「竹田米吉 『職人』」 以前に買った本の中に、「竹田米吉 『職人』 中公文庫 1991年」がある。 著者の竹田米吉は、明治中期に大工の息子として生を受け、後に苦学して早稲田大学建築科の第一期生となった人物だ。 つまり、職人としての大工から身を起こして、建築をアカデミックに学んだという事になる。建築業界において、職人修行と体系的な建築学の双方を学んだという経歴の持ち主が多いか少ないかは不勉強にして知らないが、少なくとも江戸時代より続く職人の気風というものを備えつつ建築家として立った人物は、そう居ないのではないかと思う。少なくとも、江戸時代の職人である父親や親戚から、多くの薫陶を受けたことは、『職人』の中で語られている。 さて、この本の中で語られている大工の心得のうち、心に引っ掛かるものを自らの身と引き比べて行きたい。 仕事と良心 昔の職人とは、今日の技能者の謂である。長い修業のたまものとして