『週刊ダイヤモンド』 2009年10月24日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 810 日本の金型産業が危ういと、メディアで報じられ始めて久しい。それでも、日本の金型産業を担っていた人びとは、秘かな自信を失いはしなかった。 彼らの自信の根拠は、金型はたいそう複雑な産業で、簡単にまねが出来ないところから生まれていた。 たとえば一台のクルマのモーターを作るには、ざっと見て、1,000枚ほどの非常に薄い板を、一枚一枚絶縁しながら重ね合わせなければならない。一枚一枚の金属板の素材は超硬と呼ばれる最高の硬度を誇る。ローラーで引っ張って金属板を超薄に仕立てていくのだが、その際、横に働く圧力の強さを勘案しなければならない。 そこはもはや芸術といってもよい次元の仕事で、扱う素材がどの素材メーカーのどの工場で作られたかさえ考慮しながら、「金型設計の技能屋」が仕立てていくのだそうだ。 だからこそ、