陰暦 一月二十一日 【啓蟄】 今の先進国の経済の大きな問題の一つとして「雇用につながらない経済成長」が挙げられると思います。これまでの経済成長は雇用の拡大と生活水準の向上と必ずセットでしたので、豊かさにつながらない経済成長へのとまどいが先進国の人たちから出ています。 第二次世界大戦後の経済成長が雇用の拡大と生活水準の向上につながっていたのは、まず第一に人口の拡大があったこと。戦後の30年間で先進国の人口は1.5倍くらいになっています。1.5倍の人口に商品を提供するために製造業もサービス業も規模が拡大したというのがまず一つ。 さらに今までになかった新しい商品が次々と生活に加わっていったからと言うのが一つ。テレビ、自動車、洗濯機などどれもこれまでにはなかった商品です。新しい商品を生産するために純粋に新しい雇用が生み出されました。 現在の先進国の経済成長が雇用につながっていないのは以上二点の裏返
2006年09月01日01:00 カテゴリIT シグマ計画 経済産業省は、「日の丸検索エンジン」について50億円を概算要求することを決めた。これは初年度だけの予算で、総額は300億円といわれる。これについて取材した記者が、経産省の担当者に「過去に第5世代コンピュータやシグマ計画が失敗したことをどう考えているか?」と質問したところ、驚いたことに「知らない」と答えたそうだ。第5世代については、先日の記事でも紹介したので、シグマについてごく簡単にまとめておく。 シグマ計画は、1985年から5年かけて250億円の国費をつぎこみ、国内のコンピュータ・メーカーを集めて、日本語で使えるUNIXツールの標準規格をつくろうという計画だったが、これについての通産省の事後評価は存在しない。業界でも、シグマの話はタブーとされており、ウェブにも関連する情報はほとんど出ていない。当事者の話としては、提唱者のインタビュ
個人でも「医者嫌い」に分類される「どうしようもなくなってからでないと診断を受けたがらない人」がいるけど、会社とかでも「現金がなくなってから相談してくる企業」とか「絶対納品守れない状況になってから報告してくる下請け」とかがある。困る。困るので、「どうしようもなくなっても大丈夫な付き合い方をしよう」とか考える。あそこがコケても、少し頑張ればこういうリカバリーができる、というような、とても後ろ向きな将棋を指すわけで。 一方で、土壇場でないと力を発揮しない人もいる。私もどっちかっていうとそっちのタイプだけど… でも、ここがギリギリという線を踏み越えてから対処するのはだいたいコストが上がってしまっているので、そうならないように予防線とか保険とかかけようとする。で、往々にして予防線は簡単に突破される。 いつも予防線が突破されるので、いずれにせよ年がら年中修羅場になってるわけだが、修羅場をこなしているう
2010年03月05日08:00 カテゴリValue 2.0 笑い事ではなくなってしまった都市伝説をみっつを論破するを一つ論破する 他の二つはとにかく、真ん中の一つが破綻している。 金融日記:笑いごとではなくなってしまった都市伝説みっつを論破する 都市伝説2: 派遣労働は派遣会社が派遣社員の給料をピンハネして搾取するので禁止すべき ひとことでいえば、ピンハネで搾取されていると思うなら辞めればいいじゃんということです。 先進国はどこでも職業選択の自由が保障されているので、何人たりとも強制労働させられることはありません。 この論法のどこが詭弁かというと、本来は定量的な「自由」というものを、あたかも定性的なものであるかのごとく語っていること。私自身の実例を上げると、実家が全焼して大学を中退したての時の私と、404でぐぐっても 弾でぐぐってもトップに来る今の私とでは「自由」の量が違うのに、どちらも
2010年03月02日07:30 カテゴリ書評/画評/品評Value 2.0 愛と利益と - 書評 - 生命保険のカラクリ 著者より献本御礼。 生命保険のカラクリ 岩瀬大輔 初出:2009.10.15 2010年4月15日まで全文PDFダウンロードは以下より 生命保険のカラクリ』(岩瀬 大輔・著) | 文春新書 ほか | 書籍情報 | 文藝春秋 プロのための「生命保険入門」を、異業種から参入した著者が同書の著者から直接学び直した上で、ユーザー向けに最新事情を交えながら書き直したのが本書。生命保険を買う--あるいはあえて買わない--にあたって、本書は必携の一冊となるだろう。 ただ、一点だけどうしてもお尋ねしておきたい異議がある。本entryはよって書評兼公開質問状である。 本書「生命保険のカラクリ」は、ライフネット生命保険副社長である著者がはじめて書き下ろした生命保険本。 目次 - 新著の予
2010年03月01日10:17 カテゴリ本経済 バブルは別の顔をしてやってくる バラマキ派やリフレ派がよくいうせりふに、「不況のときインフレの行き過ぎを心配する必要はないんだから、思い切りばらまけ」という話がある。たしかに中央銀行のコントロールがきくようになったCPIの急激な上昇は、ここ30年ほど起こっていない。しかし資産インフレ=バブルは以前より頻繁に起こるようになった。 80年代後半の日本では、「円高不況」を救済するために行なわれた低金利政策で不動産バブルが起きた。2000年代初頭のアメリカでは、ITバブル崩壊後の不況に対してFRBの行なった金融緩和で住宅バブルが起きた。同じころ日銀の行なった量的緩和によって円キャリー取引が起こり、資金がドルに流れ込んで住宅バブルを加速した。いずれの場合もCPIは落ち着いていたので、中央銀行はインフレを警戒しなかった。バブルはつねに人々の予想を裏切り
来期予算とか決算準備とかいろいろあるわけだけど、投資先が株式交換でバイアウトされたので、その流れで大企業さんの経営企画の現場を少し触ったんだ。顧問契約も残っていたし、来いって言うからさ。 最初は和やかだったさ。「山本さんのブログ読んで参考にさせてもらってます」とかリップサービス喰らったり。やっぱりプレゼンや資料作りなんかは惚れ惚れするほど上手い。マーケティングに関する議論とか、商品分野ごとの戦略とか、海外販売拡充のためのロードマップ作りとか。プロだなあと思うよ。 で、本丸の決算に関する議題になって、ちとびっくり。売上的には確かに無視できない大きさになってるけど、経年的なものもあって販売は頭打ちで、利益も随分でなくなったなあというような事業があって。すっぱり止めてしまうか何らか版権でも持ってきててこ入れでもするか、どっちにしても縮小均衡をこのまま続けていっては国内の体制を維持できないよね、と
惜しまれつつ休刊まっしぐらの月刊『フォーサイト』で、書評を寄せていたのを思い出した。ので告知。 Foresight 新潮社 http://www.shinchosha.co.jp/foresight/ なお、休刊後はウェブ媒体になるらしい… どうなってしまうの、フォーサイト。 平たく言うと、確かに「フリー戦略」というのは優れた概念だし、いまの流行という切り捨て方以上の価値のあるものだが、でもそれって小売業におけるバーゲンセールやチラシの目玉商品と構造としては一緒だよねえ、ウェブになってコストが下がったことで派手に見えるだけで、それらはすべてマーケティングコストであってドクトリンとしては昔からあったものなのだから、もう少し冷静に考えて取り入れられるところは取り入れて参考にしたら、というような書評を載せました。他にもたくさん書いたけど削っちった。 しかし、海外事情を知る媒体がこれでまたひとつな
先の「ウェブでは「フリー」が基本であるというのは本当か」 http://d.hatena.ne.jp/pikarrr/20100213#p1に質問がありました。 愚樵 2010/02/14 06:44 pikarrrさん、はじめまして。 “ウェブでは「フリー」が基本であるというのは本当か”という問いかけは、“ウェブは「フリー」なのか”、“ウェブは「フリー」でよいのか”という2つの問いのうちのどちらになるのでしょうか。私は、ウェブは「フリー」が基本になったからこそ“ウェブは「フリー」でよいのか”という問いかけが生まれてきたように感じるのですが。 ITフェティシズムという転倒 愚樵さん はじめまして。 「ウェブでは「フリー」が基本であるというのは本当か」という問いは、いまウェブではフリーが基本である。しかしこれはほんとうに当然のことなのか。変化する環境の中で当然でなくなるのではないか、というこ
pikarrr ウェブのこれからを書きました。「ドコモがいかにウェブに革命を起こしたか」 http://d.hatena.ne.jp/pikarrr/20100214#p1 Sheeps_Head*1 ブログ読みました.一つ疑問があります.ドコモの戦略と,これからのグーグル・アップルの戦略とが似通っているのは,市場を囲い込もうとしている企業は同じような戦略を採る,というだけで,ドコモが時代を先取りしているとはいえないのではないでしょうか? pikarrr どこまでドコモが意図していたかはわかりませんが、結果的に垂直統合型を世界に先駆けた。それはとても日本的な信頼重視です。おそらくアメリカ人には発想し得なかった。そしてその成功を、アップルがアメリカ覇権のもと真似て成功しているわけです。 Sheeps_Head ドコモは元々が電電公社だけあって,信頼を重視したのでしょうね.しかし,同じ垂直統合
2010年02月13日11:53 カテゴリITメディア コンテンツ産業の「25%ルール」 私もいろいろな「コンテンツ産業」にかかわったが、この分野のいろいろな業界に共通している暗黙のルールがある。それはクリエイターには売り上げの25%しか還元されないというルールだ。出版の場合には、小売:20% 取次:10% 印刷・製本:35% 出版社:25% 著者:10%出版社の取る「仕切り」は会社によって違い、これは大手の場合だ。新しい会社が参入するのは事実上禁止だが、幽霊会社を買収して参入しても、小売と取次に半分近く取られるので、印税や印刷代を払うと出版社には10%ぐらいしか残らない。しかも返品リスクも版元が負うので、出版社はハイリスク・ローリターンのビジネスだ。 映画の場合は、映画館:50% 配給元:25% プロダクション:25%だからほとんどの映画は赤字で、DVDやタイアップなどで辛うじてトントン
オープンソース・プログラマー 昨年の Amazon Kindle 2 のブレイク、そして今年1月の Apple iPad の発表により、いよいよ現実味を帯びて来た電子書籍。最終的に勝利を収めるのは Amazon? Apple? それとも LIBRIe を出していた Sony の巻き返しがあるか? それとも Microsoft が XBox ならぬ XBook を出すか… 一番重要な「プレイヤー」を忘れてませんか? 読者という、最大最重要のステイクホルダーを。 すでに書籍は電子化されている 現時点において、日本で日本語の電子書籍を買う方法はほとんどありません。Kindleは日本でも購入可能ですがKindleで購入できるのは米国の英語書籍のみ。SonyのLIBRIeも同様です。わずかに iTunes Store でのみ、iPhoneアプリとしていくつかのタイトルが購入できるのみで(拙著「弾言」
処世術としての「誠実な会話」について。 何となく話そびれて、患者さんだとか、あるいはご家族から「話を聞かせて下さい」なんていわれたときの話しあいは、注意しないといけない。 これといった目的のない話しあいは、しばしば迷走して、収拾がつかなくなってしまうことがある。 最初に目的を宣言する 話しあいの前に、目標を宣言するのは大事なんだと思う。「今日は検査の報告だけさせていただきます」とか。「状態もだいぶ安定してきたので、退院の時期を相談したくて、今日来ていただきました」とか。 最初に医療者側から宣言をしておくと、話がぶれにくい。逆に「宣言」なしで、何となく話が進んで、ご家族の側から「宣言」を切り出されると、流れはご家族のものになる。流れを変えたり、あるいは「今日はこのへんで」なんて話を打ち切ると、それは「流れが着られた」という心証になって、どう言いつくろっても、いい結果を生まない。 「宣言」は単
自分のためにお金を使う人は減っている。将来への不安とか、不信みたいなものがある限り、この傾向は変わらないと思う。 少し前なら、自分のすごさを表現するために無理して高い車を買うとか、「あえてお金を使ってみせること」というのが、ある種のかっこよさにつながっていたけれど、そうしたリンクはもう切れている。 で、今は何となく、「か弱くてかわいい何か」に強者の財布を接続できた人が、上手な商売を行っている気がする。 トリンプのサイトにはおねだり の機能がついていて、商品を買う女性から、男性の側に、支払いをお願いすることができて、これが大成功しているらしい GREE というサイトのマスコットであるクリノッペがすごい らしい。自分自身の分身である「アバター」にお金を支払うことに抵抗がある人でも、加入すると勝手についてくるペットと遊ぶうちに、そっちにはお金を使ってしまうらしい ペットビジネスは、「弱さ」と「財
前回は、日本のDRAMがなぜ世界シェアNo.1になれたのか、そして、なぜその座から陥落したのかを説明した。 PC用DRAMを安く大量生産する韓国などにシェアで抜かれた日本半導体産業の言い分は、「経営、戦略、コスト競争力で負けた」「技術では負けていない」という2言に集約された。果たしてその言い分は正しいものだったのだろうか。 「技術では負けていない」という評価は、ある意味では正しい。なぜならば、高品質DRAMを生産する技術では、確かに韓国や米国に負けていなかったからである。つまり、高品質DRAMにおける過去の成功体験が、日本半導体のトップたちが声高に「技術では負けていない」と主張する背景にある。 このようなことが、本連載の第1回で紹介したように、少しでも日本半導体の技術にケチをつけると、「湯之上の言うことは全て間違っている」というような罵倒が飛んでくる原因となったのである。 しかし、この成功
銀行は個人や企業から預金を集めて、それを個人や企業に貸し出します。預金者に支払う利息の合計額よりも貸出先から取り立てる利息の合計の方が大きければ銀行は黒字になります。 現在の平均預金金利は年利で0,039%です(日本銀行統計より)。銀行の総預金額をDとしますと、銀行が預金者に支払わなければならない利息の総合計は0.00039D円となります(0.039%=0.00039)。 それに対して、銀行の最大の貸出先である政府が銀行に支払う金利、即ち国債の平均利回りは1.2%です。銀行が持つ国債の総額をBとしますと、銀行が国から受け取る利息は0.012Bとなります。 仮に銀行の貸出先が政府だけだとすると、0.00039D<0.012Bであれば銀行は黒字と言うことになります。不等式を解くと、 D/B<30 となります。これは何を意味するかというと、総預金額の30分の1だけ国債を保有していれば銀行は寝てい
わたし的棚ぼた一万円選書 急に千葉さんに手渡された封筒、開けてみたら1万円札が1枚。何ごとかと思えば、同期の出張を代わったお礼をもらったらしい。 「葵はワンオペで育児してくれたから」と半分わけてくれました。 泡銭の1万円 これはもう、わたし的1万円選書をしろという思し召しなのでは……
2010年01月10日10:12 カテゴリ経済 新興国バブル このごろ証券会社の営業がすすめる投信に、日本株がまったくなくなった。民主党は日本が「株主至上主義」だと思っているのかもしれないが、先進国で最低のパフォーマンスしか出せない日本株には、証券会社も愛想をつかしたようだ。その代わり、彼らがすすめるのは中国、ブラジル、インドなどの新興国株である。 この背景には、金融危機で各国政府や中央銀行が金融機関に巨額の資本増強や資産の買い取りを行なった結果、世界的な資金過剰が生じている状況がある。先進国の金利は1%を下回り、ドルにペッグしている新興国も金余りに巻き込まれている。キャリー取引がまた始まり、オーストラリア・ドルへの投資が人気だ、とEconomistは報じている。 株価は昨年3月の最低水準から70%も上がり、特にブラジル・中国・インドの株価は2倍以上になった。こういう国々が長期的に成長する
ネットは実社会と変わらず貨幣の力で動いている 素朴にネットこそが左翼的な世界を構築する理想的な場ではないのか。現に「民主化」はネットを象徴する言葉として使われる。しかし実情は、左翼思想は嫌われ、自由競争、市場主義が歓迎されている ネットは実社会と変わらずまさに貨幣の力で動いている。この貨幣の力とはなにか?実社会の貨幣の力とは、単に「金に汚い」守銭奴的なことではない。実社会でもみなただ金を儲けるために働いているのではない。その意味で、実社会の資本主義の拡張としてネットがあるということだ。 ウェブに生まれる反資本主義、共同体幻想の不思議? ウェブはほぼ無償で愉しむことができるが、その経費はテレビ同様に広告費でまかなわれている。さらに無償で働くユーザーの生活は実生活の賃金により支えられている。また彼らが公開する知見の多くも実社会の仕事の経験からくるだろう。次々現れるウェブサービスの開発のインセン
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