「これあげるわ。ただし使用期限は今日中よ」 母さんはそう言って、僕に一枚の紙切れを渡した。 なんだか頭が良さそうなおじさんが描かれたその紙を手に取って僕はとても戸惑った。 「母さん、これ……」 母さんはにっこりと笑った。 「そう、諭吉おじさんよ」 手にした事のない一万円札という大金に、僕の両手は震えた。 一万円。 なんでこんなおっきなお金を母さんは急にくれたんだろう。 その疑問の答えはないまま、僕はとりあえずありがたくこの諭吉おじさんを使わせてもらう事にした。 とはいえ、まだ小学校2年生の僕にとってこのお金は少々大きすぎる。急に渡されてもどう使っていいものかまるで分からない。 最初混乱していた僕だったが、そんなにややこしく考える事はないんだと気付いた。 母さんはこの諭吉おじさんを“あげる”と言った。 つまり、僕はこれを好きに使っていいんだ。 僕は自転車にまたがりお日様の下を走り出した。風は
![僕の諭吉おじさん](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/00320217e96aeac68f04642bf08a693b033e49ad/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fsbo.syosetu.com%2Fn1766ck%2Ftwitter.png)