「わが人民にかかる医療は無料」。それが長年にわたる北朝鮮の国是だ。だが、このほど国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが脱北者を対象に行った聞き取り調査(7月15日に公表)から、この国の医療の恐ろしい実態が浮かび上がった。 調査に応じたのは、40人余りの脱北者。証言によると、病院には電気も暖房もなく、診療はろうそくの明かりを頼りに行われている。最低限の医薬品も常備されておらず、切断手術が麻酔なしで行われることもある。 咸鏡北道出身の24歳の男性フアンは、00年に走行中の列車から転落し、くるぶしの骨がつぶれた。医師はふくらはぎから下を切断する必要があると判断し、手術を行った。 「看護師5人に手足を押さえ付けられた」と、彼はアムネスティに語っている。「あまりの激痛に悲鳴を上げ、気を失った。病院のベッドで意識が戻ったのは1週間後だった」 フアンは、麻酔なしで手術を受けた患者をほかにも知って