短編小説の野望 著:スティーブン・ミルハウザー 短編小説――そのつつしみ深さ、マナーの良さといったら!気がつくといつも、おとなしく椅子に腰掛けて目を伏せ、つとめて自分の存在を消そうとしている。万が一、誰かが注意を向けようものなら、たちまち早口になってつっかえながら申し訳なさそうに、相手をがっかりさせてしまうのではないかと気を遣ってこう言うのだ。「わたしは長編じゃないです、あの、短いやつとも違いますよ。あなたがお探しのものがもし短めの長編だとすれば、わたしは違いますからね」威圧的なやつなんてほとんどいない。理由がお分かりだろうか。いま、ニヤリと頷いた人もいるかな。そう、ここアメリカ合衆国においては<サイズこそが力>なのである。長編、それはウォルマート、超人ハルク、ジャンボジェット機だ。その欲望は果てることがない―――長編は世界を丸呑みしてやろうと目論んでいる。では、みみっちい短編小説に残