タグ

ブックマーク / www.anlyznews.com (13)

  • ニュースの社会科学的な裏側: オタクの皆さんにも、公共空間はどうあるべきかを考えて欲しい

    ちょっと無理のある萌え絵批判が編集者の岩渕潤子氏からされている。その主張の問題点はネット界隈のオタクの皆さんが指摘していて概ね正論なのだが、岩渕氏の主張を上手く拾えていない気がする。萌え絵を見るとイタリアでのキャットコールを思い出すと言う話や、萌え絵の女性の身体特徴は整形手術を行なう風俗嬢と同じく客に媚びていると言う話*1に、思いやりの原理を過剰に働かせて、岩渕氏の萌え絵批判の論点を整理してみたい。 1. 萌え絵は公共空間に相応しくないは一貫する主張 萌え絵は公共空間に相応しくない。岩渕潤子氏の主張はこういう事だと思うし、一貫しているこれを主張したように思える。道を歩く女の子を冷やかすキャットコールと言うセクハラ行為が、公共空間に相応しくないと言うのは多数からの支持が得られるであろう。萌え絵の女性の身体特徴は整形手術を行なう風俗嬢と同じと言う説明も*2、性風俗の看板や客引きも公共空間に相応

    ニュースの社会科学的な裏側: オタクの皆さんにも、公共空間はどうあるべきかを考えて欲しい
  • ジェンダー論をやっている社会学者にも「マンガ 化学式に強くなる」を読んで欲しい

    そして発狂して欲しい。 ある秀逸なエントリー*1を眺めて興味をもって「マンガ 化学式に強くなる―さようなら、「モル」アレルギー」読んだのだが、面白かったので紹介したい。日のポピュラーサイエンスの雄、講談社ブルーバックスの一冊なので同人ではない。中学生向きなのだが、オトナにも3つの意味で懐かしいと思う。 内容は、男性経験が豊富で脳みそが色ボケしている女子高生に、恋愛経験なく奥手なつくばの研究者(ただし、チェック柄のシャツではない)が化学を教えるという、ジェンダー論をやっている社会学者が発狂しそうなプロットの学習マンガである。白いモノで、先生役のつくばの研究者は塩を連想し、生徒役の女子高生は…恥ずかしくて言えない。 創作物がジェンダー・ロールに影響を与えるかは疑わしい*2し、そうだとしても女の子だから科学にやる気がないと言う偏見なのか、やる気がない女の子も化学を勉強すべきと言う主張なのかは

    ジェンダー論をやっている社会学者にも「マンガ 化学式に強くなる」を読んで欲しい
  • ニュースの社会科学的な裏側: 証明問題が苦手な中高生が読むとよさげな「定理のつくりかた」

    数学書と言えば、定理の説明とその証明の組み合わせが続く如何にもと言う内容のものが典型だが、定理が導き出されるまでの模索について説明されることは少ない。学術史的に動機が説明される事はあるが、数学者がどのような試行錯誤を行なっているのかは、大学院に進学して教員に指導されてみないと中々見えない世界であろう。 『定理のつくりかた』は高校生に数学研究の進め方、考え方を説明した公開講座の内容を膨らませたで、著者の数学研究の方法を中学校で教わる範囲の数学を例に説明してくれる。著者は自分の研究の進め方が普遍的なものとは限らないことを注意喚起していたが、褒める数学者はいても、疑念を挟む数学者はまだいないようなので、少なくともオーソドックスな方法の説明になっていると思う。 学習教材としてみると、証明問題の解き方のになる。問題と言うか命題を理解し、証明をしていく道筋を模索する方法が説明されているので、証明問

    ニュースの社会科学的な裏側: 証明問題が苦手な中高生が読むとよさげな「定理のつくりかた」
  • 東京医科大学は、開き直って統計差別を続けるべき

    東京医科大学が、女子受験生の点数を下げて、男子受験生の入学者数を増やそうとしていたことが発覚した*1。世間一般には非難の声が大きいようだが、医療現場にいる医師からは、性別に関係なく必要悪と言う声も上がっている。医師の供給数、病院の経営慣行の問題もあって、女医の増加が業務遂行上の障害になっている現実があるからだ。近い将来の医療需要減や、経営慣行の変更の困難さを考えると、男性医師の比率を高める施策を放棄するのは、大きな厚生損失を招くかも知れない。 1. 女性医師の増加は、医療現場で問題になっている 日の医療制度は担当医制度などフルタイムで働ける医師に負担が大きくかかるように出来ているのだが、(1)女性医師は出産や育児の都合でパートタイムで働きたがる傾向がある。また、昼間は医師が概ね足りている一方で、夜間の当直に入れる医師が不足しているのだが、(2)女性医師は当直や緊急呼び出しを避ける傾向があ

    東京医科大学は、開き直って統計差別を続けるべき
  • 教養を語る前に必要なメタ教養学

    『「地位はあるけど教養がない」人たちの末路』と言うエッセイが話題になっていた。論理の飛躍が大きく読みづらい文章なのだが、曰く、(1)哲学を知ることで、批判的思考によって現状を把握し、状況の変化に適応するための提案する事ができるのだが、(2)教養が無い人は哲学を知らないので、社会的地位がある場合は脅威になるそうだ。 哲学が大事と言いつつ、語義が謎のポストモダン論法になっている。教養とは哲学のことであり、哲学とは弁証法のことを指すことになっているが、これは社会通念と合致しない。教養を定義する議論が必要になるが、そういうものは無い。他にも、最初のページで脅威は文明にとってのものであったが、最後のページでは会社存続のためのに摩り替わっている。著者には論理トレーニングを頑張って欲しい。 1. 語義が曖昧な教養 そもそも教養は、言葉としては広く通じるが、実際の定義が曖昧な単語の代表例である。辞書の定

    教養を語る前に必要なメタ教養学
  • 社会学者の自己肯定バイアス

    社会学者の岸政彦氏が國分功一郎氏との対談で、「日の社会学は、特定の一人か二人のせいですごく評判が悪い」と述べいていたそうだ*1。“特定の一人か二人のせい”なのか、“日の”なのかを考えると、強い自己肯定バイアスがあるように思える。 “特定の一人か二人のせい”なのであろうか。ネット界隈で話題になった社会学者を思い浮かべてみたのだが、古谷有希子*2、古市憲寿、上野千鶴子、千田有紀*3、小宮友根*4、金明秀*5、友知政樹*6、舞田敏彦*7、柴田悠*8、筒井淳也*9、太郎丸博*10、大澤真幸*11、久保田裕之*12、北田暁大*13(以上、敬称略)と一人や二人では無い。フェミニズムやマイノリティ擁護など政治的主張が前面に出てしまい、実証的/規範的な論証が疎かになる傾向があって、全般的に粗さが目立つ。単語の意味を勝手に多義的にしたり、多義的な単語の意味をこっそりと摩り替える語義曖昧論法(Equivo

    社会学者の自己肯定バイアス
  • エッジが立ったガチ教科書だった「父が息子に語るマクロ経済学」

    マクロ経済学者の齊藤誠氏の「父が息子に語るマクロ経済学」を、ふとした切っ掛けで手に取ってみた。タイトルから議論の踏み込みの甘い啓蒙書かと思っていたのだが、想像とは大きく異なるものになっていた。父と子の対話でカジュアルなイメージを醸し出してはいるが、内容はしっかり標準的なマクロ経済モデルに基礎を置いている。また、いわゆる教科書と比較すると、モデルの選び方やデータにつけた注釈に個性や主張があって、かなりエッジが立っている一冊になっていると思う。 1. 非マクロ経済学徒でリテラシーが高い人向け 書の対象読者は、微分を使う程度ではあるが数学の知識がある、当の意味でリテラシーが高い、まだマクロ経済学を勉強していない人々になっていると思う。そういう人々にニーズがあるかが問題になるが、誰しもマクロ経済の影響は受けるし、SNSを見るかぎり政治学や社会学を専攻する人々も関心は高いようだ。狙いはそれらリテ

    エッジが立ったガチ教科書だった「父が息子に語るマクロ経済学」
  • ジブリ「風立ちぬ」を観る前に読むべき本

    オリジナル作品だとして見ればいいのだが、ゼロ戦開発者、堀越二郎の「零戦 その誕生と栄光の記録」は読んでおく必要があると思う。きっと、宮崎駿の“美しい”と、堀越二郎の“美しい”は意味が異なるし、宮崎の描く身勝手さよりも、堀越にある身勝手さの方が、より醜悪だからだ。 書は、群馬県に生まれ、東大の航空科で学び、七試艦戦、九試単戦(九六艦戦)の開発を担当し、零戦の開発を行い、終戦を迎えるまでの堀越二郎の半生を記した自伝的な内容になっている。厳しい海軍の要求水準に応えるべく、新技術を取り込みつつ、色々と頭を悩ませた事に対する回顧録になっていて興味深い。 1. 当時の戦闘機設計者の仕事が分かる 技術面は平易に説明されているので、誰でも戦闘機デザイナーとしての堀越二郎の立場が理解できる。堀越は機体設計を担当していたので、エンジンや材料については与えられた立場であった。だから翼の形状、空気抵抗、舵の効き

    ジブリ「風立ちぬ」を観る前に読むべき本
  • 行動生態学の授業でゲーム理論を演じさせられる

    通常の大学の試験では周囲と協力して解答を書くことは禁じられているが、UCLAのPeter Nonacs教授は行動生態学の授業で、グループで議論して解答する事を許してみたそうだ。つまり学生を被験者とする行動生態学の実験を、試験時間を使ってやってみたと言う事らしい(POPSCI)。 授業は医学、歯学、薬学などの学生の初級コースで、学生に行動生態学者として思考することを求めているそうだ。行動生態学ではゲーム理論を使って、なぜ蟻の巣があのようになるか、どのぐらいウイルスは宿主に有害なのか、どのように人間社会が組織され機能する事など、生物の行動を記述している。 さて、この行動生態学の教授は、試験が教育ゲームがどのように進むか測る良い方法だと思いついた。教授は教育の成果を評価するために試験を行う。学生は良い成績を得るために試験を受ける。教授と学生の目標は同時に最大化されるであろうか。もし学生に自由にさ

    行動生態学の授業でゲーム理論を演じさせられる
  • ネットを始める前の子供に読ませたい「詭弁論理学」

    「詭弁論理学」は論理的に誤りのある議論の仕方を、平易に記述、紹介しているだ。中高生向きの推薦図書にしたいと思うは少ないのだが、これは正にそういうだと思う。 ウェブに限らずインターネットでは常に情報を判断して咀嚼する必要があり、子供が正しく情報を吸収できるかは、保護者の心配事の一つであろう。書は、ある種の言説に騙されないリテラシーが身に付きそうなになっている。 1. 強弁術と詭弁術 四章で構成されており、第Ⅰ章で強弁術と詭弁術を分類したあとに、第Ⅱ章で強弁術、第Ⅲ章で詭弁術、第Ⅳ章で代表的な論理パズルとパラドックスを紹介している。強弁術が非論理的な無理押しで、詭弁術が論理的な主張の誤りになるそうだ。ただし、両者の区切りは明確ではなく、二分法や相殺法などどちらとも言えない話法もある。 2. 詭弁術の章が軸 強弁術の章は著者の個人的な恨み経験が多く紹介されており、詭弁術の章は一般的な事

    ネットを始める前の子供に読ませたい「詭弁論理学」
  • パズル的に読める『離散数学「数え上げ理論」』

    少し前にタイムラインで話題になっていたので、『離散数学「数え上げ理論」』を拝読した。数学畑の人らしく丁寧に書かれた説明と、単純ゆえに興味深い問いが並ぶパズル的なだ。複雑な計算は無いので、紙と鉛筆なども要らないと思う。賢く場合分けを数える方法の。 構成は、大きく二つに分けてあり、第一部で数え上げ問題を、第二部で数え上げ理論となっている。基礎的な知識を第一部で、理論的な議論を第二部に配置しているようだ。例えば第一部の第5章でフィボナッチ数列が出てきて、その閉じた数を表すビネの公式が、第二部の第7章で差分方程式を使って、第8章では母関数を使って証明される。 良い意味で、第一部と第二部で内容が大きく異なるわけではない。第一部も第二部も、プレゼント交換で自分のプレゼントが当たる確率のような具体的な問題を提示し、それを抽象化していく方法で議論が進んでいく。説明は丁寧で、式の展開は過剰なぐらいだ。た

    パズル的に読める『離散数学「数え上げ理論」』
  • ゾンビ企業の延命が、直接、経済を悪化させるわけでは無い

    よくソフトな予算制約がゾンビ企業を延命して、経済全体を悪化させると言う議論がある。これは正確ではないかも知れない。 どういう事かと言うと、ゾンビ企業の延命は金融機関にとって割引現在価値(NPV)が正になるので、金融機関にとってもゾンビ企業にとっても追い貸しは得になり、経済を改善する事になるからだ。 ゾンビ企業を延命させる事によって新たなゾンビ企業の発生を促進する事が、経済に悪影響を及ぼすと言うほうが適切であろう。 1. 一回限りの追い貸しゲーム 以下のような展開形ゲームで考えてみよう*1。 金融機関が融資を行い、企業が健全経営を行ったときを「健全」とする。金融機関と企業の利得は(5-m, 2)とする。企業が放漫経営を行い、金融機関が追い貸しを行う場合は、「追い貸し」とする。金融機関と企業の利得は(1-m, 3)とする。企業が放漫経営を行い、金融機関が清算するときは、「清算」とする。金融機関

    ゾンビ企業の延命が、直接、経済を悪化させるわけでは無い
  • 所得税の最高税率75%とフランスの不動産市場

    何かポジションを取ると、例えば新自由主義者を名乗ると、だんだんと事象を直視するのが難しくなっていくようだ。 フランスの所得税の最高税率75%への引き上げで、富豪向けの不動産の売り物件が増えていると言う話をしているブログのエントリーがあった。富裕層が国外へ逃避していると言いたいらしいが、少なくとも四つは見落としがあるように思える。 相続税ならともかく*1、所得税の回避のための国外移住は意味が無いケースが多い*2。フランス国内で得られた所得は、国外居住者にも課税される。 富豪はキャピタルゲインを含めた利子所得が多いため、給与所得にかかる所得税の最高税率で大きな打撃を受けない*3。 フランスもユーロ危機の影響を受けているので、税制だけが不動産市場を決定するわけではない。 タックス・ヘイヴンを利用したい富豪は、既に所得税の低いスイスに移住しているであろう(ウェッジ)。 所得税率が上がる事自体は、富

    所得税の最高税率75%とフランスの不動産市場
  • 1