2022年のニューヨークを舞台にした『ソイレントグリーン』という古いSF映画がある。1973年の制作だから当時からおよそ50年後の未来を描いている。2022年のニューヨークは、人口爆発と環境汚染が深刻な食糧危機を招いており、人々はもはや昔のような自然食品は入手できず、ソイレント社が配給する緑色のビスケットのような合成食品=“ソイレントグリーン”でかろうじて命をつないでいた…… ●公営安楽死施設「ホーム」 実は本稿は映画の紹介が目的ではないので、急いで本題に入るが、この映画には「ホーム」と呼ばれる公営の安楽死施設が登場する。人口増加による食料難を解消するため後期高齢者に安楽死を促すための公営施設である。 安楽死を希望して施設に赴いた老人は、真新しいガウンに着替え、介護士にストレッチャーを押されて広い部屋に通される。部屋は間接照明の柔らかい光に満たされており、明るく清潔だ。壁全体が巨大なスクリ