1823年、米マサチューセッツ総合病院の主任外科医、ジョン・ウォーレンは2500年前の死体を解剖しようとしていた。ある支援者から寄贈され、外科病棟で見物料を取って展示されていたこのエジプトのミイラを検証すれば、古代人についての知識を深められると思っていた。彼は古びた麻の包帯を注意深く切断し、そこで手を止めた。 黒ずんではいるが、見事な保存状態の頭部があらわになっていた。高い頬骨、茶色い毛髪。歯は白く光っている。ウォーレンは後にこう記述している。目の前にいるのは一人の人間であって、彼をそれ以上「邪魔する気にはなれず」、そこで終わりにした、と。 それから話は2020年10月まで進む。新たに発見された59体のミイラの隠し場所の一つをエジプトの考古学者が全世界に公開し、報道陣は包帯でしっかりと巻かれた遺体を映し出した。このイベントの動画がインターネットで拡散されると、ツイッターでは反発の声があがっ