南ロンドンから頭角を現し、みるみるうちにUK最注目バンドの座に躍り出たザ・ラスト・ディナー・パーティー(The Last Dinner Party)。先日のフジロックでは堂々たるステージングで2日目のグリーンステージを沸かせた。恵比寿リキッドルームでの単独公演も、初来日とは思えない親密な雰囲気を作り出し、さらなる飛躍を予感させた。デビューアルバム『Prelude to Ecstasy』では、ミニマリズムの逆を行くマキシマリズム(過剰主義)的な美学で過去のロックやポップを貪欲に吸収し、自分たちなりにアウトプット。サウンドはもちろん、ヴィジュアルやファン・コミュニティのありかたも興味深い。単独公演が行なわれる数時間前、5人のメンバーのうちアビゲイル、オーロラ、エミリーの3人に、バンドの現在について聞いた。 —まずは読者に自己紹介をお願いします。 アビゲイル:私はアビゲイル。リードシンガーです。
ビーバドゥービー(beabadoobee)が通算3作目となる最新アルバム『This Is How Tomorrow Moves』を発表した。2022年にサマーソニックで初来日を果たし、翌年にはテイラー・スイフトのUSツアーでオープニング・アクトを担当。今作は共同プロデューサーに巨匠リック・ルービンを迎え、米カリルフォルニア州マリブのシャングリ・ラ・スタジオで録音された。進境著しい「Bea」ことベアトリス・ラウスに、彼女と同じZ世代のライター・竹田ダニエルがインタビュー。カリフォルニアの光と闇、アーティストとして成長するための過程、そしてすべてを曝け出すことについて包み隠さず語ってくれた。 ―音楽的にどのように進化を遂げてきたのか、アーティストとしての軌跡について話したいですし、人間関係やメンタルヘルスについてどう向き合ってきたのかも個人的に興味があります。まず、「Ever Seen」のMV
文筆家・つやちゃんがファッション&ビューティのトレンドをポップスターから紐解いていく本連載。第3回はSNSを中心にトレンドとなった“フェアリーグランジ”をピックアップして紹介する。 本連載では以前バレエコアの最新の動向を取り上げたが、同様に、SNSを中心とした近年の息長いファッショントレンドの一つとして“フェアリーグランジ”が挙げられよう。2021~22年頃のパンデミック期に端を発したそのムーブメントは一つのジャンルとして根付き、最近では微妙な変化も遂げつつある。本記事では、“フェアリーグランジ”がどのような美意識の下、スタイルを確立してきたのかを振り返りながら、その本質が何なのか探っていきたい。 そもそも“フェアリーグランジ”とは、妖精のようなスタイリングの「フェアリーコア」と1990年代のバンド、ニルヴァーナ(Nirvana)に代表される着古したネルシャツやカーディガン、穴のあいたジー
総集編の映画の公開に合わせて、というか、アニメが放送/配信されてからずっと、25年以上続いているアジカンの古い楽曲や歴史を追ってもらえて率直に嬉しい。結成から一度も止まらずにバンドは転がり続けているけれど、ポップミュージックはユースカルチャーとしての側面もあるから、当時の中高生や同世代と共に俺たちも年を重ねて、アジの缶詰なのか密教の瞑想法なのか、誤解や興味の端っこはおろか若い世代に発見されなくなっていくのも仕方がないことだと思う。 しかしながら、前述したように、バンドも俺たちの人生もアラフィフなりに全力で転がり続けていて、有名になりたいという欲求はもともと薄いけれど、音楽を聴いてもらいたいという気持ちはいつでもしっかり持っている。ネットには配信サービスによって無限と呼んでもいいくらいの楽曲の海が広がっていて、そこには毎週数千曲の新曲がアップされ、過去の膨大な名曲たちをいつでも聴くことができ
長谷川白紙の『魔法学校』が大きな話題を呼んでいる。フライング・ロータス率いるレーベル、Brainfeederと契約後初のアルバムとなる今作は、前作『エアにに』で挑戦された「声」の実験がさらにもう一歩踏み込んだ形で試されており、結果的に、これまでにないポップさへと昇華されている。 今回はミュージシャンとの共演も多く、ジャズ・ベーシストのサム・ウィルクスが参加した「口の花火」や、KID FRESINOとの共演曲「行つてしまつた」、挾間美帆がホーンアレンジで参加した「恐怖の星」、さらにマスタリング/ミックスエンジニアも数名が参加。初めてオープンになったアーティスト写真、立て続けに公開された「THE FIRST TAKE」の動画など、いま長谷川白紙と作品と聴衆の間には生身の身体が介在しはじめ、新たな緊張感を生んでいるだろう。ソニックマニアへの出演も近づく中、最新の長谷川白紙が捉える世界について、踏
「俺はTシャツのセールスマンなんだ。ミュージシャンじゃない」 メタル・バンドのメンバーが音楽業界の現状について語る 米スラッシュメタル・バンド、エクソダス(Exodus)のベーシストであるジャック・ギブソンは、ダニエル・ブルームの新しいインタビューの中で、キャリアをスタートさせたばかりのミュージシャンへのアドバイスを求められた際、音楽業界の現状について悲観的な発言をしています。「俺はTシャツのセールスマンだ。ミュージシャンではない」 「今の若いミュージシャンに何を話したらいいのかわからない。うんざりしているからね。俺が衰えたんじゃなくて、もう音楽ビジネスがないんだ。 俺が若かった頃は、進むべき道があり、踏むべきステップがあった。バンドを結成し、音楽を作り、ライヴをやり始め、ライヴに人を集めることができれば、次のステップはレーベル関係者が興味を持つということだった。興味を持ってくれたレーベル
1. 私にとっての「音楽」について書いてみる。もしかしたら特殊な事例かもしれないが、何らかの参考になる気がするので公表する。 「音楽は「音を楽しむ」と書く。だから楽しいものだ」みたいな言葉をみると、沸騰的に苛立つことがある。まず、熟語漢字を一文字ごとに意味で解釈する仕草への違和感がある。「最幸」のような当て字の不気味さに近い感覚かもしれない。ただ、それ以上に、自分にとって音楽は「楽しい」だけでなく、つらく険しい体験を伴うものでもあるから苛立つ。もちろん「楽しい」が間違っているわけではないのだが、その言葉一つで割り切れるものでもない。 音源を聴く場合でも、ライヴ・コンサートでの演奏を目前とする場合にしても、あるいはクラブで踊る場合でも、「楽しい」と思うことはかなり少ない。少なくとも、肉体的な快楽とは別のものだと感じる。空腹のときにご飯を食べたり、心地よい気温と湿度の中で散歩したり、疲れている
2024年3月初旬、Borisと清春は約1週間にわたるオーストラリア2マンツアー「Boris ”Heavy Rock Breakfast” -extra- AUS Tour March 2024 Special Act 清春」を行った。清春とBorisのフロントマンAtsuoが7年前に出会ったことをきっかけに、Atsuoの誘いで実現したこのツアー。清春にとって初のオーストラリア公演であり、初の海外ツアーだった。 11月末には、日本での2マンツアー「HEAVY ROCK BREAKFAST JAPAN TOUR 2024」を控える2人に、オーストラリアでの10日間を振り返りながら、そこで感じた想いを語ってもらった。 【写真を見る】清春・Borisのライブ写真 ―そもそもの出会いから聞かせてもらえますか? 清春:知り合ったのはMORRIEさんがきっかけです。DEAD ENDのトリビュートアルバ
TikTokでの大ヒットがきっかけで大手レーベルの目に留まり、そこから専業音楽家としての道を歩むことになるなんてことは、もはや珍しいことではないのかもしれない。小学生の頃から自身のYouTubeチャンネルに自らの歌やダンスをアップロードしていた、なんて話もよく耳にするようになった。NYの老舗名門ジャズレーベルVerveからデビューアルバム『Flower of the Soul』をリリースした1999年生まれのシンガーソングライター、リアナ・フローレス(Liana Flores)もそんなインターネットネイティブ世代の新星だ。 彼女に話を聞いてみると、フォークミュージックとボサノヴァを中心にした音楽への造詣の深さに非常に驚いた。さらに彼女は、日本の音楽やカルチャーにも深く精通している。リアナはブラジル人の母とイギリス人の父のもとに生まれ、ノーフォークという自然に囲まれたのどかな街で音楽と自然に
2015年頃からにわかに盛り上がりを見せる「Dark jazz(ダークジャズ)」という音楽ジャンル。 別名「Noir jazz(ノワールジャズ)」「Doom jazz(ドゥームジャズ)」とも呼ばれ、探偵モノのハードボイルド映画の一場面を想起させるような音楽性が特徴である。 「jazz」という言葉が入っているが、モダンジャズの進化の文脈で登場した音楽ではなく、アンビエントの派生ジャンルである。 モダンジャズの歴史において、いわゆるその手の「ハードボイルドな」ジャズミュージックの極点はマイルス・デイビスによる『死刑台のエレベーター』のサウンドトラック盤であろうと思う。 ダークジャズは、死刑台マイルスの演奏の抑揚と輪郭をより曖昧にし、より暗く、重苦しくしたコンセプチュアルジャズという趣だ。 これがまた聴いているととにかくタバコが進み、そういう意味で身体に悪い音楽ではあるのだが、あらゆる意味で社会
平日は会社員、休日はバンドマン。自己流スタイルを貫き続けた、the原爆オナニーズTAYLOWと「パンクの本質」 元「smart」編集長・佐藤誠二朗によるカルチャー・ノンフィクション連載「Don't trust under 50」。 有頂天のKERA、ラフィンノーズのチャーミー、ニューロティカのATSUSHI、ザ・スター・クラブのHIKAGEに続いて登場するのはthe原爆オナニーズのTAYLOW。1982年にバンドを結成して42年。いまも変わらず地元・名古屋を拠点に活動を続けるリアルパンクバンドのフロントマン、TAYLOWの貴重なロングインタビューをお届けする。全4回にわたって、TAYLOWの現在、過去、そして未来に迫る。 (全4回の1回目 #1 #2 #3 #4) “売れる”ことを想定していないようなバンド名 取材は5月25日(土)下北沢QLUB Queでのライブイベントにて。リハ後のポー
バー・イタリア(bar italia) 写真左からサム・フェントン(Gt, Vo) ニーナ・クリスタンテ(Vo) ジェズミ・タリック・フェフミ(Gt, Vo) Photo by Steve Gullick ──まず、昨日のWWW Xでのショーの感想から聞かせてください。チケットはソールドアウトでしたね。 ジェズミ・タリック・フェフミ(以下、ジェズミ):自分がどこにいて、そして何をしているのかを実感した時に感動が込み上げてきたよ。自分は今、東京にいて、満杯のフロアで演奏をしている。そのことで胸がいっぱいになったね。 サム・フェントン(以下、サム):そうだね、本当にエモーショナルだった。暖かいオーディエンスに支えられていることを感じたし、それに全力で応えなきゃなって思ったよ。普段からそうするべきなんだろうけど、昨日はいつもとは違う感覚だったかな。 ニーナ・クリスタンテ(以下、ニーナ):「オーデ
左からスマッシュ社長・佐潟敏博、クリエイティブマン代表・清水直樹(Photo = Mitsuru Nishimura) 本誌の人気企画、フジロック/サマーソニック両運営による対談インタビュー。4回目となる今年は、ついにトップ対談が実現。招聘プロモーターとして切磋琢磨し合う両社の関係性、円安などシビアな問題への取り組み、洋楽フェスの矜持と変化を恐れない姿勢、ブッキングの裏話から今年の見どころまで。スマッシュ社長・佐潟敏博さん、クリエイティブマンプロダクション代表・清水直樹さんに包み隠さず語ってもらった。(※編注:対談は5月10日に実施 取材:小熊俊哉/構成:最込舜一) 共存共栄を図る、両社の関係性 ―初の社長対談ということで、お二方の個人的な繋がりから聞かせてください。 清水:年に1、2回食事するよね。リキッドルームの山根(克巳)さんが間に入って、年末とかにお互いの近況とか来年のことを話し合
NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SAIDAN : VISUAL KILL: THE BLOSSOMING OF PSYCHOTIC DEPRAVITY】 EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SPLATTERPVNK OF SAIDAN !! “Our Goal Was To Have Something Similar In Style To Suehiro Maruo. One Of My Favorite Bands “BALZAC” Used His Art On One Of Their Early Albums And It Really Stood Out To Me And I Wanted Something Like That.” DISC REVIEW “VISUAL KILL: THE BLOSSOMING OF PSYCHO
5月31日、自宅マンションで交際中の10代少女を包丁で刺し殺そうとした容疑で、音楽グループ「ツユ」の「ぷす」こと、矢野麻也容疑者(30)が逮捕されました。報道によると、「彼女を刺して自殺しようと思った」「彼女とトラブルはなかった」と供述しているそうです。 「ぷす」は、ニコニコ動画から起こったボカロムーブメントに影響を受けて、2012年頃に「じっぷす」名義で音楽制作を開始しました。米津玄師がボカロP「ハチ」として名をあげた少し後です。 その後、2019年に「ツユ」を結成し、2022年にメジャーデビュー。そして昨年にはアニメ『東京ベリンジャーズ 聖夜決戦』のエンディングテーマ「傷つけど、愛してる。」で一躍有名になりました。 グループの全楽曲の作詞と作曲を担当し、「ツユ」のYoutubeはチャンネル登録者数130万人超えと、若者に人気だった矢野容疑者。しかし、4月13日の自身のXアカウントで<音
メタラーのジャズピアニスト・西山瞳さんによるメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。第76回は、観客の振る舞いがSNSでもたびたび話題になる、ライブの楽しみ方について。メタルとジャズ、両方の現場をよく知る西山さん流のライブの満喫方法を、2つのジャンルを比較しながら教えてくれました。 *Mikiki編集部 ★連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉の記事一覧はこちら 今年も大阪の大規模ジャズフェスティバル〈高槻ジャズストリート〉に出演してきました。 しばらくNHORHM(ヘヴィメタル楽曲をカバーするピアノトリオ)で出演していたこともあり、今年もメタルバンド黒Tシャツ着用のメタラーの皆さんにも、沢山来て頂きました。 開場時間前に並び、開場後即座に小走りにやってきて、最前列をキープする。 楽屋のテントからその様子を見ていましたが、メタルの現場じゃないので、そんなに頑張らなくても大丈夫ですよ! ここはジャズの
ニューヨーク・タイムズ紙がSpotifyのデータを調査したところ、音楽の好みは一般的に13〜16歳の間に決まることが分かった。女性は13歳、男性は14歳がそれぞれ音楽的嗜好を形成するのに最も重要な時期とされる。また別の研究からは、30代になると音楽への好奇心が薄れてしまうという実態も明らかになった。音楽業界ニュースサイトのHypebotなどが伝えた。 Deezerの研究結果によると、音楽発見は24歳でピークに達し、31歳からは停滞。33歳までに一生聞き続ける音楽が決まってしまうという。30代から関心が低下する原因は、「選択肢の多さ(19%)」「責任の大きい仕事(16%)」「子育て(11%)」といったライフステージの変化が大きいようだ。 さらに、YouGovの調査では、個人が考える「音楽界で最も良い年代」は、その人が育った時代に大きく左右されることが判明。米国ではミレニアル世代(1982〜1
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