幸運にも私は昨年、日本における新年の伝統を知ることとなった。キネとウスを使う昔ながらの餅つきや、おせち料理だ。 まず衝撃を受けたのは餅つきの危険性。総合格闘技やフリークライミングに並ぶ世界王者級といえる。高々と振りかざされる木づちに頭をかち割られる人がいそうなものを。私にとってはミステリーだ。 同じミステリーでも、悲劇的かつ一見避けられそうなのが、餅による高齢者の窒息死だ。ニュースで聞かない正月はないが、私にはいま一つ理解できなかった。自分自身が雑煮に入った餅を食べて死にかけるまでは……。ただでさえのみ込むのに労力のいる(でもおいしい)コメの塊が汁に浸かり、のどごし良く供されるなんて、なんたる愚行。何かひと目でわかる警告サインのようなものがあってしかるべきだ─花火とか! おせち料理を囲むに至るまでの、途方もない仕事量と技術力にも驚かされる。ありとあらゆる食材と下ごしらえを要する、複雑怪奇で