はじめに 二〇〇九年九月の政権交代が日本の政治史の中で画期的な意味を持つことは、どれだけ強調しても、誇張にはならないであろう。政権交代によって始めて可能になった情報公開、政策転換もいくつか達成された。社会福祉政策の拡充、事業仕分けによる官僚の既得権への切り込みなどは、自民党政権では思いつかれもしなかったろう。これらの政策や改革の意義はきわめて大きいことを、ここで改めて確認しておきたい。鳩山政権がどんなに落ち目になっても、政権交代は日本政治にとって画期的な意味を持っていた。 もちろん、鳩山政権のリーダーシップの弱さ、政治家たちの脆さ、政権運営をめぐる戦略の欠如などによって、千載一遇の好機を逃したという悔いは大きい。しかし、今必要なことは、政権の欠陥やリーダーの質の悪さをいたずらに嘆くことではない。この政権交代が何を目指すべきであったのかをもう一度確認したうえで、本来の目的を達成できなかった理