こんな話がございます。 遠きいにしえより、我が朝におきましては。 辻占(つじうら)だの、橋占(はしうら)だの。 そういったものをよく行いま... こんな話がございます。 播州は室津、室の泊まりト申しますト。 古くヨリ栄えた湊町でございまして。 また、我が朝の遊女の始まりの地トモ申しま...
![砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/171bd370d6bf8a168185059e0e37f0ba9185faac/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fonboumaru.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2016%2F05%2Ffushou-higanbana.jpg)
こんな話がございます。 ある山深い村に若い夫婦がおりまして。 夫の母親と三人で、同じ屋根の下に暮らしておりました。 ある冬のこと。 大歳(おおどし)、つまり大晦日の晩のことでございます。 外はしんしんと雪が降っている。 三人はこの年最後の食事を終えて、囲炉裏にあたっておりました。 嫁は何だかそわそわとする。 自分でもよく分かりませんが、今日に限って心が落ち着きません。 ちらりと姑の方を見る。 いつにもまして、険しい表情で囲炉裏の火を見つめておりました。 囲炉裏の火越しに見えたその姿が。 炎に包まれたようにゆらゆらと揺れている。 嫁はふっと魅入られたような心持ちになった。 「これからは、お前が火種を守らなければならねえ」 姑が炎を見つめたまま、嫁に言いました。 嫁はどきっとして、夫の方に思わず目をやる。 夫は、安心させようと、深く頷いてくれました。 ト、二人の視線を遮るように、姑が冷たく言い
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