新版 テロルの現象学――観念批判論序説 作者:笠井 潔発売日: 2013/01/31メディア: 単行本 はじめに しばらく前にちょっと嫌みなことを書いて、やっと本編を読みました。あー、そういえばこんな話だったねー、と思うと同時に、正直いって現代的な価値がある本だとは思わなかった。笠井一人が、自分だけのために必要としていた整理でしかなく、それを他人が共有すべき必然性は特にないと思ったのだ。それは昔もそう思ったし(たとえばこのオローク『ろくでもない人生』あとがきを参照)そして、いままた読んで、なおさらその思いを強くした。 いやそれどころか、本書は自分がやろうとしたいちばん根本のところをごまかして、自分が批判したその枠組みにまさにすっぽりはまりこんでいると思う。今回、新版になってついたとんでもなく長くて混乱した増補は、まさにそのごまかしを隠しきれなくなった結果だ。久々に手に取って、ぼくはそう思っ
あれこれやりたいことはあるのだけれど、自由になる時間には限りがあるし、塾の子どもたちに注ぐエネルギーは常に一定量、貯めておかなければならない。必然的に、小さな枠の中でやりたいことをやるしかなくなるが、一部の恵まれた人間を除いたら状況はみな同じはず。やりたいことがやれなくないだけまだましか。 さて、表題の『ハムレットマシーン(以下、HM)』である。『レウコとの対話』の翻訳を通じて質的飛躍を遂げた僕の思想を試してみようと、久しぶりに、ハイナー・ミュラーの『HM』を手に取ってみたところ、なるほど、相変わらず難解ではあるが、邦訳やら英訳やらと照らし合わせて丁寧に読んでみると、これまでとは違った面白さに気づかされ、今ならこれを上手に演出できるのではないかと夢想さえしてしまう。 僕らの『HM』との出会いは1998年のパリだった。アルゼンチンの劇団「El Periférico de Objetos」の『
ひところマーガレット・ミラーを紹介する場合、必ずといっていいほど「夫のロス・マクドナルドの名声に隠れてはいるが」という前置きがついたものですが、いまやそのロス・マクの作品ですら数冊を除いて品切れ状態、マーガレット・ミラーにいたってはすべて品切れという嘆かわしい状況であります。「戦後華々しく登場した推理作家の中でも、読者を欺く技巧において、彼女と並ぶものはない」とジュリアン・シモンズにいわせしめたこの閨秀作家を埋もれさせるのはあまりにもったいない! というわけで今回のありがたいチャンスをいかすべく、マーガレット・ミラーを精一杯布教させていただこうと思います。 『鉄の門』『狙った獣』といったニューロチック・スリラーが話題を呼んだせいか、なんとなく日本ではマーガレット・ミラーというと「暗い」「異常」「後味が悪い」イメージがつきまとっているのですが、それだけで片付けられる作家ではありません。ミラー
2013年1月30日、バチカン図書館が所蔵している写本256点をデジタル化公開しました。 公開された写本は、同館に所蔵されているホメロスやプラトン、ソポクレス、ヒポクラテス、ヘブライ語の写本等の他、ルネサンス期にイタリアで印刷された初期刊本等が含まれているとのことです。 これは、2012年4月に発表された、同館とオックスフォード大学ボドリアン図書館との共同デジタル化プロジェクトに基づくもので、今回のデジタル化にあたってはNASAの技術協力があったとのことです。今後もプロジェクトは続けられ、資料の公開が行われるようです。 Digitized manuscripts (Vatican Libaryのウェブサイト) http://www.vaticanlibrary.va/home.php?pag=mss_digitalizzati&BC=11 Digitalizados los 256 pri
Live Nation says its Ticketmaster subsidiary was hacked. A hacker claims to be selling 560 million customer records. An autonomous pod. A solid-state battery-powered sports car. An electric pickup truck. A convertible grand tourer EV with up to 600 miles of range. A “fully connected mobility device” for young urban innovators to be built by Foxconn and priced under $30,000. The next Popemobile. Ov
The Literary Platformがスウェーデンでどのように電子書籍貸出が行われているについて非常に優れた記事を掲載している。図書館の存在を認めつつも米国の出版社が抱えている問題を考えると、出版業界人は必読の記事といえそうだ。 この記事によると、スウェーデンの図書館は無料で図書館利用者が常にすべての電子書籍タイトルを入手できるよう、電子書籍を『サービス』として取り扱っているという。スウェーデンの図書館は普遍的な『ライセンス契約』モデルを利用しておらず、利用者は一度に好きなだけ電子書籍を借りることができる。一方、図書館は出版社に対し、貸出ごとに支払いを行う。 このモデルは明らかにスウェーデンの出版社を神経質にさせているが、出版社は一部の書籍を陳列し始めており、スウェーデンで大きな騒ぎを巻き起こしている。ストックホルム市立図書館は現在、出版社と協力して、図書館が出版社の既刊書の電子化に
四人の歴史家 今村創平──今回、アンソニー・ヴィドラー著『20世紀建築の発明──建築史家と読み解かれたモダニズム』(鹿島出版会)を翻訳したのですが、私としてはどなたかときっちりと話をしたいと思い、八束はじめさんにお願いして、快諾していただきました。少人数にしたのはなぜなのかという質問もいただいたのですが、出版イヴェントを大きな会場で行なうとどうしても外向きにカッコつけた発言をしてしまうので、それよりも、私自身が自分の足りない部分を八束さんに率直にお聞きしたいこともあり、こうしたインティミットな形にしています。しかし、とにかく結構面倒な本でした。 八束はじめ──そもそも何で訳すことになったのですか? 今村──今回担当された鹿島出版会の川尻大介さんとは7〜8年前にこの近くの美学校で読書会をやっていた縁があり、その後もときどき建築洋書の話をしたりしていました。また、以前「10+1 web sit
トップ > Chunichi Bookweb > 自著を語る > 記事一覧 > 記事 【自著を語る】 『シモーヌ・ヴェイユ 「犠牲」の思想』 鈴木順子さん(明治学院大学講師) Tweet mixiチェック 2012年11月6日 ◆矛盾と闘った懐深き思考 シモーヌ・ヴェイユ(一九〇九~四三)の名に出会ったのは、日本の作家を通じてだった。森有正、加藤周一、神谷美恵子、須賀敦子、大江健三郎、池澤夏樹、高村薫。尊敬する彼らが、エッセーなどで、彼女の哲学者としての強靭(きょうじん)な思考力、類いまれな行動力、そして食糧難の戦時下で自らに摂食制限を課し三十四歳で早世するという激烈かつ清らかな最期に、異口同音に関心や敬意を表していた。「一体、どんな人なのだろう?」彼らを通じて興味を抱いたのが研究・執筆のきっかけである。 十年ほど読み続け、彼女がよく用いる「犠牲」という言葉に込められた意味の変化を追っ
ここに掲載するのは、随分前にネット通信に書き込んだ「『時の娘』再考」という議論に加筆訂正を行ったものである。ロンドン塔の二王子の謎についての文献を渉猟した副産物なのだが、あれからかなりの時が経ったにもかかわらず、今なお、一推理小説作家が歴史の謎に挑んで、学者も想定していなかったような新説を提起した、学問的意義のある作品であるかのように『時の娘』を評価する人がいる。 以下に論じるように、これは無知に基づくとんでもない誤解である。にもかからず、『時の娘』は依然として優れた歴史ミステリなのだということを再認識してほしいという思いも込めて書いたつもりである。 それ以来、ジョフリー・リチャードスンの“The Deceivers”(1997年)のような研究書も出ていることに気づいたが、現状では敢えて論評を加筆しなかった。今後の課題として残しておきたいと思う。 英国史とミステリといえば、真っ先に思い出す
わたしはティチューバ―セイラムの黒人魔女 (ウイメンズブックス (20)) 作者: マリーズコンデ,風呂本惇子,西井のぶ子出版社/メーカー: 新水社発売日: 1998/06/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (6件) を見る 虐げられし者 この小説は、17世紀終わりにアメリカのセイラムで起きた魔女裁判の容疑者、ティチューバ・インディアンの一人称の語りという体裁をとっている。 ティチューバは母親がアフリカからカリブ海のバルバドスへと渡る奴隷船の中で白人男性に強姦されたときにできた混血の子供である。それでも母親は同じ黒人奴隷の男性と事実上の夫婦関係になり、ティチューバは血の繋がっていない父親から愛情を受けて育つが、彼女がまだ子供のころ母親は主人を短刀で傷つけて縛り首になり、義父も自殺してしまう。 一人ぼっちになったティチューバはママ・ヤーヤという魔術師
編集宮後です。 ロンドンオリンピックには目もくれず 素敵本を追いかけている日々です。 このところ、ずっと世界の本を紹介していたので、 海外出版社についていろいろ調べておりました。 デザイン書はビジュアル中心の本が多く、 海外にも素敵な本がたくさんあります。 個人的にも大好きな本をつくっている 世界の素敵出版社をご紹介しましょう。 Gestalten http://www.gestalten.com/ 1995年にベルリンで設立された出版社。 デザイン、アート、建築、写真などのビジュアルブックを刊行し、 100か国以上で販売されています。 タイポグラフィブックフェアで紹介された ノキアのコーポレートフォントの本もここから出ています。 Verlag Hermann Schmidt Mainz http://www.typografie.de/ 1992年設立。ドイツのマインツにある出版社。 タ
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