吃音は何千年も前から認識されており,全ての言語と文化で見られる。米大統領のバイデンをはじめ,吃音のあった有名人は多数いる。古代ギリシャの雄弁家デモステネスは言葉がつっかえないようにするために小石を口に入れて練習した。2010年の映画『英国王のスピーチ』では英国王ジョージ6世の型破りな言語療法が描かれた。 専門的に言えば,吃音は会話のよどみない流れが乱される現象だが,本人の身体的な苦労としばしばそれに伴う感情の変化のせいで,周囲の人は吃音の原因を誤って捉えがちだ。例えば,舌や喉頭の欠陥,認知の問題,精神的なトラウマまたは緊張,左利きの子供を無理に右利きにさせる矯正が原因だと考える。特に残念なのは,子育ての失敗で吃音が起こるという誤解だ。 これらの通説や思い込みはどれも誤りであることが証明されている。過去20年間,特にこの5〜10年で,吃音はまったくもって生物学的な問題であることを示す研究結果