「かつて小作人は地主の家に手伝いに来いといわれればどんなに忙しくても行かなければならず、ただ働きさせられたものだった。それでも昼飯だけは出た。その昼飯は台所の土間で立ち膝で食べなければならなかった。おにぎりと味噌汁、おかずのたくあんを食べ終わると、『ごっつぉうさまでしたっす(ごちそうさまでした)』と土下座して、ひたいを土間の土につけて御礼のおじぎをする。小作人だった近所の農家の人たちのその卑屈な姿をたまたま見かけたとき、ものすごくいやな気持になった。そして小作人には絶対になりたくない、そのためにどんなことがあっても今の自作地を守っていこうと考えたものだった」 いうまでもなくその卑屈さは地主から小作料を引き上げられたら困る、土地を取り上げられたら生きていけなくなることからくるものだった。ろくに食うものもない日常で米の飯を昼に食わしてもらえるだけでもありがたかった。 そんな小作人の生活がいやな