鮨詰めの満員電車、いつ果てるともない道行き、こっちは長い間立ち詰め、カーブになる度、身体のバランスを取ろうと悪戦苦闘しているのに、狸寝入りかもしれないが、目の前にどかっと腰を下ろし、足りない睡眠を補っている人たちを見るにつけ「同じ料金を払って乗っているのにこの差はなんだ!」と悪態のひとつも吐きたくなったことはないでしょうか。 そんな人に朗報となる本が出た。〈コストを掛ければ満員電車はなくせる〉というシンプルな主張が骨子だ。 筆者の肩書きは交通コンサルタント。東大工学部の大学院を出てJR東日本に17年勤務、将来は鉄道経営を希望、という、ただの“鉄チャン”ではない。熱き「鉄道屋」である。 著者はまず数々の書物を渉猟し、満員電車の歴史を丁寧に繙いていく。満員の度合いが最も激しかったのは昭和40年だったという。ワースト1が都下、青梅線の西立川→立川間で、混雑率が312%。身動きできない、手も動かせ