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ブックマーク / honz.jp (66)

  • 『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ

    私が住む東京都町田市の小田急町田駅の東口の広場には「絹の道」という石碑がある。それをゼミ生に見せてからJR横浜線の下り線に乗り、八王子に向かう。その車中で、なぜ八王子と町田を結ぶこの街道が絹の道と呼ばれるか、学生たちに説明する。 このあたりの多摩丘陵の地形地質が桑畑に向いていて、それが地域の養蚕業を盛んにしたこと。そうして絹製品の産業基盤がこのあたりにあったところに、幕末期に盛んになった生糸輸出で、山梨や長野、群馬の生糸がいったん八王子に集まり、そこから輸出港横浜まで運搬されるルートができたこと。その流通加工拠点であった八王子には富が蓄積されたし、横浜までは生糸を馬の背に乗せて運ぶにも一日では歩ききれないので、行商人たちがその中間地点の町田で一泊してお金を落としたこと。横浜で生糸を売り捌いて懐が暖まった行商人たちが、おそらく帰路についた一泊目の町田で羽根を伸ばしたので町田には町の規模の割り

    『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ
    bookkeeper2012
    bookkeeper2012 2020/11/23
    八王子から横浜まで行くのに町田で一泊するのか。山越えを勘定に入れると中間なのか?/町田の歓楽街ってどこだったの。千寿閣側か?
  • 『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』躍動感あふれる創造の歴史 - HONZ

    白人によって作り上げられた「ファストフード帝国」。画一化されていて正直面白みに欠ける反面、汎用性の高さゆえに世界中至るところへ浸透している。恥ずかしながら、書を読む前に「アメリカ文化」としてまず思い浮かぶのはこの印象だった。 しかしその原点にまで遡っていくと、まったく異なる景色が見えてくる。元をたどればそこには画一化とはほど遠い多様さがあり、また必ずしも白人たちが主役だったわけでもない。 アメリカを代表するとされるべ物の中には、実は非西洋にルーツを持っている例が少なくない。ポップコーンは先住インディアン由来のべ物だし、フライドチキンは黒人奴隷と深い関わりを持っている。 外部からの影響の大きさを抜きにして、アメリカ文化を語ることはできない。書はそんな立場から、従来のイメージとは異なるアメリカの実像に迫る一冊だ。 植民地時代〜独立革命期まで遡っていくと、アメリカ文化の形成

    『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』躍動感あふれる創造の歴史 - HONZ
  • 文学を語ることばで科学を語る。『科学する心』 - HONZ

    「あまりに面白くて一晩で一気に読み終えました。この広大なテーマでエッセイを書ける人は他にいません」。池澤夏樹・著『科学する心』の帯に書かれた吉川浩満さんの推薦文です。文学者のことばで科学を語るエッセイ集として話題になっている『科学する心』。このの刊行記念として、三省堂書店池袋店の主催で行われた池澤夏樹さんと吉川浩満さんの対談イベント(4月25日)の模様をダイジェストでお届けします。(HONZ編集部) 池澤:今日はまず、吉川さんに御礼を言わないといけません。このを出す前に、何かとんでもない間違いをしているんじゃないかと心配になって、ゲラをお送りして、目を通していただきました。いわば学術的な査読をお願いした。実際、あちこちにあった間違いを教えていただき、そのおかげで無事に出版できました。大変ありがたいことでした。 吉川:すごく面白くて、一晩で一気に読みました。すぐに編集の方にメールを送っ

    文学を語ることばで科学を語る。『科学する心』 - HONZ
    bookkeeper2012
    bookkeeper2012 2019/06/03
    へえ池澤夏樹が。実は彼のエッセイしか読んだことがなくていつか小説をと思っていたのだが、こんなのが出たらこっちを先に読みそうだ
  • 『持たざる経営の虚実』経営文学に支配された、平成30年間の企業経営 - HONZ

    「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」。このダーウィンの名言を、若いビジネスパーソンへのメッセージとして援用する経営者は多い。 感じ方は人それぞれだと思うが、個人的にはサイエンスの理論を曲解し、都合よくビジネスに利用しようとする姿勢に違和感を覚えてしまう。 人間が自らの意志だけによって、自分たちの思う方向へ人体を進化させてきたというなら話は別だ。しかし自然淘汰における突然変異という概念や、適切な時期に適切な場所にいたことによる幸運という要素が、そこからはすっぽりと抜け落ちている。 書の著者は、このような現象を「経営文学」と名付け、痛烈に批判する。経営学とは来は社会科学の領域に属するはずのものだ。しかし、欧米などから輸入された経営論のスローガンが情念的な言葉の衣をまとい、意訳・誤訳されたまま流布するというケー

    『持たざる経営の虚実』経営文学に支配された、平成30年間の企業経営 - HONZ
  • 『山口晃 親鸞 全挿画集』五木寛之「親鸞」連載で全開になった山口晃ワールド - HONZ

    厚さは約4.5cm、総ぺージ数696の大型だ。重さは1kg以上。我が家のキッチンスケールの針が振り切れたので計測不能だった。 2008年9月から2014年7月まで1052回にわたって地方紙に連載された五木寛之の長編小説『親鸞』に添えられていた挿画の総集である。もちろん1052点の挿画は原画通りフルカラーで収録されている。 若い世代には、五木寛之の小説を読んだことはないが、山口晃の絵は好きだという人も多いかもしれない。私もその口で、この挿画集は楽しみにしていた。 山口晃の絵の魅力は見る側の想像力をかならず超えることだ。代表的な作品イメージとしては、狩野派のような金雲を使った画面構成で現代と近代が融合した繁華街を俯瞰し、さらに機械仕掛けの馬に乗った戦国武士まで登場させるという、時間と空間を横断した作品だ。その筆致は精密で、画家の奇想をそこかしこに見つけ出す楽しみもある。下手をすると絵の前に3

    『山口晃 親鸞 全挿画集』五木寛之「親鸞」連載で全開になった山口晃ワールド - HONZ
  • 『意識の川をゆく 脳神経科医が探る「心」の起源』 - HONZ

    書は1933年生まれ、2015年に亡くなった、神経内科医オリヴァー・サックスの最後の である。サックスはイギリス人であるが、ニューヨークで医師として多くの業績を挙げ、コロンビア 大学の教授も務めた。サックスの愛読者なら、すでに彼の著作をいくつか知っているであろう。その大部分は彼自身が診 み た患者に関するエピソード的な記録である。医学的、科学的であると同時に、文学的な叙述だと言っていいかもしれない。 その意味では、書にはやや違った趣がある。全体は十章に分かれるが、いずれもある特定の医学的、生物学的な主題を論じている。第一章では、なんと植物学者としてのチャールズ・ダーウィンが描かれる。これはサックスがべつに奇を衒ったわけではない。ダーウィンは若年の時にビーグル号で航海しただけで、あとは自宅にいわば引きこもり、一切の公職に就かなかった。つまり一見地味な生涯を送った。しかしそれとは対照的に

    『意識の川をゆく 脳神経科医が探る「心」の起源』 - HONZ
  • 『「軍用地投資」入門』いろんな意味で掟破りな一冊 - HONZ

    ノンフィクションは一期一会、出会った時が買い時だ。いつか買おうなどと思っていても、きっと「いつか」は来ない。仮に来たとしても、既に書店には置いていなかったり、下手すると絶版になっていることもある。書はワケありなケースであるものの、今となっては入手することの困難な一冊である。 オビの「掟破りの不動産投資法」という文言が眩しいが、色々な意味で掟破りだ。沖縄島の県土の約8%とも言われる軍用地。これが投資家たちの手によって「金融商品」さながらに売買されているというのだ。この衝撃の実態を指南という形から伺い知ることが出来るのが、書『お金持ちはこっそり始めている 当は教えたくない!「軍用地投資」入門』だ。 軍用地とは、沖縄の米軍基地や自衛隊基地内の土地のことを指す。その約2/3は個人や、県、市町村の土地を国が借りる形になっている。一般的に不動産投資ではマンションなどを購入し、部屋を貸し出すこ

    『「軍用地投資」入門』いろんな意味で掟破りな一冊 - HONZ
    bookkeeper2012
    bookkeeper2012 2018/06/04
    ちょっとした奇書
  • 『話術』50年の怠慢を経て名著を読む - HONZ

    私が東京放送のアナウンサーになったのは1967年の春だった。 新人の頃、アナウンサーとして読むべき何冊かのを教えられた。そのひとつが「徳川夢声さんの話し方の」だった。 正に今回文庫化されたこの『話術』なのだ。先輩から読めと言われていたのに、50年間手にすることがなかったが手元にやってきた。襟を正して読み始めることにした。 思い返してみると、ただ遊んでばかりいた少年時代に、徳川夢声氏が朗読する「宮武蔵」に夢中になっていた。 調べてみると、夢声氏のラジオでの「宮武蔵」の朗読は、戦前から戦中にかけてNHKで放送され一世を風靡していた。戦後、民放でも夢声氏は再び武蔵を朗読して、又しても多くのファンを魅了した。 私も、民放で聴いたひとりだった。 武蔵(タケゾウ)と、幼馴染のお通との、いつまでもはっきりしない関係にヤキモキしながらも、次々にやってくる木刀や真剣での立ち合いに手に汗握ったものだ

    『話術』50年の怠慢を経て名著を読む - HONZ
    bookkeeper2012
    bookkeeper2012 2018/04/03
    久米宏、うまいな。耳で聴く文章という感じ
  • 『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』スタンダードの求心力と辺境の遠心力 - HONZ

    読書会のやり方は人によって様々だと思うが、面白く実施するためにはいくつかの条件がある。たしかに同じような読書量のメンバーが集まり、をネタに好き勝手言い合うだけでも、それなりの楽しさはあるだろう。 しかしそれを継続的に習慣化していくためには、少なからず妄想のような会話にリアリティが伴ってくる必要がある。HONZの例で言えば、サイエンスの話に触れながら、ふと感じた疑問に答え合わせのできる状況が整えばグッと面白くなるのだ。だからHONZの朝会にわざわざ大阪からやってくる大学教授の存在には、得難いものがある。 また信じられないようなノンフィクションを前にそれに近しい体験をしたことのある人の話が加わった時にも、盛り上がりを見せることが多い。自分では想像するしかなかったことが、誰かの体験と地続きになることで、一気に自分ごと化するような感覚が味わえるのだ。 そういった意味で書に収められている読書

    『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』スタンダードの求心力と辺境の遠心力 - HONZ
  • 『すごい廃炉 福島第1原発・工事秘録<2011~17年>』一般メディアが語らない前代未聞の巨大な"現場" - HONZ

    新国立競技場の建設が佳境に入った。2月からは屋根工事もはじまり、20基もの大型クレーンが同時に動き回る様子は壮観だ。敷地面積11万3000平米、総工費1500億円を超える巨大現場である。完成すると6万8000人の観客を飲み込むという。 いっぽう、福島県双葉町・大熊町ではそれをはるかに凌ぐ規模の工事が進んでいる。敷地面積は30倍の350万平米、総工費は50倍の8兆円。完了まで30〜40年かかると見積もられている福島第1原発廃炉工事だ。 新国立競技場を47都道府県それぞれに建設するような規模なのだが、その全貌が一般のメディアで語られることはない。あまりに専門的すぎるからだ。 書は土木専門誌「日経コンストラクション」に不定期掲載されている巨大現場のレポートのまとめである。それゆえに、文は土木関係者向きのお硬い内容になっている。 そもそも前代未聞の現場である。放射能に汚染されたガレキの撤去や無

    『すごい廃炉 福島第1原発・工事秘録<2011~17年>』一般メディアが語らない前代未聞の巨大な"現場" - HONZ
  • 『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』教育の旅紀行 - HONZ

    ロンドンの貧困地区の中等学校で数学を教えていたイギリス人教師が、学校をめぐる旅に出た。OECD(経済協力開発機構)が実施しているPISA(学力到達度調査)で高得点をあげた国々を選び、学校を訪問する。この旅を通じたフィールドワークはユニークなものだ。PISAの成績上位国の学校で働く教師たちのメールアドレスをネットで探し、彼ら・彼女らの学校での手伝いをしながら、その教師たちの自宅に2、3週間滞在させてもらう。こうして、公式のルートで依頼したらあてがわれてしまいそうな「ピカピカの」学校ではないところに入り込む。さらには、教師たちの家族や友人との会話を通じて、「公式見解」とは異なる、その国の教育の実情に迫る。選ばれた国や地域は、シンガポール、上海、日、フィンランド、そしてカナダである。 帰国後、彼女はクラウドファンディングで出資を募り、旅の記録を一冊のにまとめた。それが書『日の15歳はなぜ

    『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』教育の旅紀行 - HONZ
  • 『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』 - HONZ

    店頭で「このを読んで見よう」と思わせるのは、まず、装丁だ。表紙が素敵だったりあれっと不思議だったりすると、自然に手が伸びる。僕は、迷わず文の最初の10ページを読む。作者は「読んで欲しい」と思って文から書き始めるはずだから、そこが面白くなければご縁がないなのだ。 書は、最初の小見出し「オキシトシンで愛情が湧く」でノックアウトされてしまった。母親が赤ちゃんをかわいいと思うのは、出産のとき大量に分泌されるオキシトシン・ホルモンのせいなのだ。では父親は?子育てに参加すればするほどオキシトシンが出て、最終的には母親に追いつくのだ。書は脳研究者の子育ての記録だが、最先端の研究成果がふんだんにちりばめられており無類に面白い。 2次元の視覚情報から脳は3次元の世界をいかに理解するか、「三つ子の魂百まで」は当で脳の神経細胞の数は3歳になるまでに70%が死滅する、「二度あることは三度ある」はベイ

    『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』 - HONZ
  • 自分であるということ 『成駿伝 孤独の◎は永遠に──』 - HONZ

    狩りの素人が山に入っても、獲物の存在に、なかなか気づかないそうだ。その一方で、猟師は山を見ただけで獲物がどこにいるかわかるという。私は小学校の頃から競馬をみてきたが、JRAにお金を預けっぱなしである。しかし、出馬表を見ただけで獲物がわかる予想家はいるものだ。書は、昨年の夏に他界した、清水成駿という大物予想家の人物像に迫っただ。 ダービーなどのG1レース前日、コンビニの入り口には出馬表を掲載した新聞がズラリと並ぶ。日中でお馴染みの光景だ。そのなかで一際高く積まれているのが、東スポである。その1面は日で最も読まれる競馬予想と言って差し支えないだろう。長年にわたり、そこに記事を書いてきたのが、日の主役・清水成駿その人だ。競馬好きならまず、知らぬものはいない。 そのコラムは、競馬予想の枠を超えた芸術だった。私は、少年ジャンプの発売を待つ子供のように、週末にそれを読むのを楽しみにしていた。

    自分であるということ 『成駿伝 孤独の◎は永遠に──』 - HONZ
    bookkeeper2012
    bookkeeper2012 2017/05/09
    亡くなっていたのか
  • なぜ薬物依存が減らないのか『ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造』 - HONZ

    薬物依存には大変恐ろしいイメージがある。一度でも手を出せば最後、もはや依存から逃れることは叶わず万難を排して薬を手に入れることに邁進し、捕まってもやめることはできない──。 確かにコカインやマリファナといった薬物には”依存”はある。だが、世間一般に流布しているイメージは科学的に正確とは言い難いものだ。違法薬物による依存とはどのような種類の依存なのか? 依存に陥らない状況もあるのか? という点について、ただ闇雲に恐れるのではなく科学的に検証する必要がある。書は、アメリカの貧しい黒人居住地区で生まれ、幼少─青年時代を”薬物”と身近な日々を過ごした神経科学者による、”正しく怖がる”ための薬物教育の一冊である。 邦題と違い原題は『High Price: A Neuroscientist’s Journey of Self-Discovery That Challenges Everything

    なぜ薬物依存が減らないのか『ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造』 - HONZ
    bookkeeper2012
    bookkeeper2012 2017/02/07
    若い頃クスリ漬けでもいまだにピンピンしているミュージシャンとかたくさんいるしね。そりゃ死んでいるのもいる訳だが
  • 人生観が、そして人生が変わる 『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』 - HONZ

    人間にとってただ一つ確実なことは、いずれ死ぬということだけだ。しかし、いつ死ぬのか、どのように死ぬのかはわからない。年老いて不自由になった時、不治の病にかかった時、あなたはどのような人生を望むつもりだろう。医学が発達しているからなんとかしてもらえると思っている人がほとんどではないか。しかし、その考えは、このの冒頭にある文章を読んだだけで打ち砕かれる。 わずかな間だだけでも高齢者や終末期の患者と一緒に過ごせば、援助すべき相手に対して医学がどれだけ失敗を犯しているかがわかるだろう 人生の備えとしてこのを読んでおくべきだ。あなたの人生観が変わる。そして、いつか人生そのものが変わる日がくるはずだ。 つい数十年前まで、老人は敬われ、大事にされ、家族の世話で看取られていくのが一般的であった。しかし、高齢化や核家族化により、そのような最期は激減している。そして、老化により自立できなくなった高齢者は、

    人生観が、そして人生が変わる 『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』 - HONZ
  • 『外道クライマー』スーパーアルパインクライマー宮城 解説 by 角幡 唯介 - HONZ

    宮城君から私のアウトルックの受信トレイに変なメールが届いたのは、もう4、5年ほど前になるかと思う。彼は、私が自分のブログに書いた北穂高岳滝谷第四尾根の登山の記事を読んでメッセージを送ってきたのだが、それがたしか、われわれの間に起きた最初の接触だった。 私が滝谷の四尾根を登ったのは5月の大型連休の話であり、春にこのルートを登るのはとくに珍しい記録ではない。それでも彼は一応「いい登山をしていますね」と社交辞令的な口上を書き、そのうえで私の記事を読んで自分もすぐに滝谷に向かったと記していた。 彼が興味を示したのは第四尾根ではなく、その途中で私が撮影した、より登攀的なC沢右股奥壁の氷壁の写真だった。たしかにこのC沢右股奥壁の氷はなかなか挑発的なルートで、氷自体はまだ登られていない可能性があるため私もブログに載せたのだが、宮城君は写真を見て瞬時にその魅力に反応し、すぐに滝谷に向かったというのである。

    『外道クライマー』スーパーアルパインクライマー宮城 解説 by 角幡 唯介 - HONZ
  • 『冒険歌手 珍・世界最悪の旅』日本冒険界の奇書中の奇書 - HONZ

    ノンフィクションの醍醐味は「事実は小説より奇なり」を地で行く部分だと思う。小説は作家が人工的に創ったものだからどうしてもきれいな形で収まるが、現実はそうはいかない。あまりに予想外でどうしてそうなるのか─当事者や著者にさえ─さっぱりわからないなんてことが起きる。ある意味で”人智を超えた”おもしろさを感じる。 佐藤俊『越境フットボーラー』(角川書店)がまさにそういうノンフィクションだ。 ……え? 解説すべきがちがう? まあ、細かいことを言わずに話を聞いてほしい。おもしろいんだから。このは「戦力外通告」を受け、Jリーグ、欧州、南米以外の場所、つまりマイナーな国や地域に渡っていった日人プロサッカー選手たちの物語だ。 酒井友之選手もその一人。稲潤一選手や小野伸二選手らと共に1999年、U‐20日本代表としてワールドユース選手権準優勝を勝ち取り、「黄金世代」と呼ばれた選手だ。彼は持病の腰痛など

    『冒険歌手 珍・世界最悪の旅』日本冒険界の奇書中の奇書 - HONZ
    bookkeeper2012
    bookkeeper2012 2015/11/22
    冒険の世界はせまい
  • 『文明の誕生 メソポタミア、ローマ、そして日本へ』 - HONZ

    僕たち人類は、約20万年前に東アフリカのサバンナで生まれた単一種(ホモ・サピエンス)が、世界中に拡がっていったものである。それと同様に、よく知られている4大文明も別々に生まれたのではなく、世界最古のメソポタミア文明が四方に拡がっていったものであるという説が唱えられている。 「ものごとの質は祖型にこそよくあらわれる」、そうであれば、僕たちの文明がどこへ行くのかを考える際のヒントとして5000年前にメソポタミアで生まれた文明の起源を探ってみるべきではないか。それが書の立場である。 文明はシュメルの都市で生まれた。都市は城壁で囲まれていた。従って君主は城壁冠を被るのである。職業と身分が分化し「契約」という概念が生まれた。為政者は暦をつくり時間を支配した。「文明社会は為政者が、近代以降ならば資家も加わって、時間によって民衆を管理する社会である」。 1週間や時計の12分割の文字板もメソポタミア

    『文明の誕生 メソポタミア、ローマ、そして日本へ』 - HONZ
    bookkeeper2012
    bookkeeper2012 2015/09/08
    “よく知られている4大文明も別々に生まれたのではなく、世界最古のメソポタミア文明が四方に拡がっていったものであるという説”はじめて聞いたわ
  • 【連載】『世界の辺境とハードボイルド室町時代』第1回:かぶりすぎている室町社会とソマリ社会 - HONZ

    8月26日発売の『世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集である。「世界の辺境」と「昔の日」は、こんなにも似ていた! まさに時空を超えた異種格闘技の様相を呈す内容の一部を、HONZにて特別先行公開いたします。第1回は「高野秀行氏による前書き」と「かぶりすぎている室町社会とソマリ社会」について。(HONZ編集部) はじめに by 高野 秀行 私はふつうの人が行かないアジアやアフリカなどの辺境地帯を好んで訪れ、その体験をに書くという仕事をしている。こんなことで生活できるのはありがたいと思うが、一つ困るのは話し相手がいないことだ。 たとえば、ここ5年ほど通って取材を行っているアフリカのソマリ人。彼らは数百年前から続く伝統的な社会システムを現在でも維持しており、それに従って内戦も和平も恋愛 も海賊行為も行われている。

    【連載】『世界の辺境とハードボイルド室町時代』第1回:かぶりすぎている室町社会とソマリ社会 - HONZ
  • 『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』少女たちを守れない社会に、未来などない! - HONZ

    注:文末にある映像は「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局」からお借りしたものですが、衝撃を受ける方が多いと思います。落ち着いた場所でご覧ください。 子宮頸がんワクチンは、2010年11月26日に成立した「ワクチン接種緊急促進特例交付金」により「公費負担」となり、ほとんどの自治体で接種は無料となった。対象は小学6年生から高校1年生の女子のみ。この年齢が選ばれたのは、性交渉の経験のある人は効果が期待できないからである。製薬会社の説明文書に明記されているのだが、接種した医療機関でその説明はなく、そのため多くの成人にも接種された。 保護者である母親は「これを打てば、一生子宮がんにならなくて済む」と信じ同意した。2011年4月以降、接種対象者には自治体や学校から接種を促す通知が繰り返し配布され、中学入学と同時に打ったというケースが目立つ。役所や学校からの通達であれば、安全であると信じるのは当た

    『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』少女たちを守れない社会に、未来などない! - HONZ