ネットで早速、志村立美装丁、林不忘『丹下左膳』第4巻(寶雲舎、昭和24年)を購入。主人公がいないこのふやけた印象の表紙は何なんだ。読者は丹下左膳の登場を期待していたのではないのか? 丹下左膳の挿絵といえば、小田富彌(明治28年〜平成2年岡山生)を思い浮かべる人が多いと思いますが、今回購入したのは戦後発売された志村立美(1907〜1980年)が装丁・挿絵を担当したものだ。 丹下左膳は、1927年(昭和2年)10月から翌3年5月に東京日日新聞に連載された「新版大岡政談・鈴川源十郎の巻」だ。当初は関の孫六の名刀、乾雲丸・坤竜丸という大小一対の刀を巡る争奪戦に脇役的に加わった一登場人物に過ぎなかった。主人公は当然鈴川源十郎であり、もう一人の主役も諏訪栄三郎で、左膳は、道徳や秩序とは無縁の無頼漢で、濡れ燕という妖刀を片手に殺戮を繰り広げる殺人鬼・ブラック・ヒーローだ。 黒襟(くろえり)をかけ、髑髏(