「会うときのうれしさ、別れるときの悲しさを歌った島唄のことを久しぶりに思い出したね」 トカラ列島・悪石島のやすら浜港で、皆既日食の観測ツアーを終え、フェリーで帰路につく観測者を見送る島民を目にしながら、島の自治会長、有川和則さん(57)は感慨深げに話した。 人口70人の島のまとめ役。昨年末から、観測者らの受け入れ準備の陣頭指揮を執ってきた。しかし、この日に限ってあいにくの雨。上空は厚い雲に覆われ、皆既日食を楽しむことはできなかった。 皆既日食を見ようと、ツアー客や帰省客らで島の人口は一時的に5倍以上に膨れ上がった。水、電気、ごみ処理、トイレ、医療態勢……。何もしなければ島の生活基盤が崩壊する。村は当初日食を「天災」と表現した。しかし有川さんたちは島おこしに結びつけたいと、昨年から島民と話し合いを重ねてきた。 島は人口減が続く。若者は働き口を求めて島を離れる。「観光が島の産業