両作品が対照的で同じような現代的テーマを扱っていて面白かったので、簡単に感想をなど。『あなたのための物語』を評価するのは結構僕自身は両義的である。「純文学」としては文章や描写が殺伐としている。「エンターテイメント」としては、展開などがフラットすぎる。しかしそのフラットさが、作中にもある「平板化」とあわせて、ある意味を持っているところが、評価の迷うところ。基本的に、SF読者が期待しそうな「科学による解決」を全部外していくことによって作劇がされている。そこを評価するかどうか。 主人公のサマンサは、人間の脳に人工神経を形成し、それをコンピュータ言語に変換し、人間とコンピュータを繋ぐ装置を開発している。物語は死の病によって身体を蝕まれていくサマンサと小説作成人工知能「WANNA BE」との関係によって進む。この物語は基本的に「この私」と「身体」の問題系に帰結すると思う。例えば自分の人格をコピーした