怖い…でも見たい!怪異と戦う弱小少年!『ミヤコ怪談』第8話後編 2018年09月21日 気弱な少年と不良少女のジュブナイルホラー。 虐められっこの草弥は、クラスメイトに脅されて、「タタリ場」への調査に向かうのだが、出会ったのは、世にも恐ろしい妖怪の数々だった…「ミヤコ怪談」はメディ...
イスラムを深く知るためには、「コーラン」を避けて通ることができない。ジハードで死ぬと、楽園の72人の乙女という報酬があると書かれているのは本当か? そして過激派たちによってどのように曲解され、利用されてきたのか? 今あらためて問われる、コーランに書かれている内容の本質。(HONZ編集部) 本書はカーラ・パワー(Carla Power)著If the Oceans Were Ink――An Unlikely Friendship and a Journey to the Heart of the Quran(『たとえ海がインクであっても――奇妙な友情とコーランの心髄への旅』)(2015年 ヘンリーホルト刊)の邦訳です。 副題にある「奇妙な友情」とは、著者である気鋭のアメリカ人女性ジャーナリスト、カーラ・パワーと、本書における彼女の対話の相手、イスラム学者のモハンマド・アクラム・ナドウィー師と
ここ数年、買い手としての自分と売り手としての自分との間に、上手く折り合いをつけられずにいる。一消費者としての立場から考えると、様々なコンテンツが安く、便利に手が入るようになったことは間違いなく喜ぶべき状況である。だが、広告屋としての売り手の立場から考えるとコンテンツが安くなる状況というのは、決して喜ぶべき状況ではない。 ただ喜ぶべき、もしくはただ憂うべきだけの状況だったら、まだ対処のしようもあるだろう。だが先行きが不透明なまま、もどかしさにかまけて身動きが取れないというのが実情だったりする。そして売るものも買うものも安くなっていく現象は、特定の産業のみに起こるものなのか? 世界全体の富の総量は増えていくのか、減っていくのか? それらの変化に伴い、人間の根源的な欲求は変わりうるのか? 疑問は尽きない。 本書は文明評論家として名高いジェレミー・リフキンが、今起こっている経済パラダイムの変換から
たとえば宇宙、あるいは深海、もしくは辺境。人類は未知の世界に魅了され、フロンティアを切り開いてきた。だが我々の日常には、もはや冒険すべきフロンティアは残されていないのだろうか。 材料科学という研究に従事してきた著者は、マンションの屋上から見えるありふれた風景を材料という視点から見つめ直すことにより、既知の世界をフロンティアへと変える。 文明とは煎じ詰めれば材料の集合体であり、万物は数々の材料から形づくられる。本書では鋼鉄やチョコレート、ガラスからインプラントまで10種類の材料を取り上げ、人間スケールの世界から微細なスケールの内なる宇宙へと旅立っていく。 根底にあるのは、「すべての材料は、材料からできている」というシンプルな事実である。本は紙から出来ており、その紙はセルロース繊維から出来ており、さらにセルロース繊維は原子から構成される。 それぞれの詳細を観察するために、描かれる対象は人間スケ
センサなどによる詳細な観測で得たビッグデータにより、人間は他者からどのような法則で、影響を受けるのかが明らかになっているという。それを可能にしたのが「社会物理学」という新しい分野。 かつて『データの見えざる手』で話題を呼び、著者のペントランド教授と共同研究をした経験も持つ矢野和夫さん(日立製作所研究開発グループ)に「社会物理学」について解説いただきました。(HONZ編集部) 本書は、Alex ‘Sandy’ Pentland教授の Social Physics: How Good Ideas Spread-The Lessons from a New Science (2014)の全訳である。 ビッグデータに関しては、最近ではたくさんの書籍が出版されている。 それらの中で『ソーシャル物理学』に書かれていることは、他書の追随を許さない高みにある。どこが違うのか。著者本人には書きにくいことも含
今年の前半くらいのことだろうか、「世界の終わり」をテーマとしたノンフィクションが非常に目についた。人類は人工知能に負かされるというもの、絶滅期がすでに進行しているというもの、テクノロジーを扱う人間側の問題として滅亡を予測するもの。いずれにしても悲観的な論調が多かったことを記憶している。これは多くの人がテクノロジーに対して希望を抱かなくなったことの証左なのかもしれない。 そんな中でも、少なからずテクノロジーに対する大きな期待を抱かせてくれる人物は存在する。その代表格が、スペースXとテスラモーターズを率いて、電気自動車・太陽光発電・宇宙ロケットといった壮大な夢をぶち上げる男、イーロン・マスクだ。本書はイーロン・マスクによって公式に認められた、初の評伝である。 波瀾万丈という言葉が似つかわしい彼から、いよいよ目が離せなくなったのは2012年初めのこと。リーマン・ショックの後には、もはや終わりかと
「あなたも悪魔になってしまう可能性がある。」と言われても、自分は大丈夫だ、と思う人がほとんどだろう。しかし、この本を読めば考えが変わるに違いない。いや、この本を読んで考えを変えたほうがいい。 1971年におこなわれた『スタンフォード監獄実験』の責任者フィリップ・ジンバルドーが、その全貌とその後の展開を著した本だ。きわめてシンプルな実験である。夏休みに大学生のアルバイトを募り、くじ引きで看守役と囚人役に振り分ける。そして、二週間にわたってスタンフォード大学心理学部の地下に設けられた模擬監獄に閉じ込める。目的は、刑務所における囚人と看守の心理状態の観察。 参加したのは、専門家によって心理的・精神的に正常であると認 められた大学生。くじびきで囚人に9名が、看守に9名が割り振られた。看守は3名ずつが三交代で「勤務」にあたる。かなり高度とはいえ、いわば「監獄ごっこ」である。なんだそんな実験か、と思わ
8月26日発売の『世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集である。「世界の辺境」と「昔の日本」は、こんなにも似ていた! まさに時空を超えた異種格闘技の様相を呈す内容の一部を、HONZにて特別先行公開いたします。第1回は「高野秀行氏による前書き」と「かぶりすぎている室町社会とソマリ社会」について。(HONZ編集部) はじめに by 高野 秀行 私はふつうの人が行かないアジアやアフリカなどの辺境地帯を好んで訪れ、その体験を本に書くという仕事をしている。こんなことで生活できるのはありがたいと思うが、一つ困るのは話し相手がいないことだ。 たとえば、ここ5年ほど通って取材を行っているアフリカのソマリ人。彼らは数百年前から続く伝統的な社会システムを現在でも維持しており、それに従って内戦も和平も恋愛 も海賊行為も行われている。
「そ・つ・ぎょうぉ~、オメデトウ!」 「イェーイ」 声をあげ、制服を着たまま数メートル下の海面に向かっていっせいに宙を舞った。いつ頃からはじまったのか、いまでは卒業式の直後に行われるこの島の儀式になっている。 表紙の写真は、その飛び込みの瞬間を収めたものだ。顔は見えないが、皆透き通るような笑顔だったに違いない。実は彼らの約半数は、数年前まで不登校生活を送っていた。 舞台は沖縄本島南部、南城市の沖合約5キロに浮かぶ離島、久高島。卒業生を含め10数人の子供たちが、この島の集落のはずれにある「久高島留学センター」(通称:センター)で共同生活をしながら近所の中学校に通う日々を送ってきた。卒業生9人のうちこの島で生まれたのは3人で、あとの6人は関東や関西など県外からやってきた、いわゆる山村留学である。 親元を離れてこの島で暮らすうちに、不登校児たちの大半は、まるで魔法がかかったのかのように生まれ変わ
『本を読むときに何が起きているのか ー ことばとビジュアルの間、目と頭の間』知ってるけど、知らなかった。 あなたは今この文章を読んでいる。 あるいは、こんな冒頭に書かれている文章はすっ飛ばして先に重要な・核心的な部分だけ読もうと、はなから無視しているかもしれない。はたまた、たしかに目に情報を入れてはいるものの、文章が脳の中で意味を結ぶ前に先へ先へと進もうとしているかもしれない。かように、「文章を読む」とひと言でいっても、そのアプローチの仕方は人それぞれまったく異なってくるものだ。じっくりと読む人もいれば、ぱっとみて読み飛ばす場所を判断する人もいる。 文章を読む、殆どの場合そんなことは問題にはならない。ただ書いてある文章を読み、その意味するところを理解していけばいいのだと。だが本当にそれだけだろうか──、「読む」というのは、もっと多様で、人それぞれ違った過程を歩むものなのではないだろうか。そ
正直、リベラルとか保守とか、その手の話からは距離を置きたいというのが本音である。一言で言えば、ややこしいからだ。左右を問わず角度のついたスタンスからの発言は力強いし、もっともらしく聞こえることも多い。そんな中で、内側のスタンスから中庸なことを物申しても、無力感が伴うだけだろう。その実行力はともかく、立ち位置の格差というものが確実に存在するのだ。だからサイレント・マジョリティが、大量製造されていく。 これは言い替えれば、「言葉が、議論する力を失いつつある」状況とも言えるだろう。見聞きする多くの言論は、何を軸に議論をしているのか、そういったプロトコルがあまりにも見えてこない。そもそも一人の人間と一つの思想が、一対一対応しているという前提にも無理があるのではなかろうか。 このような混迷きわまる政治哲学の現状を鮮やかに喝破してくれるのが、本書『21世紀の自由論』だ。ジャーナリスト・佐々木俊尚氏が、
現代は、家庭で一番料理が作られる時代ではないか、と思っている。外食は当たり前だし、コンビニで弁当だろうが惣菜だろうがなんでも手に入るようになったから、かえって料理に興味を持つ人が増えたのではないか。手軽に作れるように、レトルトなどの調味料の種類も豊富である。 クックパッドの普及のすごさを思い知るのは、夕方のスーパーでのことだ。タイムセールの野菜と魚と肉を手に入れ、スマホで材料の名前を入れて検索すれば、あっという間に夕ご飯のおかずメニューが出てくる時代。安い食材でお美味しいものを作りたいと思う人は、今も昔も変わらずたくさんいる。 テレビ番組でも、料理のコーナーは安定の人気だし、体にいい食材と聞けば一度は買ってみる。年を取ったアイドルや最近お目にかからないなあと思っていたお笑いタレントも、料理ができると一発逆転。好感度がアップする。 しかしそれは最近のこと。料理研究家という特別な専門家から本や
今、日本全国には77,000にも及ぶ寺院が存在するという。コンビニの数が52,380店というから、その多さに驚かれる方も多いだろう。だがもっと驚くのは77,000のうち、住職がいない無従寺院の数が20,000を上回るという現実である。 昨年「地方消滅」という言葉が、世間を賑わせた。2040年までに人口が急減し、896もの自治体に消滅の可能性があると報じられている。この地方の人口問題はまだ警鐘が鳴らされている段階にすぎないのだが、寺院の問題は既に消滅期へと突入しているのである。 本書は、そんな寺院の未来、現在、そしてターニングポイントとなった過去までを連ねた一冊である。著者は、僧侶の資格を保持する経済記者。消えゆくものを見える化するために全国津々浦々を回り、情報を足で稼ぐ必要があった。北海道、鹿児島から、離島や被災地まで。その取材量が、まさに圧巻である。 限界集落とも呼ばれる過疎の村。その多
65歳以上の高齢者の万引きの増加が話題になったのは20年ほど前だったか。当時は全体に占める割合が1割に達したことで注目を集めていた。 本書によると警察庁発表の犯罪統計では高齢者による万引きは2011年には未成年者の検挙数を追い抜き、直近の公表値である13年は32.7%を占め過去最高を記録したという。万引き犯の3人にひとりが65歳以上という状況だ。人口全体が高齢化していることを踏まえても異常な増え方だ 万引きだけではない。ストーカーも60代以上の13年度の認知件数が10年前の約4倍に増え、他の世代の1.7-2.6倍に比べて高い増加率を示す。驚くべきなのは暴行の検挙数。2013年には94年比45倍超の3048人に急増している。原因も「激情・憤怒」が60%以上を占め、次点の「飲酒による酩酊」の14%を大きく引き離す。酔っぱらって、「何だ、この野郎!」と酒場で暴れる老人を想像しがちだが、本当に凶暴
今回ご紹介するのは、新進の宗教学者による「聖地巡礼」についての新書です。聖地巡礼と言われて、読者の皆さんは何を想像されるでしょうか。本書で扱っているのは、ある種の自分探しやパワースポット巡り、そしてサブタイトルにも触れられているアニメ作品に触発された「聖地巡礼」ムーブメントなどを含む、とても広い範囲の現象です。 著者は本書の中で、「宗教が変質してきている」と語っています。宗教がもともと人々の生活に密着していたものだったことを考えれば、現代のいわゆる伝統的な宗教から人々の生活が乖離しつつある状況は、そのまま「宗教の変質」を物語るものでしょう。逆を考えれば、本書のように具体的にその「変質」の例をいくつも吟味しているうちに、人々の暮らしがどのように変わってきているのかを学ぶことができるともいえます。 いくつもある具体例 本書では、先に触れたとおり現代みられる様々な「聖地巡礼」の具体例が挙げられて
昨年の後半から、地方について論じる本が売れています。このブームの火付け役になったのが中公新書の『地方消滅』。発売以降順調に売れ続けていますが、今年に入ってからまた売上が加速し、関連書の発売も続いています。 以前『ヤンキー経済学』を分析した際、『ヤンキー経済学』はマイルドヤンキーには読まれていない、という結果が出てきました(想像通りではありましたが)。以降、気になっていたことがあります。「じゃあ、『地方消滅』は地方の人が読んでいるんだろうか?」 今回は、関連書の発売が相次いでいる『地方消滅』をテーマに分析をしていきます。(※HONZのレビューはこちら) 日販のPOSデータ分析システム「オープンネットワークWIN」のデータをもとに、書店1店あたりの平均販売冊数を県別に算出してみました。もちろん、店舗規模の大きな店が含まれているなど様々な事情はありますが、平均冊数を地図にしたのがこちらです。 こ
お弁当にまつわる親との思い出なら、誰しも少なからず持っているものだろう。昼休みに友達と見せ合いっこをして馬鹿にされたこと、持っていくのを忘れて学校に届けてもらったこと、喧嘩をした後にお弁当箱を渡しながら謝ってみたこと…。かくも、お弁当の持つコンテンツ力の高さは、様々なコミュニケーションを生み出す。 今どきの親子なら、LINEでやり取りをすることも多いかもしれない。しかし、リアルタイムではなく、あえてタイムラグを活用したコミュニケーションをしたらどうなるのか、そして子供のスタンプに対して親が弁当で返事をしたらどうなるのか?本書は強すぎる親心ゆえに繰り広げられた、3年に及ぶ母と娘の物語。 舞台は伊豆諸島の一つ、八丈島。この島に住むシングルマザーの母親と、丁度反抗期に差し掛かったばかりの高校生になる娘が登場人物だ。つれない態度を取り続ける娘に対して、ある日母親はキャラ弁作りという報復行為に乗り出
サバがマグロを産むとはなんとも信じがたいが、東京海洋大学の著者らは既に、ヤマメにニジマスを産ませることに成功している。結論から言ってしまえば、まだサバからマグロは生まれていない。それでも著者は、サバにマグロを産ませる研究は頂上までの道程の9合目に達しているという。この研究が発展すれば、人類と環境の関わり方はガラリと変わってしまうかもしれない。 本書はわずか115ページの中に、サバにマグロを産ませるという奇抜なアイディアを思いついたきっかけから、生物を扱う研究に伴う困難や失敗、地道な苦労を積み重ねた末にあるエウレカの瞬間まで、サイエンスの面白さが凝縮されている。最先端のバイオテクノロジーに基づく研究成果に驚き、あなたの生命観さえ揺さぶられるはずだ。なにしろ、この研究から「精子のもとになる細胞から卵ができたり、卵のもとになる細胞から精子ができたり」することまで明らかになっているのだ。 本書冒頭
なんと興味深く、胡散臭い感じがするデータだろう。 本書は、顔かたちや体の大きさ、しぐさ、全体から感じる雰囲気などから他人が感じとる性格や性的魅力、性癖やら繁殖力、果ては未来を占うことはどれほどできるのか、その結果がどれほど正しいかを、膨大なデータを収集して裏付けた本である。 「卒アル写真」という怪しげな言葉はもちろん卒業アルバムに載っている写真のこと。著者のアメリカインディアナ州、デポー大学心理学准教授のマシュー・ハーテンステインは、若いころの写真から将来を予測できるかどうかを調べるため、卒業アルバムを使うことを思いついた。20代から80代までの650名以上の大学時代の卒アル写真を集め、口角の上がり方や随意筋 不随意筋の動きから笑顔の度合いを点数化した。そして、現状で彼らの結婚生活かどうなっているかを尋ねたのだ。 すると、結婚生活が順調の人の笑顔の点数は、離婚した人たちよりも統計的に有意に
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