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  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. 「おくりびと」の広末涼子は適役だった。

    産経ニュース(寺河内美奈撮影) 昨夜の日アカデミー賞の授賞式をテレビで見ていて広末涼子がちょっとかわいそうになった。会場にいた「おくりびと」の出演者のなかで唯一彼女だけが受賞できなかった孤独に加えて、受賞者たちと一緒に華やかなステージに登って笑顔で対応しなければいけなかったのだから。彼女の心中を思うと見ているこちらまで辛くなった。 ウェブの映画評でも広末涼子の評価だけが低い。ボロクソなコメントも少なくない。しかしそれは多分に誤解だ。 観客が映画の納棺師や業界に感情移入すればするほど、広末演じる納棺師のに違和感を覚えたり、浮いた存在に見えてくるのは演出上の狙いだ。広末はこの映画の「悪役」であり、「(ちょっと軽薄な)世間の常識」を象徴する役所だったのだ。確かにもっと地味で芸達者な女優(小林聡美?)を起用する選択肢もあったと思うが、広末のような若くきれいで、ちょっと軽くおさない印象の俳優が起

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    FeZn 2009/02/22
  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. ブックデザイン・フォント考

    『機密指定解除』――歴史を変えた極秘文書 トーマス・B・アレン著 佐藤正和訳 日経ナショナルジオグラフィック社 装幀:山吉晴 タイトルがヒラギノ明朝W6、サブタイトルは、漢字:ヒラギノW6+かな:游築五号仮名の合成フォントである。 広くなっている始筆部を「角立て」(かどたて)と呼ぶ(画像の赤丸で囲った部分)。写植機の光学性能が低かった昔、先端が細く印字されてしまうのを防ぐためこうした処置が必要とされたらしい。オールドタイプ書体に多くみられ、ゴシック書体にもほどこされる。これはデジタル・フォントだから、もはや「角立て」は必要ないのだがそのまま残している。 ヒラギノは完成度の高いフォントとして評価が高いが、個人的にはこの「角立て」が気になる。「角立て」自体が嫌なわけではないが、ヒラギノの場合は、懐を広くとったモダンな文字設計と、この「角立て」がうまくマッチしていないように感じる。それに、ヒラ

  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. いかに死すべきかがいかに生きるべきかを決める

    2022年のニューヨークを舞台にした『ソイレントグリーン』という古いSF映画がある。1973年の制作だから当時からおよそ50年後の未来を描いている。2022年のニューヨークは、人口爆発と環境汚染が深刻な糧危機を招いており、人々はもはや昔のような自然品は入手できず、ソイレント社が配給する緑色のビスケットのような合成品=“ソイレントグリーン”でかろうじて命をつないでいた…… ●公営安楽死施設「ホーム」 実は稿は映画の紹介が目的ではないので、急いで題に入るが、この映画には「ホーム」と呼ばれる公営の安楽死施設が登場する。人口増加による料難を解消するため後期高齢者に安楽死を促すための公営施設である。 安楽死を希望して施設に赴いた老人は、真新しいガウンに着替え、介護士にストレッチャーを押されて広い部屋に通される。部屋は間接照明の柔らかい光に満たされており、明るく清潔だ。壁全体が巨大なスクリ

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    FeZn 2008/11/28
  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. 「史上最強の人生戦略マニュアル」に見るフォント

    発売と同時に増刷、あっという間に10万部を突破。 近所の書店の平台をこのの他にも勝間氏の著書が何冊も占めていて、まるで彼女の特集コーナー状態になっている。恐るべし勝間ブランド! アメリカでベストセラーになったの新訳だし、訳者が今をときめく勝間和代さんという “売り” があるので、イメージを使わずテキストだけでデザインすることにした。タイトル文字は、ビジネス書としては異例と思えるほど細いウェイトの明朝体を使い訳者が女性であることを暗示した。 ●写植の味を再現したアナログチックなフォント「S明朝体」タイトルは一般になじみの薄いオーソドックスなフォントだが、これはニィスから発売されている「S明朝体」という書体(作者:関征春氏)で、写植の味を強く残したデジタルフォントだ。ひらがなには「ハード」と「ソフト」の2タイプがあり、これは「ソフト」を使用している。 帯の「“このLIFE Strategi

  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. 講談社現代新書2

    講談社現代新書の「背」がすべて白地に変更された。それに伴い背のタイトル文字も黒に統一された。全部がそうなったわけではなく、新しく刊行されるものから順次切り替えて行く方針 のようだ。 一冊一冊をすべて違った色にして棚に並べたら、背の色が(きれいな)グラデーションになる、というのが装丁を担当した中島英樹氏のアイデアだった。しかし、背の色が削除されたことで中島氏のそうしたもくろみは消滅したことになる。 そもそも、中島氏が意図した色のグラデーションは成功していたとは言えず、むしろ、無原則に混ざりあった不気味な色のかたまりになっていた。このままではダメだとの認識が編集部にもあって今回の手直しを決断したと思われる。 無原則な配色の弊害を被っていたのが背のタイトル文字だった。これまで、背景の色が濃い場合は白抜き文字、明るい場合は黒文字になっていた。この色の混在が書店の棚でタイトルを読みにくしていた。だか

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    FeZn 2008/10/29
     2007年のエントリ
  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. 装丁の書き文字 Book Design #003

    昔はけっこう書き文字でタイトルを作ったものだけど、最近はさっぱりだ。 昔とはDTP以前のことで、当時はまだ写植を紙の版下台紙に貼り付けて入校していた。若い編集者に「版下ってあの紙の、ですよね?」と言われてショックを受けたのももうかなり前のことである。 最近三角定規が生産中止になったと聞いて感慨にふけったりしているが、ちっとも驚かない若い人もいることだろう。烏口(からすぐち)まで持ち出すつもりはないが、製図板、T定規、三角定規、雲形定規、ディバイダー、ロットリング、ペーパーセメント――などを知らないデジタル世代がすでにいるかもしれない。遠くまで来てしまったとの感慨が無くもない。 鉛筆で下書きをしてだんだんと線をきめてゆくアナログの感覚が好きだ。これまでの書き文字はそうして作ってきた。墨入れをして最後に消しゴムで鉛筆の下書き線を消す。消しゴムのカスを払い、フッー…完成! といったメリハリがアナ

  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. 帯とカバーの素敵な関係? Book Design #002

    近頃では帯がスペースの半分以上を占めているをしばしば見かける。 帯にもカバーと同じ4色を使い、カバーと同じイラストや写真を同じ位置に繰り返していたりする。これではもはや帯と呼べないのではないか。いっそのこと帯の要素をカバーに取り込んでも不都合ないのではないか――。 ということで、帯とカバーの関係を自作を例にとりながら掘り下げてみることにする。 『殺人評論』は1992年頃の私の初期の仕事で、出版社の青弓社は帯を作らず、必要なテキストはすべてカバーに入れるのが社の方針だった。 もしこのデザインで帯をつけると、タイトル文字の「人」、「論」を帯で繰り返すことになるだろう。そうまでして帯が必要だろうか。当時の記憶では、帯がないせいで、四六判のサイズを大きく使えてよかったとの印象が強かった。帯の無いほうがダイナミックなデザインができると思う。 『日米映画戦』もやはり青弓社ので、帯のテキスト要素をカ

  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. “ゆるいデザイン”事情 Book Design #001

    早川書房 2008年7月刊 ダリアン・リーダー&デイヴィッド・コーフィールド 著 小野木明恵 訳 イラスト:大塚砂織 四六判 並製 「ゆるいデザイン」の定義を、「文字やイラストの位置が2~3ミリずれても基デザインがゆるがないような骨太のデザイン」と一応定めてみる。 上の装丁はそうした「ゆるいデザイン」を心がけてデザインしたものだが、なかなか思うようにはいかなかった。 イン・デザインを使ってレイアウトしているが、インデザインのカーソル移動はデフォルトで1歯だから1/4ミリが最小移動である。2~3ミリのずれを気にしないどころか、結局この1/4ミリのカーソルを何度も移動させて最終的な位置決めをするありさまだった。大塚砂織さんの洒脱なイラストに助けられて、なんとかゆるい感じは出せたと思うが、どうも「ゆるいデザイン」が苦手だ。 タイトルは既成のフォントだが、一文字づつ大きさや角度を変えて変化をつけ

  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. デジタル・ポスター登場

    JR東日は、東京駅八重洲南口コンコースに、65インチの縦型液晶ディスプレイを用いた「デジタルポスター」をこの7月から9月までテスト設置する。無線技術を用いた広告システムで、時間帯や曜日別のコンテンツ表示が可能だという。 昔、B倍全のポスターと言えばグラフィックデザイナーのあこがれの媒体だった。美術展の応募要項はたいていポスターを前提にしていた。絵の具も「ポスターカラー」と呼ばれていたぐらいだ。 アナログ時代のポスター制作はデザイナーにとってその大きなサイズが魅力だったが、DTP制作では、サイズは単なるデータだから事実上見た目のサイズは関係なくなる。なんだか味気ない。デザインも美術も「原寸サイズ」で見ることが大事だが、DTPになってモニターで可変サイズで見ることに慣れてしまった。このことはデザイナーの視覚に重大な問題を引き起こしていると思うがあまり指摘されることがない。 今回は静止画だそう

  • 老水夫のごとく―――グラフィック・デザイン/装丁/広告/DTP/本/映画 etc.

    Author:山吉晴 グラフィック・デザイナー。 デザイン/装丁/DTP/映画/などについて… Firefoxに最適化されています。Safari、Operaでは文字の色が正しく表示できないようです。 mailto:山デザイン事務所

  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. コピー&ペーストに罪はない。

    近頃の大学生はインターネットの文章からコピペして論文を仕上げるからけしからん、こんなことでは学生にまともな思考力が育たない、とどこかの大学教授が嘆いたとか。 コピペの出所を明示しなかったり、論文全体がコピペばかりで構成されていたりするのは問題だが、コピペ自体は引用の一手段でしかない。図書館の資料から引用しようが、ネットからコピペしようが同じことだろう。 昔、司馬遼太郎が小説を書き始めたら神保町の古屋街から関連書籍がごっそり無くなったという伝説がある。司馬が神保町の資料を買いあさるのも、グーグルやヤフー検索でネットの海から資料をかき集めるのも基的に同じことだ。問われるのは情報の取捨選択と分析力であり、万年筆で原稿用紙に引き写しても、ネットからテキストエディタにコピペしても、引用であることに違いはない。 ネットなど触ったこともないという強者もいるようだが、個人的にはネットで検索しないと調べ

  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. DTP時代の色校正について その1

    DTPワークフローの中で、最もトラブルの多い要素が色である。色の問題を取上げていくとDTPワークフローの抱える問題のほとんどが絡んでくるはずだ。長くなりそうなので数回に分けて書くことにする。 ブロードバンドの普及により、DTPのオンラインワークフローが一般的になりつつあるが、最後の難関として残っているのが色校正である。色校正だけはオンラインというわけにいかず、今も物流(バイク便や宅急便や印刷所の営業)を必要としている。モニタやインクジェットプリンタではプロセス印刷を十分にシミュレートできないことや、離れた場所から色の説明をする困難さがあるためだ。 現在行われている主な色校正は次の4方式である。 1 校正専用機(平台校正機)による校正刷り 2 DDCP(Direct Digital Color Proofer、ダイレクト・デジタル・カラー・プルーファー)による校正 3 インクジェット・プリン

  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. DTP時代の色校正について その2 色評価用光源

    *** いきなりだが、上のグレースケールで、A~19までちゃんと区別できて、グレーの色がニュートラルグレーに見えているなら、あなたのモニタはとりあえず大丈夫である。 しかし、Aと1、18と19の区別がつかなかったり、グレーが変に赤かったり、青かったりしたら、写真を見るには適さないのでモニタの調整が必要だ。キャリブレーションツールがあるならそれにこしたことはないが、フォトショップがインストールされているなら、Adobe Gammaで調整できる。それもないなら、このグレースケールを見ながらモニタのコントラストを下げると、階調は多少改善されると思う。 この四角がニュートラルグレーに見えればカラーバランスは問題ない。 ● DTPで色の問題を取上げようとすると、普通、CMS(カラーマネジメント・システム)から始めることになる。しかし、モニタのキャリブレーションやICCカラープロファイル、ガモットなど

  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. 講談社現代新書の装丁の謎が解けた

    現代新書についてはこれまで何度か書いてきた。 「脱力する講談社現代新書の装丁」 「〈帯汚し〉について 」 「講談社現代新書2」 これまでの批評が的を得ていたかどうかは別にして、私はまじめに書いてきたつもりだ。しかしここに至って、この現代新書の装丁には当に脱力してしまった。まともに取り上げて批評する気力を失いそうだ。しかし、ここまで書いてきた手前、気を取り直してなんとか始末をつけておきたい。 論より証拠、というわけで、まず下の画像を見てもらいたい どれもタイトルのすぐ下まで幅広の帯で覆われている。カバーデザインの四角形(これも帯に印刷されている)が帯のテキストによって台無しにされている。カバーデザインをないがしろにするこうした帯を以前「帯汚し」と名付けて記事にした。 その際、帯汚しの定義もしておいた。 【帯汚し】 カバーデザインはそれなりのバランスやらしい品の良さが求められる。しかし、帯

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    FeZn 2007/06/25
    多重化
  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. 見えない、読めない雑誌デザイン

    この画像は『芸術新潮』の見開きページである。ディック・ブルーナの作品が6点紹介されている。が、中央の2点は「ノド」にわれてよく見えない。無理に押し広げればもう少し見えてくるがそれでも中央の2点の絵がひどく見づらいことに変わりない。これは単にレイアウトの失敗作なのだろうか。そうではないと思う。少なくとも当のデザイナーはそうは考えていないはずだ。実はこうした「ノドわれ」レイアウトは他のグラビア雑誌でも決して珍しくない。どうやら、見開きページ中央の絵柄がノドにわれて見えなくなってもレイアウトの失敗だとは自覚されていないようなのだ。 なぜこのようなレイアウトがまかり通っているのだろう。絵がちゃんと見えるように、別のレイアウトができなかったのだろうか。デザイナーも編集者も雑誌ができあがった時点でこのページに眼を通したはずだ。いや、レイアウトの段階で、色校の段階で容易に結果は予想できたはずだ。こ

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    FeZn 2007/06/18
  • 老水夫のごとく―――ブック・デザイン/広告/DTP/本/映画 etc. 新書の装丁 その1

    「平凡社新書」と「洋泉社新書」、 「光文社新書」と「集英社新書」 造形エレメントのうち、視覚に訴える力が最も強いのは「形(かたち)」だろう。私たちの視覚はまず対象の形を読み取ろうとするものだ。ただ、その形に際だった特徴が無い場合は、形より要素の配置の方が重要になってくる。 天井や壁の模様やシミが人の顔に見えたりした経験は誰もがもっているだろう。これは模様やシミが、人間の目や鼻、口の配置と似ている場合に生じる。目や鼻、口の形がそれほど物と似ていなくても(たいてい全然似ていない)、配置が似ているだけで、我々は似ていると感じるようだ。遠くに友人の姿を見かけた時、子細に観察しなくても友人だとわかるのも同じ理屈で、我々の視覚はちょっとした配置の特徴から識別できるようになっているらしい。装丁も同様で、タイトルや著者名の配置が似ているとそれだけで装丁が似ているという印象を抱きやすい。 形や要素の配置で

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