昨秋、高知医療センター(高知市池)の取材を始めて十一日目。大病院を象徴するような場面に出合った。夜間の救急外来に、医師がわき出るように次々と“出勤”してきたのだ。 発端は午後八時すぎ。郡部の病院から九十代後半の腸閉塞(へいそく)患者が転送されてきた。「不整脈もあり、心臓のペースメーカーの手術も必要かもしれない」という情報とともに。 救急車対応当直は整形外科の大森貴夫医師(35)だったため、消化器外科の待機当番医(47)が呼ばれた。彼は高知市の中心部で開催中の研究会に出席していたが、抜け出てきた。 百歳間近。手術に耐えられるかどうかを検討していると、やはり呼び出された循環器センターの当直医(45)が、心電図を見ていて叫んだ。 「MIや!」 心筋梗塞(こうそく)のことだ。救急外来はざわめいた。心疾患は命にかかわる。腸閉塞よりも心筋梗塞の解決が先だ。もし見落として腸の手術に入り、急変で