かつて、X氏という人と出会った事があった。彼は万事に対してネガティブで、自分が何をやってもまずい事にしかならないと信じていた。事実、彼は大学受験の終盤に入って摂食障害を煩い、受験に失敗、こうなったのは家族のせいだと家庭内暴力を連日繰り返し、リストカットや自殺未遂も一再ではなかった。高校中退後はずっとニートで、何をやっても自分は駄目で苦しいともがきつつも、様々な消費財は人並みに、否、人並み以上に消費し続けていた。その有様は、傍目にみてもあまり格好良いものではなかったと思う。 初めてX氏に私が出会ったのは、彼が23歳の時だった。最初は笑顔で話し始めた彼だったが、数分後には顔を歪ませて家族の不理解や自分の境遇の惨めさについて滔々と語り始めた。その語りに自傷の快楽が潜んでいる事を私は勿論気づいていたが、黙って聞いていることにした。以後も月に2〜3回程度、彼の話を聞く機会があったが、数十分に渡って「