哺乳類の中には分娩(ぶんべん)後に自分の胎盤を食べる動物がいます。子供の頃、テレビのドキュメンタリー番組『野生の王国』で、赤ちゃんを産んだお母さんガゼルが胎盤を食べているのを見たことがあります。胎盤を食べるのは、ライオンなどに血の匂いを嗅ぎつけられないようにするためです。 人間でも産婦や家族が胎盤を食べる風習が世界各地にあります。日本にもかつてはあったようですが、今も実際に食べるかどうかは知りません。ただ、ある地方病院で短期間のお手伝いをしたとき、助産師さんから「この患者さんは胎盤を食べるんですよ」と言われたことはあります。そのときは実際に胎盤を食べる場面を見ませんでしたが、その後で一度だけ儀式的なものに遭遇しました。 その日、赤ちゃんが生まれた後に胎盤が娩出されると、年配の助産師さんが立ち会いの旦那さんに胎盤を見せ、形や大きさを説明していました。僕はその横で分娩後の診察をしていたのですが