法的根拠なく1年以上も政府が原発の運転を妨害し、電力会社に6兆円以上の損害を強要する日本の現状は、とても先進国では考えられない無法状態だが、日本人が法の支配を知らなかったわけではない。1232年につくられた貞永式目(関東御成敗式目)はマグナカルタとほぼ同時で、世界でもっとも早いコモンローの成文化である。これを日本における法の支配として高く評価する点では、保守の山本七平と革新の丸山眞男が一致している。 山本は本書で、貞永式目の発想は北条泰時の深く帰依した明恵の影響だとしている。明恵は高山寺の僧侶で、今ではあまり知られていないが、汎神論的な自然法思想をもち、社会秩序も生命のような自生的秩序と見ていた。泰時は明恵の影響を受けて、当時の武士の社会に受け継がれていたコモンローを51ヶ条の法典として編集したのだという。 しかしマグナカルタと違って、貞永式目を起草したのは「武蔵守・北条泰時」であり、現代
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