聴いたことのない音だった。あのひとのギターの音ほど前に出ようとしない。かのひとのギターの音ほどシャープさや冷たさがない。けれど、このギターの音も確実に好きな音だと思った。耳を傾けずにいられなかった。前のめりのからだで、音のするほうにたましいを向けざるをえなかった。 西荻イン&アウト OUT*19 インタビュウ〜京都・下鴨〜 「音楽って必要ですか? 僕は音楽は、そんなに必要なものではない気がして」 演奏後の食卓で、そのひとは言った。思いがけぬ言葉にわたしは白く打ちのめされる気分だった。窓の外、暗がりの中で、雨がパタパタと降ったり止んだりしている。昼間散歩をした鎮守の杜の木々も、今はどっぷりと水を含んでしなだれているだろう。京都・下鴨の暗闇の中に来ていた(またもや)。遠方の友だちがそこで演奏をするから。友だちのほかのもうひとりの演奏者が、そのひとだった。 静かに深くうたう。誰にともなく。自分の