年、男性の笑顔は罪と更生の在り方を問うている。 男性は74歳だった2006年1月7日未明、下関駅に放火して焼失させた。被害額は5億円以上で、懲役10年の判決を受けた。判決は「軽度知的障害で、かつ高齢でありながら、刑務所を出所後、格別の支援を受けることもなかった」と指摘した。 当時、男性は放火の前科が10件あり、22歳以降の40年以上を刑務所で過ごしていた。過去の裁判で6回も知的障害などを認められたが、一度も障害福祉サービスにはつながらなかった。 下関駅の事件は、
福岡県警早良署によると、8日午後、福岡市早良区内にある中学校で、男子中学生(14)が、男性教員(53)の足を蹴ったり、首を締めるなどの暴行を加えたため、別の教員が生徒を暴行容疑の現行犯で常人逮捕した。刑事訴訟法では、現行犯の場合は、警察職員ではない一般人でも、逮捕状なしで逮捕できるとされる。 =2016/07/08 西日本新聞=
望まぬ妊娠新生児を里親へ 赤ちゃん縁組 福岡県が手引書 児相に配布 虐待、遺棄防止期待 2016/6/12 9:17 さまざまな事情で実の親が育てられない子どもの新たな親子関係を自然に築こうと、福岡県は戸籍上も実子となる特別養子縁組を前提に、新生児を生まれた直後から里親に委託する「赤ちゃん縁組」(新生児里親委託)のマニュアルを策定、県内の児童相談所に配布した。若年での妊娠など望まない出産をする女性を支援し新生児遺棄や虐待を防ぐ効果も期待され、県内の産科医療機関とも連携して取り組みを広げる。赤ちゃん縁組は愛知県が先進県として知られるが、都道府県がマニュアルを作って率先するのは全国でも珍しいという。 赤ちゃん縁組は愛知県産婦人科医会が1976年に始めた赤ちゃんの養子縁組あっせんを土台に、同県の児相が82年から取り組んでいる。「愛知方式」とも呼ばれ、出産前から相談を受け、特別養子縁組を前提に里親
経済的に困窮する小中学生の家庭に学用品費などを助成する就学援助制度で、生活が苦しい「準要保護世帯」の認定条件となる所得基準に、九州の市町村間で最大3倍超の格差があることが、西日本新聞とNHKが九州・沖縄の全市町村・組合の教育委員会に実施した調査で分かった。4人家族の課税所得が383万円程度で受給できる町がある一方、120万円以下でなければ受給できない町もある。「学ぶ機会の平等」を保障するはずの制度に、大きな地域格差がある実態が初めて明らかになった。 九州・沖縄の全276教委にアンケート 就学援助の対象には、国の基準に沿って生活保護を受ける「要保護世帯」と、市町村が独自に認定基準や補助費目を定める「準要保護世帯」がある。準要保護世帯への就学援助については、国と地方の税財源を見直す「三位一体の改革」で国庫補助が2005年度に廃止され、市町村に財源と権限が移譲された。 制度の運用実態を探るため本
発達障害者 つらい避難所 物音、不規則な生活にパニック 行き場失い車中泊 2016/4/30 11:30 最大で18万人余りが避難した熊本地震。なお多くの被災者が避難生活を強いられる中、物音や予定外の出来事などに過敏に反応する特性のある発達障害を抱える人たちが行き場を失っている。多くが避難所の環境に耐えられず、車中泊や知人を頼って移住を余儀なくされている。 高機能自閉症の女性(27)は16日未明、熊本市の自宅で本震に見舞われた。散乱する落下物の中から布団と毛布だけを持ち出し、避難所へ身を寄せた。 発達障害とは自閉症や注意欠如多動症、学習障害などのこと。うち、自閉症を含む「自閉スペクトラム(連続体)症」の特徴としては社会性の障害、コミュニケーションの障害(言葉の遅れ)、想像力の障害とそれに基づくこだわり行動がある。重い知的障害を伴う人から知的能力の高い人まで幅広く、聴覚や視覚、嗅覚、味覚など
前日夕、入学式準備が整った体育館には、十数人の子どもと親が集まっていた。親からの要望もあり、希望者を募って始めた「入学式リハーサル」。配慮が求められる子どもを中心に、基本動作を確認しておくためだ。初めて見る光景だった。 「この学校ではありませんが、来賓あいさつの途中、子どもがドキッとした発言をしたり、動き回ったりしたことが、何度かありましたから」と、ある教諭。練習中、体育館を駆け回る子どももいた。 いよいよ入学式本番。4クラス、約120人の新1年生は滞りなく、教室から体育館に入場。「1人でできるようになろう」「友達と仲良く」。校長の話を静かに聞いていた。 ただ、各クラス後方には担任とは別に、教諭2人が控え、落ち着かない子どもには、こまめに駆け寄り、背中をさすり、声掛け。入学式はそんな準備と支援があって、何とか持ちこたえているのが実情だった。 ◇ ◇ 本格的な「学級開き」は翌日から始まっ
「なぜ、私なんですか?」 九州北部にある小学校。校長が交代する前日の3月31日、イシイ教諭(50代)=仮名=は前校長から校長室に呼ばれ、「新1年生の学級担任と学年主任をお願いします」と告げられた。思わず突いて出たのが、その言葉だった。 イシイは前年度、特別支援学級の担任で、課題を抱える子どもたちをどう支援するか、学校全体のコーディネーター(指導監督)も務めていた。「小1プロブレム」をにらみ、その手腕と実績を買い、前校長は新校長とも話し合い、イシイに白羽の矢を立てた。 イシイは定年を控えたベテラン教諭。だが、振り返って見ても、1年担任の経験は2年間しかない。「普通は、1年担任の経験豊富な先生が、学年主任になりますからね」 それは本人はもちろん、同僚にとっても「サプライズ人事」。小1プロブレムを念頭に置いた、異例の戦略的登用だった。 「あなたにお願いしたいんです」。前校長の話に、イシイは「分か
入学の春、大なり小なり、どこの小学校も「小1プロブレム」に直面する。この問題に先生たちはどう向き合っているのだろう。九州北部にある小学校の取り組みを追った。 「今度の新1年生、ちょっと大変かもしれない」。教頭のシミズ(50代)=仮名=は危機感を募らせていた。 この小学校では毎春、新1年生の対応に追われる。母親と登校してきても、母親と別れられず、校舎に入れない。教室でも授業中、誰かが歩き回ったり、私語が絶えず、落ち着かない。支援の指導員も加わり、担任も指導に知恵を絞るが…。 学校には3学期に入ると、校区の幼稚園や保育園、行政の福祉担当者から、新1年生の情報が上がってくる。配慮が求められる子どもについては、「個別の支援計画」と記された用紙に留意事項が書かれている。「例年は4、5枚なんですが、今年は10枚以上もあって」。それがシミズの一層の危機感につながっていた。 2月にあった「入学説明会」。入
春3月。わが子の進学を喜ぶ一方で、公教育に予想以上の私費負担が必要なことを知って戸惑う保護者が少なくない。福岡県春日市の40代女性もその一人。2月初め、長女が来月入学する市立中の説明会に参加し、制服や通学かばんなど総額約7万~9万円を現金払いしなければならないと知らされた。共働きで2人の子を持ち、児童手当を受給する「標準的世帯」のこの女性にとっても重い出費。生活困窮世帯であれば就学援助を受けられるが、新入学用品費の支給額は約2万3千円で到底足りない。女性が本紙子ども問題取材班に寄せた疑問を、市教育委員会に投げ掛けた。 ある新入生母の訴え 冬服ブレザーとスカート2万9592円、通学かばん8500円、ジャージー上下7800円…。女性が入学説明会でもらった購入品一覧表の総額は必須品だけで約7万円、補助バッグなど希望者が買う品を含めると9万円近かった。「義務教育でも中学入学時にお金がかかるとは聞い
不登校寄り添い15年、佐賀で「居場所」つくり 西鉄バスジャック被害者・山口さん 2016年02月11日 23時00分 発達障害 設立15年を迎えた「ほっとケーキ」代表の山口由美子さん。「バスジャック事件に遭って子どもたちの抱える問題に気付かされた」 写真を見る 子どもの不登校や引きこもりに悩む親を支え、子どもに居場所を提供してきた佐賀市の市民団体「ほっとケーキ」が設立から15年を迎えた。代表は2000年に起きた西鉄バスジャック事件で17歳少年から切りつけられた山口由美子さん(66)。少年が不登校だったと知り突き動かされるように始めた活動で、子どもたちから教わったのは「大人はただ一緒にいて、気持ちを受け止めるだけでいいということだった」と話す。 同年5月3日、5人が死傷した事件で、山口さんは顔や頭、手など十数カ所を切りつけられた。少年が中学時代、いじめをきっかけに不登校になり、社会への憎
子どもの貧困対策として、福岡県は2016年度、当事者や周囲の相談に一元的に応じる「子ども支援オフィス」(仮称)を県内4地区に創設し、専門のコーディネーターを配置する方針を固めた。サポートが必要な子どもごとに支援計画をつくり、児童相談所、民生・児童委員などが対応を協議する連絡会議を定期的に開く。内閣府や厚生労働省によると、貧困対策に特化した都道府県の事業としては全国初という。 県の計画では、オフィスは貧困対策のワンストップ相談窓口として、福岡、北九州、筑豊、筑後の各地区に設置。コーディネーターは教育と福祉の双方に知識や経験が豊富な人材から起用する。18歳未満を対象に、窓口や家庭訪問などでの当事者や関係者との相談内容を踏まえ、経済面や学力面など個々の事情に応じて支援計画を策定。行政サービスや子ども食堂などの民間事業に結びつけ、子どもや家庭をサポートする。 連絡会議は、保育所や幼稚園、学校、行政
頭の中の言葉 解読 障害者と意思疎通、ロボット操作も 九工大・山崎教授ら 2016年01月04日 02時00分 「頭の中の言葉」を解読する仕組みを解説する九州工業大情報工学部の山崎敏正教授 写真を見る 頭で思い浮かべた言葉の一部を脳波の変化から解読することに、九州工業大情報工学部(福岡県飯塚市)の山崎敏正教授(58)の研究グループが成功した。グー、チョキ、パーなど選択肢を絞った条件の下、それぞれの言葉が発声時と無発声時でほぼ同じ波形を示すと突き止めた。五十音の一部でも識別に成功しており、今後全ての音の波形を分析できれば、単語や文章の解読も可能になる。 研究が進めば、障害で言葉を話せない人との意思疎通や、音が伝わらない宇宙空間や水中での通信手段への応用が期待できる。山崎教授は「動けと念じればロボットを操作できるSFのような応用も可能となる」としている。 山崎教授が着目したのは、言語をつか
西日本に住んでいた40代のタグチ=仮名=は数年前、アパートの一室に無施錠の玄関から忍び込み、寝ていた若い女性に馬乗りになった。「騒いだら殺す」。女性が抵抗するそぶりを見せると顔面を殴りつけた。凶器を近づけると、女性の体から力が抜けるのが分かった。「これで、この女は思いのまま」。女性のTシャツを顔にかぶせ、自分の顔を見られないようにした。写真も撮った。 「耐え難い苦痛を与えているときこそが、私にとって至福のときだった」 タグチには結婚歴があり、子どももいる。堅実な仕事ぶりは、地元の新聞にも取り上げられた。その一方で、同様の卑劣な事件を何件も起こしていた。乱暴し、「記念品」として下着や同窓会名簿などを奪って帰ったこともある。複数の女性への事件でタグチは逮捕され、強盗強姦罪などで懲役20年以上の刑を受けた。今も服役している。 ■ ■ タグチは、「ムラムラして」突発的に犯行に走ったわけではな
障害者虐待、職員らが7件 14年度、福岡県内福祉施設 2015年12月18日 23時00分 福岡県は14日、県内の福祉施設の職員らによる障害者への虐待件数が、2014年度は前年度比3件増の7件に上ったと発表した。県は「重く受け止める。施設全体の人権意識を高め、虐待に至る前に手を打ちたい」としている。 県によると、7件の内訳は大川市で50代男性職員が知的障害のある20代女性の胸を触った▽大牟田市で居宅介護の男性従事者が、身体障害のある50代女性から預貯金140万円を無断で引き出した▽久留米市で3人の生活支援員が精神障害のある60代男性に対し、関節技をかけたり、無理やり食事をさせたりした-など。 虐待があった施設の職員などが県や市町村の相談窓口に情報を寄せ、県や市が立ち入り調査をして確認した。いずれも障害者虐待防止法に基づき、施設側を指導し、改善計画を提出させているという。 また、家族な
教育と福祉をつなぐ専門職スクールソーシャルワーカー(SSW)の需要が高まっているのは、貧困や不登校、保護者の精神疾患など、教員だけでは対応が難しい問題が学校現場で増えているためだ。 福岡県スクールソーシャルワーカー協会が対応実績をまとめて昨年刊行した「SSW実践事例集」には、多岐にわたる支援事例が紹介されている。 ネグレクト(育児放棄)で頭にシラミが大量発生し、同じ洋服でしか登校できないため、学校に行くのを渋る小学生▽貧困家庭で将来の目標が持てず、不登校の中学生▽誰とも接触を拒むひきこもりの中学生-などだ。 SSWは、授業中の校内巡回、気になる子どもの家庭訪問、不登校の子どもの学習支援などで、児童生徒に寄り添う。保護者に対しても、生活保護の受給申請援助、ハローワークと連携した就労支援、保健師や社会福祉協議会につないで医療機関受診や日常生活自立支援事業の利用を後押しするなど、さまざまな福祉サ
九州の子ども 2割が「貧困」 約42万人、深刻さ浮き彫り 13‐14年度 本紙が試算 2015年11月04日00時04分 (更新 11月04日 00時31分) 写真を見る 就学援助を受けるなど、経済的に貧困状態にあると推測される子ども(18歳未満)の数が、九州7県で約42万人に上ることが、2013~14年度の統計データを基にした西日本新聞の試算で明らかになった。全体の19・4%で、ほぼ5人に1人となる。同じ手法で試算した全国平均は15・6%で、九州の深刻さが浮き彫りになった。県別の貧困率は福岡が23・0%と最も高く、鹿児島21・3%、長崎18・5%と続いた。 子どもの貧困率については、厚生労働省が経済協力開発機構(OECD)の基準に基づき公表。平均的な可処分所得(いわゆる手取り年収)の半分(2012年、4人世帯で244万円)を下回る世帯を「相対的貧困層」とし、貧困層に含まれる子の割合が12
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