中国・上海で開催された世界人工知能大会(WAIC)に展示されたテスラのロボット(2023年7月6日撮影、資料写真)。(c)WANG Zhao / AFP 【10月29日 AFP】米シリコンバレー(Silicon Valley)で人気のある「長期主義(Longtermism)」という思想は、人類滅亡というテーマを軸に据えて人工知能(AI)をめぐる議論の枠組みを提供してきた。 しかしここへ来て、「長期主義は危険」だと警戒する声が大きくなっている。人類滅亡という壮大なテーマにとらわれすぎ、データ窃盗や偏ったアルゴリズムなど、AIに関する現実的な問題を矮小(わいしょう)化しているという批判だ。 人類滅亡思想の歴史について著書がある作家のエミール・トーレス(Emile Torres)氏も、以前は長期主義に賛同していたが、今は反対の立場を取っている。 同氏は長期主義について、過去に大量虐殺やジェノサイ
オックスフォード大学の哲学者、ウィリアム・マッカスキルの新刊『What We Owe the Future(私たちが未来に負うべきもの)』が、大きな議論を巻き起こしている。これは、効果的利他主義(EA、effective altruism)の最新の動きだ。この社会運動の支持者は、戦略、データ、証拠を利用して世界に最大限の良い影響を与えることを目指している。 マッカスキルの新刊では、そうしたEAの思想の中でも「長期主義(longtermism)」と呼ばれるものが力を増していることが主張されている。長期主義者たちは、私たちの今日の行動が恐ろしくはるかな未来、すなわち数十億年先、数兆年先の人類の生活を改善することができ、実際そうすることが私たちの道義的責任であると主張している。 いろいろな意味で、長期主義は素直で議論の余地のない良い考えだ。人類は古くから、自分の子どもや孫だけでなく、決して会うこ
第47回で「アリスとテレスのまぼろし工場」を取りあげたとき述べたように、今年のアニメ映画のタイトルを並べると「なぜこんなにも“物語とは何なのか?”が問われているのだろうか?」という疑問がわく。12月15日公開の「屋根裏のラジャー」(監督・百瀬義行)もそのひとつである。 主人公ラジャーは、少女アマンダが想像で生みだしたイマジナリと呼ばれる少年だ。他人には見えないラジャーが、アマンダと切り離された後、彼女の危機を救うために奮闘する冒険もので、イマジナリを喰らうことで生きながらえる男ミスター・バンティングがヴィランとして登場し、その対立が全編を支えている。 作中では書店、図書館と「物語の宝庫」とイマジナリが強く結びつけられている。物語の触発する想像力とは現実をどのように活性化し、変革しうるものなのか、想像の存在に独立性をあたえることで問いかけてくる。「空想の産物を食い物にしているミスター・バンテ
2016年12月、このブログに「人工知能をトランスサイエンス問題として考えてみる」という記事を書いた。トランスサイエンスというキーワードを使って、AIが社会や自分の生活に与える影響について考える心構えを整理してみたものだった。 それから7年たち、2024年が始まろうとしている今、私はAI*1について考える「心構え」を改めて持つ必要を感じている*2。AIに関する日々の情報が多すぎて、それに呑み込まれつつあるという危機感からだ。 2023年は、OpenAIをはじめとする先端企業のプレスリリース、各国政府のAI規制の行方、思想的リーダーたちのAIに関する思考を綴ったメディア記事やツイートなど、AIに関するあらゆるニュースが気になって仕方がなかった。私はテクノロジーに関して保守的なほうでもあり、すぐに最先端のAIを仕事や生活に取り入れたいわけではない。それでもAIに注意を奪われたのは、ある種の「ゲ
出雲・稲佐の浜(令和5年 神在月) Inasa-no Hama (Inasa Beach) in Izumo, Japan during Kami Ari Zuki (The Month of the Gods' Presence) in 2023. 1.4/50 Summilux ASPH, LEICA M (Typ 240) もうかれこれ4~5か月前、旧知である新メディア"Pivot"の佐々木紀彦さんと竹下隆一郎さんから熱烈なご相談があり、9 quesitonsという番組に出たことがあった。70分1本勝負で一気に収録したが、そこで僕が言ったことの一つは「みんなAIの話ばかりをしすぎている。人類にとって大きな2つの課題があり、それをこそ解決すべきであり、AIだとかデータはそのためのツールとして使うべきだ」という話だった*1。 - その二つの課題とは「人類と地球との共存」と「人口調整局面の
Twitterを買収し、名称をXと変更したことで耳目を集める、米国のイーロン・マスク氏。彼が浸かってきたシリコンバレーの思想に、近年新たな動きが見られると、八田真行・駿河台大学准教授は指摘する。 (『中央公論』2023年10月号より抜粋) 時代を象徴する大富豪 電気自動車(テスラ)と宇宙開発(スペースX)。全く異なり、しかもかつてはあまり見込みがないと思われていた分野で起業して成功を収め、一代で世界一の大富豪となったイーロン・マスクは、その言動でも注目を集める存在だ。2022年にTwitter(現X)を買収したことで、知名度や影響力は良くも悪くも一般のレベルにまで達した。 マスクの型破りな言動を、彼自身の一風変わった性格に帰するのは間違いではない。9月中旬に邦訳書が出版されるジャーナリストのウォルター・アイザックソンによる評伝は、これまで謎に包まれていたマスクのパーソナリティに光を当てるも
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